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桃花散る里の秘め 7 

「おっ!かかった!」

「よし!でかいぞ。」

釣果はなかなかのもので、義高は早くも5匹目の鮎を釣りあげた。
バレないように(針がはずれないように)タモですくい上げ、魚籠に魚を移したとき、ふと何やら視界に動くものを感じて視線を上げた。

「ん……?あっ!」

「きゃぁーっ!」

川を渡ろうとした大姫が、苔に覆われた石橋で滑り、落ちるのが見えた。

「姫さまっ!?」

水しぶきが上がるのよりも早く、義高は竿を放り投げ抜き手を切った。
怯えた大姫の顔が自分に向けられ、助けを求めて手を伸ばしたように感じた。
水かさは義高の腰まであり、流れは速かった。釣り糸を垂れていても、時折り身体を持って行かれそうになる。

「姫っ!」

紅い着物を目印に、義高は一つ息を吸い込むと、おそらく鮎のように素早く泳いだ。
必死に川底を流されてゆく大姫を追ってゆく。
気を失ったのか、もがきもせず白い足が流れてゆくのを、何とか捕まえ手繰り寄せた。

小さな頭を抱え、先に水面に押し上げると、やっと水底に足を付けた。
白い顔を直白くして、大姫はぐったりと義高の腕の中に在る。青ざめた頬に長い髪が張り付いていた。

「姫っ!大姫さまっ!」

声を掛けても大きな目が開かれることはなかった。

「馬鹿な……息をしておらぬ。水を飲んだのか。急がねば……」

*****

義高はこういう時の処置を知っていた。
国許では子供たちは川遊びをするときに、最初に溺れた時の対処方法を学ぶ。川や海で最初の手当てが遅れると命に係わると、幼い子供達にも理解できるように、年長者が遊びの中で手取り足取り詳しく教えた。

義高は大姫を抱え上げると、元の場所まで急ぎ帰ってきた。
大姫の首の下に手を入れて、気道を確保するとふっと息を送り込んだ。胸が上下するのを確かめると、両の手を軽く組み心の臓辺りをめがけ、とんと強めに落とした。何度か、息を送り胸を叩くうちに、握った手に力が込められたのを感じる。
固く閉じられたまぶたが、ふる……と震えた気がする。

「よし。今、少し。」

心の内で強く念じながら、義高は息を送った。

「姫さま。早くお戻りなさい。姫さま。」

一時を数刻のように感じる。
義高は辛抱強く、蘇生の術を尽くした。





Σ( ̄口 ̄*)義高 「ひ、姫さまーー!!」

(*/д\*) 大姫 「落ちちゃった……」

まるで子供のような姫さまです。(*⌒▽⌒*)♪

本日もお読みいただきありがとうございます。 此花咲耶


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