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沢木淳也・最後の日 31 

犯人、荻野慶介が研修した大学病院の形成外科から、一人の女性患者がきたのが事件の発端だったと言う。
何度も繰り返し美容整形を受けて、どうしようもなくなった彼女は、担当医から荻野の話を聞いて荻野美容形成外科の門をたたいたらしい。

「先生しか頼る人が居ないんです。」

腕に自信の有った荻野は、大きなマスク姿で現れた彼女を診察し、即日形成手術を施した。荻野慶介が診察したとき、隠された彼女の鼻先はアクアミドという物質を注入し過ぎたせいで、ひどく変形していた。
それでも異物を取り除く手術はうまくいったし、これまでの手術で歪んだ鼻筋も矯正できた。耳骨だけでは足りず、肋軟骨を削って生涯メンテナンスの必要のない鼻先を作り、荻野は完璧な手術をやってのけた。

しかし、彼女は術後の自分の痛々しい姿に、手術は失敗したと思い込み絶望した。
ギブスを当てられた腫れた顔に絶望し、彼女は荻野整形外科の屋上から飛び降りた。

腫れが引きさえすれば、快方に向かうと何度も伝えたのに……と、荻野は歯噛みしたがどうしようもなかった。遺族は荻野を訴え、糾弾した。兄がマスコミ関係者だったこともあり、荻野にすべての責任があるかのように言われ世間から集中砲火を浴びた。事なかれ主義の大学も、紹介した担当医も口をつぐんだ。
彼等が証言すれば、荻野慶介に、何の落ち度もなかったと分かったはずだった。

「雄ちゃん……駄目だよ……どれほど説明しても、言い訳としか取られないんだ。僕は手術に失敗なんてしていない。だけど……もう本人がいないんだもの。母親が、これ以上娘の顔にメスを入れたくないって解剖を拒否したんだよ。裁判になったとしても、手術の成功を裏付けるものは何もない。彼女の場合は鼻の手術に肋骨が必要だったんだと言っても、聞いてもらえない。……僕は、もうおしまいだ。もう医者としての道を閉ざされてしまったんだ……」

「けいちゃん。可哀そうに……」

親友、鹿島雄一は傷ついた荻野慶介の、ただ一人の理解者だった。写真やカルテ、ありったけのものを準備し裁判に臨むように鹿島は助言した。
しかし、世間は美容整形に失敗して世をはかなんだ美女に憐みの眼を向け、裁判員は荻野の主張は認めなかった。

繊細な荻野慶介は、少しずつ壊れてゆく。元々、ゲイだった荻野は鹿島に手を出すようなことはしなかったが、鹿島がたまたま逢わせた警察官の子供に興味を示した。
しばらくして鹿島は電話で呼び出されて、荻野の家に出向いた時、別人のようになった少年との絡みを見せられた。

「けいちゃん……この子が、前に紹介した子なの……?まさか、整形したの……?顔が違ってる。」

「いいから、雄ちゃんはビデオを撮ってよ。後でゆっくり鑑賞して楽しむんだから。この子は真性のマゾヒストなんだから、何を言っても取り合わないで。僕らが愛し合う邪魔だけはしないでよ?例え雄ちゃんでも、許さないからね。」

今となってはそれが本当かどうかも分からない……と、沢木は告げた。




荻野慶介が事件に至ったのには、こんな理由がありました。(´・ω・`)
少し気の毒なところもあるけれど、決してやったことは許されません。鹿島は荻野の面倒をこれから見てゆくのかな……。

本日もお読みいただきありがとうございます。
クリスマスになんとか間に合いました。明日が最終話になります。
メリークリスマス  此花咲耶



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2 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

> 事の発端は、そうだったのか!
> そこから 徐々に 荻野の世界は 歪み狂っていたのね。

(´・ω・`) そうなんです。やりきれない事件が発端でした。
挫折を知らない人が、初めて打ちのめされたとき、どうなるか考えました。

> もし 最初の事件の時に 鹿島が荻野を止めたとしたら…止めたとしても…
> それでも やはり 荻野は 違った意味で まともな精神では いられなかったでしょう。
> 人の心って 本人が思うより 案外強くて 案外脆いものですから
>
鹿島もどこかおかしかったのです。警察官の息子と知り合ったとき、荻野に紹介 すべきではありませんでした。
負の連鎖が絡んでしまいました。

> 昨日の 拭き拭きには 目のやり場には困ったわぁ~
> でも しっかり 見るべき所は見ちゃったけどね♪
> (〃艸〃)ムフッ。o 0...byebye☆

Σ( ̄口 ̄*)ほ、本気で拭き拭きにいらっしゃるとは……。

 ( -ω-)y─┛~~~~パパ沢木 「色々世話になったな。また、よろしく頼む。」

コメントありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

2012/12/25 (Tue) 14:07 | REPLY |   

けいったん  

事の発端は、そうだったのか!
そこから 徐々に 荻野の世界は 歪み狂っていたのね。

もし 最初の事件の時に 鹿島が荻野を止めたとしたら…止めたとしても…
それでも やはり 荻野は 違った意味で まともな精神では いられなかったでしょう

人の心って 本人が思うより 案外強くて 案外脆いものですから


昨日の 拭き拭きには 目のやり場には困ったわぁ~
でも しっかり 見るべき所は見ちゃったけどね♪
(〃艸〃)ムフッ。o 0...byebye☆

2012/12/25 (Tue) 11:53 | REPLY |   

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