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小説・若様と過ごした夏・15 

取り合えず、りんご飴だの、東京カステラだのを買い込んで、あたしは帰り道だった。


「そうだ、宗ちゃんに会って帰る?」


「いいの?真子ちゃん。」


「平気、休んでいって。」


宗ちゃんはあたしの持ち物じゃないけど、顔だけは男前の従兄弟が、彼女達に好かれているのはいい気分だった。


この子達、いい子だもん。


「はい、こんばんわ~」


似合いもしない、タトゥを腕に入れた男の子たちが通せんぼした。


「か~のじょ。こんばんわのご挨拶くらい、してもいいんじゃないかな。」


どこにでも、こういうもてない気の毒な人たちは存在する。


「一緒に花火でもしませんか?」


「今日はもう、帰るんです。」


「つれないね~、彼女。」


「間にあってます。」


横を通り抜けようとしたとき、浴衣の片袖を掴まれた。


「離してっ!」


「あっ!」


振り切ったら、片袖が半分千切れそうになって、あたしは不覚にも泣きそうになった。

おばあちゃんが、


「夏祭りに来ておいき」

って、出してくれたママの娘時代の浴衣を何だか汚されたような気がする。


「何、するのよう・・・」


しゃがみこんだあたしの目に、男物の黒い鼻緒の下駄が映った。


「その方等。真子に向かって何をした・・・・」


その口調、やばい、ちび宗ちゃんだ。


あんたには無理だよ。


ここは、あたしが何とかしなきゃと顔を上げたら、若様は跳躍してた・・・


「その方等、控えよ!頭が高い!」

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