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桃花散る里の秘め 20 

国家老が社の扉を開けた時、高坂一颯は必死に義高の止血をしているところだった。蒼白の義高が気を失っているだけと知り、思わず安堵のため息をついた。適切に布を当て、細く裂いて胴に巻きつけ手当てをしていた。

「高坂殿、義高殿の負ったこの怪我は……?」

「この一颯が卑怯なふるまいにて、傷を負わせたのです。仕置きは後ほど存分にしていただきます。今は御手当をお願いいたします。」

かしこまって素直に首を垂れる高坂一颯は、まだ元服を済ませたばかりの形(なり)ばかり大きな少年だった。弁明もせず素直に非を認めた所を見ると、どうやら深く反省しているらしい。

「……喧嘩両成敗と言うところですかな。さ、傷の手当てを急ぎましょう。」

「ご家老さま、大槻殿は助かるでしょうか……?」

「無論。このくらいの手傷で人は死にませぬよ。既に我が屋敷に、お医師が到着している頃です。幸い、この下に馬もいますからすぐに運びましょう。」

「どうか……大槻殿を頼みます。」

*****

馬の手綱を握り締めて、大姫はじっと降りてくる三人を見つめていた。両方から抱えられている真っ白になった義高を見つめ泣きそうになったが耐えた。馬の背に乗った義高の差料(刀)を預かり袂にくるむと父に差し出した。

「大津は、歩いて屋敷に戻ります。父上はお早く義高さまのお手当てを……」

「うむ。では、高坂殿。大津を頼む。」

「はい。」

「大津。高坂殿が連れ帰ってくれるそうだ。気は急くだろうが義高殿は大丈夫だ。」

「大……姫さ……」

馬上の義高が大姫に心配させまいと、声を振り絞った。

「高坂殿と……仲直り……いたしましたから。ご安心……召され……」

「……はい。」

大津は健気に凛々しく、高坂殿と屋敷までご一緒しますから心配しないでくださいと、告げた。本当は背後の高坂が怖くてたまらなかったが、義高に心配をかけるわけにはいかない。
どうぞと向けられた背にこわごわ乗り、大姫は強張っていた。飛び降りて馬の後を追って駆け出したかったが、二の腕に巻かれた包帯を見て、ふと自分が小柄で刺した傷は、大丈夫なのだろうかと、心配になる。

「高坂さま……傷は痛くはありませぬか?」

「何がです?」

「大津が小柄で刺した傷です。血がいっぱい出ていました。」

「一颯が大槻殿に付けた傷に比べれば、このようなもの虫に刺されたようなものです。」

「でも……小さな傷でも、すすめばちに刺されたら、命を落とすこともありますもの。」

「大姫さまは、すずめばちですか?」

「事と場合によっては、大津はもっと大きな、くまばちかもしれませぬ。」

「そうですか。わたしはてっきり大姫さまは花むぐり(小さなこがねむし)かと思っておりました。」

「……花むぐりは人を刺したりは致しません。」

大津は小さな声で抗った。

「そうですな。花粉を付けて飛び回っているだけですな。今の大姫さまのお顔にも、花粉のように土埃が付いております。」

「ほんとう……?社の中は乾いていたから、汚れてしまったのですね……」

道端に大姫を下ろした高坂は、すぐ近くの小川で手拭いを濡らし急ぎ戻って来た。

「大姫さま。もう乱暴は致しませんから、お顔に触れてもよろしいですか?」

「はい。」

素直に目を閉じ高坂に顔を向ける大姫に、仲直りしたと言う義高の言葉を信じているのだろうと羨ましくなる。

「一度だけ……お許しください。大姫さま。」

そっと大切な壊れ物を抱きしめるように、高坂一颯はきゅ……と大姫を抱いた。

「高坂さま……?」

「大槻殿が羨ましい。大槻殿は、大姫さまがどのような方でも、気持ちは変わらぬとおっしゃった。わたしは幼子のように、大槻殿の持つ掌中の珠がどうしても欲しくなってしまったのです。」

「欲しいものがなんでも手に入るとは限りませぬ。」

「そうです。そんな簡単なことがわたしには判らなかったのです。……いつかはこの一颯にも、大姫さまと大槻殿のように、互いに大切に思える相手が現れるでしょうか。」

「はい、きっと。今の、怖くない高坂さまなら、大津も仲良くできまする。」

「そうか。良かった。これからは、誰にも優しくするようにしよう。」

他愛もない話をしながらも、大津は義高が心配でならなかった。




(´・ω・`) 大姫 「早くおうちに帰りたい……」

(。'-')(。,_,)ウンウン 此花も早くお話進めたいし。

本日もお読みいただきありがとうございます。(*⌒▽⌒*)♪
いよいよ終盤です……と言ったのに、もう少しです。すまぬ~此花咲耶


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4 Comments

此花咲耶  

ちよさま

> 高坂は、幼くとも武士じゃないですか~!!
> 心根の優しい素直な子なのね~。

何しろ、まだ子供ですから。
一応、武家の出身なので、武士道について教育は受けている模様でっす。(`・ω・´)

> 悪代官予備軍じゃなくてよかったです。
> って思っていても、此花さまの
> どんでん返しがあるかもしれないので、
> 油断大敵~!!

♪ψ(=ФωФ)ψうふふ~、信用のないこのちん……。
ぼろ雑巾にしたいのを、すっごく我慢し……いやいや、ハピエンだもん。

> でも、義高のお怪我の具合も大事なく
> 安堵いたしました。 ヾ(@⌒∇⌒@)ノ
> そして、無邪気ながらも凛とした
> 態度も見せてくれる大津。
>
> 魅惑的な方々のお話、まだまだ楽しみにしておりまッスル、まッスル~!!

(*⌒▽⌒*)♪此花もがんばりまっする~、まっする~です。
早いとこ、国家老の良き話もしたいのに、二人がしょうもない会話をするからなかなか進まない~~
(´;ω;`) 大津「しょうもないって……」←書いといて。(〃ー〃)

コメントありがとうございました。
着地点に向かってまっしぐらです。(`・ω・´)


2013/03/13 (Wed) 23:31 | REPLY |   

ちよ  

高坂は、幼くとも武士じゃないですか~!!
心根の優しい素直な子なのね~。
悪代官予備軍じゃなくてよかったです。
って思っていても、此花さまの
どんでん返しがあるかもしれないので、
油断大敵~!!

でも、義高のお怪我の具合も大事なく
安堵いたしました。 ヾ(@⌒∇⌒@)ノ
そして、無邪気ながらも凛とした
態度も見せてくれる大津。

魅惑的な方々のお話、まだまだ楽しみにしておりまッスル、まッスル~!!

2013/03/13 (Wed) 23:18 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

nichikaさま

> え~ あの ぁの高ぴーが改心するのか? 不安一杯

ヾ(。`Д´。)ノどれだけ悪人設定なんだ~~~不安そうな顔するな~~

> 此花チン 一応ハピエン唱ってるし...

(*⌒▽⌒*)♪うふふ~

> しばし コメポチダシュで逃げ

ε=(ノ゚Д゚)ノ あ、nichikaさんが逃げてゆく~
(〃゚∇゚〃) 行ってらっしゃい~、お土産買ってきてね。←だいじょぶか?

コメントありがとうございました。
どうやらこういうパターンですと、大津はぼろ雑巾決定の感じですが、今回はちょっと変えてみました。
(°∇°;) このはな、どんなふうに思われてるんだろう……こんなに、純情可憐なドMなのに……。
殴っとく?■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ

2013/03/13 (Wed) 23:10 | REPLY |   

nichika  

まってす~

え~ あの ぁの高ぴーが改心するのか? 不安一杯
此花チン 一応ハピエン唱ってるし...
しばし コメポチダシュで逃げ

2013/03/13 (Wed) 22:05 | REPLY |   

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