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風に哭く花 39 

青児は、胸が痛くなった。
信じていた大好きな友人に裏切られただけでも辛いはずなのに、その兄と共にひどい目に遭わされたという自分よりも年下の少年に思いをはせた。
凌辱されて自分の内に眠っていた被虐の血に気付いた、まだ中学生の光揮。
知識も何もなく、自分の性癖を病気だと思い、悩み続けた内向的な少年。
彼を理解するものは、誰もいなかった……

青児にキスをした翔月を見て、弟を重ねてしまった柏木は、何を思って翔月に触れたのだろうか。

*****

「……自傷って……先生の弟は、自分で自分を傷つけたってことですか……?」

「そうだよ。リストカットだ。光揮君は最初は腕にカッターで傷をつけていた。直樹が気付いて、やめさせたはずだったんだが、やめられなかったんだ。俺が直樹に代わって話を聞いた時、光揮は兄ちゃんには言えないけど、血が流れている時だけ生きている気がするんだと言ってた。リストカットというのはなかなかやめられないものらしい。そのうち直樹にわからない場所に、光揮君は傷をつけるようになったんだ。心配かけたくなかったんだろうね。」

「直樹と俺は、どうすれば光揮君を救えるか、一生懸命考えた。しかし、被虐性のある光揮君のことが、ガキだった俺達にはどう考えても理解できなくてね。図書館で調べるうちに、もしかすると精神疾患かもしれないと、気が付いたんだ。」

「彼らの両親は当時シンガポールに短期赴任中だったから、直樹は留守の間に一人で何とかしようと必死だったよ。二人で信頼できる精神科の医者を探そうということになった矢先、光揮君は貧血でふらふらの状態で家を抜け出した。光揮君は、何とか直樹の望む自分になろうとしていたけど、それが余計に彼を追い詰めたんだろうね。」

「一体どこへ行ったんですか。もしかすると、坂崎の所とか……?」

「いや……どこへ行こうとしていたかは、今となってはわからないんだ。気分転換に散歩に出ただけだったかもしれない。ただ、突然の交通事故で直樹は最愛の弟をあっけなく失ってしまった。病院に運ばれた時に、医師から太腿に自傷が続いていたと告げられた直樹は慟哭した。何もかも自分のせいだと思ったんだろうね。そして直樹は、俺が駆けつける少し前、一人で光揮君の最期をみとったんだ。」

「……亡くなったんですか。」

「傷だらけの光揮君は、直樹の姿を見ると、ごめんね……と何度も謝ったらしい。」


『ごめん……ね……兄ちゃん……ごめん……ぼく、治らなかった……』

『光揮っ!』

『……兄ちゃん……ごめん……ね……』

「直樹が光揮君を理解したのは、すべて失った後だったんだ。」




本日もお読みいただきありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

柏木の過去、亡くなった光揮。
想いを寄せる、俊哉と青児。

後、もう少しだけお付き合いください。 ヾ(〃^∇^)ノ


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