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風に哭く花 41 

夏休みが終わり、変わらぬ日々が戻ってきた。
放課後、授業が終わると真っ直ぐに、青児はグラウンドへと駆けだした。

翔月は以前と同じように、バックネット裏のベンチに腰かけて眩しげに眼を細め、青児の姿を追っていた。

「翔月!」

自分に向かって手を振る青児に気付くと、翔月は応えて軽く手を上げた。

「なぁ。おまえら、仲直りしたの?あいつさ、一時練習見に来なくなってただろ?地区予選前だっけ?何かあったのかなって、ちょっと気になってた。」

チームメイトの声に、青児はふっと笑った。

「別に喧嘩してたわけじゃないよ。翔月がちょっと体調崩してたのもあるし。ま、無事に反抗期を終えたってことだな。」

「反抗期~?なんだ、それ。おまえ、保護者かよ。」

「うっせぇ。ダイヤモンドラン行くぞ!」

「おうっ。」

目の端に当たり前に翔月の姿があるのが、うれしい。躍動する青児を見つめる翔月も、また元通りの場所に戻れてほっとしていた。

*****

「心配かけて、ごめんね……青ちゃん……」

あの日、柏木のマンションで、翔月は青児の胸に縋り声を上げて泣いた。まるで胸につかえた氷の塊が溶け出したように、俯いた翔月の睫毛に輝く真珠の粒が宿る。
滑らかな裸の胸に、いくつもころころと転がった。
静かに抱きしめて、青児は二度と離さないからと耳元に誓った。

「ばか翔月。言いたいことが有るなら言えって、おれがあれほど言って来たのに、一人で悩んで暴走しやがって……見ろ、この手首、すっかり細くなっちまって。おばさんに、あんまり心配かけんなよ。」

「だってね……自分で自分が判らなくなったんだ。先生に目隠しされて触られて、それが青ちゃんだって言われたら、違うってわかっていても感じてしまって、どうしていいかわからなくなった。頭、おかしくなったかと思った……」

「責めてばっかりで、悪かったな、翔月の事、何もかも分かっているつもりで、おれは何もわかっていなかったんだな。苦しんでたのに、気付いてやれなくてごめん。」

「ん……今度から、青ちゃんには、ちゃんと言う。」

ふるふると翔月は首を振った。

「それにね……青ちゃんが心配してくれるのは、うれしかった。柏木先生が、本当にぼくの事を青ちゃんが好きなら何が有っても、手放したりしないって言ってたけど、その通りだった。」

「あいつ、裏でそんなことを言ったのか。」

「うん。俊哉さんも、光揮君を酷い目に遭わせた奴らと青ちゃんは違うって。だから、怖がることはないって言ってくれた。誰にでもそういう……被虐体質とか加虐体質とかは少なからずあるから、怖がらないで自由になっていいって。助けてくれるって。」

青児は、薄くなった肩に鼻先をこすり付けた。

「おれだって……翔月のこと、虐めたいって思ったこと何度もあるんだ。だって、泣くのを我慢している翔月が、おれのおかずだからな。」

「……おかず?」

「マスかく時の夜のおかずだよっ。おれの妄想の中で、翔月は毎日柏木にされたようなことされてたの。すげぇ、色っぽくてさ、おれ、お前に逢うとやばかった~。」

「あ、青ちゃんの、えっち~……。」

見つめる翔月の目元が、薄紅色に染まった。

「嫌いになる?」

「……ううん。大好き。」




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

後、一話で終わる予定です。なんやかやと長かったね~(´・ω・`)


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