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小説・若様と過ごした夏・21 

「宗。」


おばあちゃんは、若様の気持ちを知りたいからと言って、先に宗ちゃんを自分の部屋に呼んだ。


宗ちゃんは、後の髪を暑いからとひっ詰めて居て、どこかお侍風に見えた。


「あなたには、どこまで視えているの?」


「あたしも、若様が宗に憑くのを面白がっていたけど、いずれ大法要までだと思っていたので、これ以上はよくないと思うの。」


篠塚のお姫様は、きちんと居住まいを正し、次の当主となるはずの宗ちゃんを見つめた。


「若様が、迷っているのならそれは篠塚の当主として、何とかして差し上げたいと思うしね。」


うん。


あたしも、そうしてあげて欲しい。


本心からそう思った。



「それは、若様の口から聞いた方がいいの?

それとも、俺に流れてきた情報でいい?」


宗ちゃんはいつになくまじめな顔で、おばあちゃんに向き直った。


「・・・真子。

若様が離れた後、俺を苦しめるのは、お城が燃える記憶なんだ。」


「だから、今は少し外してくれないか?」


あたしは、何となく宗ちゃんに気おされて、若様を連れて部屋の外にでた。


きっと若様の耳には入れたくないような、話が語られる・・・予感だけど。


だって、咳こむ宗ちゃんは、本当に苦しそうなんだもの。


ご住職の話と宗ちゃんの話は、きっと突然ぽんと本人も理由がわからぬまま、お墓の前に佇んでいた若様に思い出させたくない哀しい話に違いない。


そんなのあたしにだって、想像できた。


だって、あたしは青石の向こうに気配を感じたんだから・・・

誰かはよくわからなかったけど・・・


きっと若様をよく知る人の深い悲しみ。


知りたくないから、あたしはそれ以上見ないことに決めて帰ってきてしまった。


・・・もの言いたげな、綺麗な着物の女の人が、あたしが抱っこした眠る若様に、そうっと手を伸ばそうとしていた。


何だかその人に若様を取り上げられそうで、あたしは振り切って帰ってきたけど・・・。


ちゃんと、話をするべきだったかな・・・


今思えば、そうなんだけど、その時あたしは、浄化しかかった若様を連れ帰ることに、頭がいっぱいだったのだ。

お茶でも飲もうと思って台所に入ったら、佳奈叔母さんと、ママが台所で涙を拭きながら話してた。


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