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優しい封印 22 

男の向かったのは、劉二郎の想像通りなら、おそらく間島の所だった。
鴨嶋の話を聞いて、側近が様子を見に行ったに違いない。

*****

「話をして分かったが、坊には情がある。この年寄りはこの場に出てきて、そう思ったぜ。頭のいい切れ者だとは聞いて居たが、それだけじゃねぇ。おめぇは先代や俺をはるかにしのぐ器だ。俺ぁ、足元にも及ばねぇや。」

「鴨嶋の叔父貴……勿体無いお言葉です。」

満座の中で褒められて、悪い気のする者はいない。まして、孤高を貫いてきた一本独鈷の鴨嶋劉二郎に、憧れを抱く極道者は多いのだ。
既に、向坂は鴨嶋の術中にはまっていた。自ら進んで、それが言質となると思わずに、間島の話を振ってしまった。

「で、鴨嶋の叔父貴には、何か困った事でも?間島が何かしましたか。」

「……おやっさん。話だけでも聞いてもらってはいかがですか?」

月虹に促されて、鴨嶋は仕方なく口を割った風に話を始めた。
声を落とし、しょんぼりと鴨嶋は哀れな老人を装った。

「それがなぁ……俺が孫とも思う子供の父親が、その間島って狂犬の所に居るんだ。いろいろ俺なりに調べて、坊の所のマンションで薬漬けになってることがわかった。この老い先短い老いぼれが、親組内の事に干渉するのも出過ぎたことだと思う。だがなぁ……孫が、じいちゃん、お父さんを助けてくれって泣くんだよ。俺ぁ、身内を持ったことはなかったが、この年になって慕ってくれるガキが可愛くてならんのだ。坊なら何とかしてくれるんじゃねぇかと思ってな……」

上座に座っていた劉二郎は、座布団を外し畳の上にかしこまって、白髪頭を下げた。

「この通りだ。」

「お、叔父貴……っ!?頭を上げてください!」

その場に居た向坂組幹部と参列者の間に、驚愕のどよめきが起きた。

「この年寄りの、一生に一度の頼みごとを聞いちゃくれねぇか。」

法要の後の食事会には、名のある大物ばかりが揃っていた。中には鴨嶋に破門を救われたものも数人いた。鴨嶋の飛んだ二本の指は、自分の不始末の断指ではない。兄分の不始末を共にかぶったせいだと、大抵の者は知っている。
だからこそその場で、あえて鴨嶋は頭を下げた。

資金力は断トツで、表社会でも実業家として頭角を現している向坂は、断る理由を探ったがどうしようもなかった。間島準一郎という狂犬を失うのは、勿体無いような気がしたが、老いたりとはいえ、極道の鏡のような鴨嶋劉二郎を敵にするわけにはいかない。
頭を下げた鴨嶋劉二郎は、おそらく相当の覚悟を決めてこの場に現れたのだ。
向坂は腹を決めて、蜥蜴のしっぽを切り捨てる覚悟を決めた。

「……鴨嶋の叔父貴と先代の約束事を、反故にしちゃ親父に叱られます。うちは薬はやりません。今後、向坂組でヤクをやる奴は、きっちり破門にさせてもらいやす。今、下の者に様子を見に行かせました。間島がヤクに手を出しているのがわかったら、警察(ヒネ)に連絡を入れさせます。向坂不動産のマンションの間島の巣は、出来るだけ早く撤去します。」

「……坊よ。この年寄りに優しくしてくれて、ありがとぅよ。正直言うとなぁ、抗争になっても勝ち目なんぞねぇから、俺ぁ、坊がうんと言ってくれなかったら、先代の位牌の前で腹を切る覚悟だったぜ。」

「え……?」

「爺が命を掛けたとなったら、泣いてる孫も仕方なく諦めるかと思ったのよ。」

黒紋付きの前をくつろげて、真新しい晒しの間から使い込まれた飴色の匕首を取り出した鴨嶋は、獲物を向坂に手渡した。

「叔父貴……」

使わねぇで、済んだなという鴨嶋の鋭い眼光に射すくめられ、受け取った向坂の方が青ざめていた。この変色した束は、何人の血を吸って来たのだろうかと、ふと思う。

「これからも、俺の組は子組の鴨嶋組だ。俺が生きてる間は、組長代行を立ててでも向坂の坊の世話になるぜ。向坂の親分……鴨嶋組を今後もよろしくお頼み申します。」

再び頭を下げた鴨嶋に、慌てて向坂も深々と頭を下げた。期せずして、その場は和やかな空気が流れ、鴨嶋の意を汲んだ向坂の株も、思いがけず上がった格好になった。
実はその場には、上手く時代の波に乗り成功者となった向坂を妬む輩も多かった。だが、鴨嶋劉二郎への扱いが丁重だったこと、その場に出席した者が一目置いたことで、今後の向坂の立場は変わってゆく。

鴨嶋劉二郎は、杯を交わした兄弟分の倅を貶めることなく、むしろ男を上げさせる形で懐柔した。




本日もお読みいただきありがとうございます。(*⌒▽⌒*)♪

どんどんBLから離れている気がするので、内心焦っているこのちん……(´・ω・`)
求さん奪還までもう少しです。(`・ω・´)待っててね。

( *`ω´)求「 今、絶賛ぼろ雑巾中なんですけど……ぷんっ。」
(*⌒▽⌒*)♪ 「あはは……」


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4 Comments

此花咲耶  

nichika さま

> くーじっちゃん 「変色した束」どんだけビビらす

(*⌒▽⌒*)♪使い込んでそうなのです。

> さすが伊達に生きてないさ~~

男伊達のじいちゃんです。(`・ω・´)ま、年の甲だな。

> 「男を上げさせる形で懐柔」 これぞ正統派の任侠道 上手い👏👏👏

ありがとうございます~駆け引きは重要です。

  次はアノ間島がどー狂犬で出てくるか! フン 後ろ盾が無くなったらどうするか ここが漢の見せ方でしょう尻尾たれてるだろうな(っと期待)

間島はやりたい放題で、求さんはぼろ雑巾です……(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚+
奪還に向けて頑張ります。(`・ω・´)

 でも 奴はびょーきダカラ
> 油断大敵 頑張れ鴨嶋組!

(。'-')(。,_,)ウンウン がんばれ、鴨嶋組!
コメントありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

2013/06/12 (Wed) 22:19 | REPLY |   

nichika  

くーじっちゃん 「変色した束」どんだけビビらす
さすが伊達に生きてないさ~~
「男を上げさせる形で懐柔」 これぞ正統派の任侠道 上手い👏👏👏  次はアノ間島がどー狂犬で出てくるか! フン 後ろ盾が無くなったらどうするか ここが漢の見せ方でしょう尻尾たれてるだろうな(っと期待) でも 奴はびょーきダカラ
油断大敵 頑張れ鴨嶋組!

2013/06/12 (Wed) 20:58 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

ちよさま

> 鴨嶋組の方達は、迫真の演技でカッコいいですね~!!

月虹に至っては、色気振りまいただけですけどね…… ( -ω-)y─┛~~~~ま、それも取りえだしな~
>
> じいちゃんさんの交渉術も、
> 最初に誉めちぎって→ (*゚▽゚ノノ゙☆

褒めちぎって断れなくするのです。さすが、年の甲でっす。(*⌒▽⌒*)♪

> じじいのからのお願い聞いて欲しいの→ m(。••。)m
> 叶わなかったら腹切り覚悟よ(の装い!?)→ (๑•̀д•́๑)

どうやら中途半端というのが、一番駄目みたいなのです。
なんか、ちょっとだけ本気が見えて怖いですね~。じいちゃんも、やっぱり極道だった~

> さすが~ ( ・∀-)bグッジョブ

(*⌒▽⌒*)♪じいちゃん「褒めてくれて、ありがとうよ。」

> 向坂の坊も、
> 憧れの大物じいちゃんさんから
> 頭下げられ、頼まれてしまったら…
> もう悪いことしません!!宣言しちやうよね~

(。'-')(。,_,)ウンウン ……向坂組長を「坊ちゃん」扱いできるのは、きっともうじいちゃんくらいしかいないと思います。
じいちゃんが知り合いで良かったです……なんか、じいちゃんの出番が増えてしまいました。(*⌒▽⌒*)♪

> 強要したわけではなく、自分から宣言したものね。
> (灬ºωº灬) 叔父貴に誉めらりちった…

そうなの。うっかり言ってしまった向坂組長は、内心しまった~とか思ってそうです。(*⌒▽⌒*)♪
でも、じいちゃんに恩を売れたし、立場も良くなったので成功かも……。

> もう少しじいちゃんさんのお助けをお願いいたします。

早く助けないと、求さんが~~( *`ω´) ←……怒ってるらしい……

> 連日、お話の展開に、どきむねでっす!!

(〃゚∇゚〃) ありがとうございます。奪還に向けてがんばります。
コメントありがとうございます。励みになってます。(`・ω・´)

2013/06/12 (Wed) 14:11 | REPLY |   

ちよ  

鴨嶋組の方達は、迫真の演技でカッコいいですね~!!

じいちゃんさんの交渉術も、
最初に誉めちぎって→ (*゚▽゚ノノ゙☆
じじいのからのお願い聞いて欲しいの→ m(。••。)m
叶わなかったら腹切り覚悟よ(の装い!?)→ (๑•̀д•́๑)

さすが~ ( ・∀-)bグッジョブ

向坂の坊も、
憧れの大物じいちゃんさんから
頭下げられ、頼まれてしまったら…
もう悪いことしません!!宣言しちやうよね~
強要したわけではなく、自分から宣言したものね。

(灬ºωº灬) 叔父貴に誉めらりちった…

もう少しじいちゃんさんのお助けをお願いいたします。

連日、お話の展開に、どきむねでっす!!

2013/06/11 (Tue) 23:34 | EDIT | REPLY |   

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