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風に哭く花 36 

話はまだ終わっていなかった。
決まり悪そうに声を掛けたのは、青児を迎え入れた男だった。

「直樹が大人げなくて、本当に悪かったね。すまなかった。」

聞こえないふりをして、柏木は眠る翔月をつつく。

「うさぎちゃん~。大好きな青ちゃんが、お迎えに来てくれて良かったね~。」

「柏木先生……翔月を、一体どうしたかったんですか?教えてください。翔月はふらふらになりながら、今日学校に来たんです。おれは、最初突き放したけど、きっと助けを求めていたんだと思います。もしも、翔月のボールをおれが取りあげて居なかったら、翔月はここでずっと先生とその人の手で……泣かされ続けていたんですか?」

柏木は強張った顔を向けた。

「……ボール?」

「おれの、この間の大会のウイニングボールです。投稿サイトの場所が書かれていました。だから、おれはここへ来たんです。」

「俊哉……余計な事をしたね?」

柏木は俊哉を睨みつけた。

「余計なことだとは思わないよ。直樹はうさぎちゃんと光揮を混同してる。初めにうさぎちゃんがキスをしたところを見てから、あの子は大丈夫だろうか、光揮のようになりはしないかと、ずっと気にしていたじゃないか。」

翔月のボールに、サイトのURLをかき込んだのは、柏木の恋人、俊哉だった。翔月と青児のように幼馴染なのだと俊哉は語った。

「話の途中だったね、青ちゃん。直樹の弟、光揮の話……どこまでしたかな?」

「……いじめを受けていたと聞きました。」

「うん……。そうなんだ。ずっと仲良しだった子に恋をするのは、自然なことだと思うんだけどね。ただ一度の子供っぽいキスに追い詰められて、光揮君は相手に酷いことをされた。好きな子にいじめられて、それを許すって、どういう感じなんだろうって思うね。」
「許すって、どういうことですか?」

「元々、光揮は大人しくて誰の言う事にも素直に肯くタイプだった。君の、うさぎちゃんと同じように……そう言う質というか、生まれ持ったモノがあるんだろうね。光揮の好きになった相手には、兄貴がいてね……弟から話を聞いて面白がったんだ。」

青児は凄惨な話を聞くことになった。

*****

「なぁ……そいつ、一度連れて来いよ、俺に犯らせろ。」

「何、悪趣味なこと言ってんだよ、兄貴。光揮は女みたいな顔してても男だぞ。女ならともかく、乳も無いし挿れるアナだってないじゃないか。」

「ばぁか。お前は何も知らねぇのな。簡単に足を開く女より、男の方がきつくていいんだぜ。もっとも、無理やりにやっちまったら、こっちが怪我することもあるから準備が必要だけどな、そいつはおれに任せろ。」

「騙すのはちょっとなぁ。」

兄はほくそ笑んだ。性に奔放な不良学生は、ある程度経験があった。中学生の弟を懐柔することなど容易い。

「一度経験したら、お前だって病み付きになっちまうと思うぜ。それにな、光揮……って言ったっけ?あいつは、きっとお前の言う事には逆らえないはずだ。」

「へぇ……なんで?……」

「男にも女にも苛められて喜ぶ奴っているんだよ。そいつ、お前に抱いてほしいんだろ?M男の扱い方を教えてやるよ。ついでに、お前には女を抱かせてやる。肩で風切ったって、いつまでも皮かむりの童貞じゃ箔がつかないって。」

「ほんと?だったら、光揮を呼び出してみるか……」

光揮の想い人は、目を輝かせて兄の悪巧みに乗った。
翔月と同じように被虐性のある光揮には、好きな男の誘いを断ることができなかった。
ただの幼馴染でいる頃から、乱暴な兄がいることは知っていたし、怖かった。家に行くことは極力避けてきた光揮だったが、好きな相手から持って来た仲直りの誘惑に勝てなかった。
これまでの冷たさを詫びて、以前のように親しくぽんと肩を掴む相手に、胸がとくんと跳ねた。

「なぁ、光揮、週末俺んちに来いよ。一緒にDVD見ようぜ。」

「え……でも、もう絶交だって……気持ち悪いって言われて……ぼく……悲しかった。」

「……蒸し返す気かよ。だったら、絶交のままでいんだな。俺だって、少しやりすぎたって反省してるのに。」

「分かった。何時に行けばいい?」

悪魔が手ぐすね引いて待っている魔窟に、何も知らない光揮は出かけて行った。




本日もお読みいただき、ありがとうございます。 ヾ(〃^∇^)ノ遅れました~


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