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落日の記憶 17 

坪庭の八重桜が、ほころび始め季節の移り変わりを告げている。
瞬く間に4年の月日が流れていた。

花菱楼の禿、ささめは少年の面影を残したまま、美しく成長していた。
鏡の中のささめは、髪結いと化粧師の手で華やかな姿に変えられていた。
雪華花魁は、出来上がってゆく新しい振袖新造に微笑みかけた。

「ささめ。綺麗にできたね。」

「あい。ありがとうございんす。兄さんのおかげで、この日を迎える事が出来んした。」

巷では、天子様は言葉通り人となり、華族は殆どが所領を財産税として物納し、一般人になっている。
新しく新造になった「ささめ」は、長い煙管をとんと煙草盆に打ち付けた。客を取る前の「突出し」の披露目はすでに終わり、とうとう本日めでたく「ささめ」は水揚げされて「細雪花魁」となる。
新調された金襴の着物を長く引いて、細雪花魁は兄貴分の雪華花魁の前に行儀よく手を付いた。

「雪華兄さん。此度は色々と御骨折りいただきありがとうございんす。細雪は今日より水揚げの運びとなりんした。この後は目出度く、細雪(ささめゆき)花魁となりんす。」

「あい。水揚げの儀式の後は、細雪は今日よりはわっちと同格の花魁でありんす。お励みなんし。」

「兄さんのお馴染みさんの澄川さまに、水揚げをしていただくことになりんした。ありがたいことで、ございんす。兄さんにはお礼の言葉もございんせん。」

雪華花魁は優しい顔を向けた。

「いいんだよ。お前も知っているだろうが、澄川さまは、とても優しい方だよ。うんと、甘えておいで。ああ……それと。お前には一人前になった機会に言っておくことが有る。」

「あい。」

「お前の現の親御さんの話をしておこうかね……?」

細雪は白く水化粧を施した小さな顔を、いいえ……と横に振った。




本日もお読みいただきありがとうございます。
とうとう、この日が来てしまいました。  (´・ω・`) 此花咲耶


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