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沢木淳也・最後の日 6 

翌朝、木本と松本は気合を入れて、隼の為に朝食作りに励んでいた。大したものはないが、テーブルの上には心づくしが並んでいる。木本は沢木がしていたように、器用に弁当までこしらえていた。

「お前、そろそろ坊ちゃんとねんねを起こして……あ、いい。俺が起こしてくる。」

「兄貴、俺が起こしてきます!」

「いい。俺が行く。」

「あ~、兄貴、ねんねの寝顔見たいとか思ったんでしょ?蒼太がいるくせに~。」

「やかましいっ。俺は沢木の旦那に直接ねんねを頼まれてんだよっ!」

「でっ!」

本気で数発の拳骨を食らい、松本は涙目になった。
どちらが声を掛けに行くかで騒いでいると、きちんと制服を身につけた二人がリビングにやってきた。

「朝っぱらから何やってんの?おまえら。」

「木本さん、松本さん……おはようございます。」

分厚い厚底眼鏡に戻った隼の目許は隈が出来て、赤く腫れている。
夜中眠れなくて、寝返りばかり打っていた隼を、周二はそっと抱きしめて朝までじっとしていたらしい。いまだ思いを遂げられないでいる周二が、初心な隼に本気で惚れているのは間違いなかった。

「いや、目玉焼きがいいか、ゆで卵がいいか揉めてたんです。ねんねがどっちが好きか聞いて居なかったから。」

何だかんだと言いながら、二人が隼の心配をしていることは十分伝わっていた。

「ぼく……どっちも好き……」

「一応、両方用意してありますからね。好きな方を召し上がってください。」

「はい……ありがとございます。」

決して朝から晩までくっ付いているわけではなかったが、父親の出張に隼の胸は騒いでいた。
これまで帰りの日時を伝えずに、留守にしたことなどなかった。以前にも、同じようなことが一度だけ有ったのを隼は覚えている。
身内の無い隼が、当時預けられた施設で、門を見つめて父を待っていた遠い昔。
あの時、父は被弾して警察病院に入院していた。

「ねんね?」

「……おいしいです。木本さん、松本さん。」

ぽと……と目玉焼きに涙が落ちた。

「ねんね、可哀想に。無理してる……。」

松本がすんと洟をすすった。

*****

「周二坊ちゃん。学食もあるでしょうけど、これ一応弁当作ってみたんで、良かったら持って行ってください。」

「わぁ。お弁当?」

「蒼太の分もあるんで、渡して貰えますか?」

「愛妻弁当かよ。とうとう尻に敷かれたな、木本。」

「いやなら返してもらってもいいんですよ。」

「持っていくって。」

急いで周二は受け取った。嬉しそうな隼の顔を見ていたら、木本の気遣いが嬉しくなる。

「たこさんウインナ~入ってる?」

「入ってますよ。カニさんも。おにぎりは、サッカーボールです。」

「すごい。パパの作るお弁当みたい。」

「良かったね、周二くん。お昼休みが楽しみだねぇ。樋渡会長もきっと喜ぶよ。」

「そうだな。」

やっと笑った隼に、ほんの少し安堵して、周二は残りの朝食をかきこんだ。




本日もお読みいただき、ありがとうございます。

(´・ω・`) 眠れぬ夜を過ごした隼ちゃんです……

早くパパが帰ってくるといいね。(´・ω・`) 隼「うん……」


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