FC2ブログ

小説・蜻蛉の記(貴久の心)・16 

悲嘆にくれる大輔を残して、我が身ひとり母上の元に行くのは切なかったが、人は誰しもいつかは別れねばならなかった。


願わくば大輔の慟哭の悲しみが、少しでも早く癒えますように・・・

目が溶けるほど泣くだろう大輔を思うと、わたしを誘う母上の声も遠ざけたいくらいだった。


・・・すまぬ大輔。

そちに尽くしてもらった数々は、全て忘れることなく抱いてゆく。

おまえが穏やかな人生の旅を終えたら、きっといつか彼岸で会えるだろう・・・

だからどんなに辛くても、今は別れが必要なのだ。

わたしのかけがえのない、大輔。

だから、泣くな・・・



薄闇の、帳が落ちようとしていた・・・

意識はとうに、薄れていた・・・



もう・・・返事はかなわぬ・・・



大輔・・・

おまえこそが空高く飛翔する、わたしの勝ち虫であった。



                                        完

 ランキングに参加しております。
励みになります、よろしくお願いします。
        此花

にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
にほんブログ村
関連記事

0 Comments

Leave a comment