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平成大江戸花魁物語 12 

楼主の顔に喜色が浮かぶ。

「ほ……そうかい。初雪禿の足抜けの罪を花魁が被ると言うんだね。腹立ち紛れに、いっそ忍び込んだらしい相手も捕らえて、重ねて晒してやろうと思っていたんだが、そういう事なら条件を飲もうか。」

だがね……と、続けられた楼主の言葉は冷たかった。

「油屋の旦那の身請け話を勝手に断った上に、今度は禿の不始末だ。ちっとばかり、その澄ました玲瓏な白面を歪めてやろうじゃないか。ちょうど、桜の季節の花見の余興にいいだろう。坪庭で夜桜の宴を開くとしよう。お前を吊るすには、枝ぶりももってこいじゃないか。」

「あい、お父さん。この雪華を、ご存分にお仕置きしてくんなまし……」

「言っておくが、私は最近のおまえの気ままなやり方には、少しばかり腹を立てていたんだ。覚悟はいいね、雪華花魁。大勢の前で啼いてもらうよ。お前が袖にした、油屋の旦那にも招待状を送っておこう。お前がこれまでつれなくした他の上客にもね。高い見料を払ってくれるだろうよ。」

「あ……い。」

雪華の白い顔が、心なしか強張っていた。

*****

「うう~~~~っ!」

芋虫のように縄目を受けた初雪を、抱き寄せて自由にすると、雪華太夫は打掛を脱ぎ掛けてやった。

「冷たい土間にいると、お風邪を引くよ。六花、そこで覗いているんだろう。男衆に頼んで、初雪にお湯を使わせてやってくれ。温かい汁もね。」

「あい。」

部屋でいい子にしてろと言われた六花は、どうにも気になってそうっと降りてきて、様子をうかがっていた。

「雪華兄さん、兄さん……あぁん……初雪のせいで……兄さんが酷い目に遭う~……」

「よしよし……泣かなくてもいいよ。足抜けのお詫びをするのは、初雪には酷だよ。男衆に、よってたかっていたぶられるんだよ。どこに隠れているか知らないけれど、忍んで来た好きなお人に、そんな姿は見せられないだろう?」

「でも……でもっ!」

「お前が思い詰めて足抜けなんぞをする前に、身が立つように考えてやったらよかったんだが、禿のおまえがついつい可愛くて、遅くなってしまった。だから兄さんが、初雪の代わりに罰を受けようよ。」

初雪はとめどない涙にしとどに濡れ、傍に控えた六花も涙にくれた。自由にふるまっているように見える雪華花魁でさえ、娼妓は誰も皆、商品だと思い知った。
大江戸一の花菱楼の美しい籠の鳥は、風切り羽を切られ、決して自由に羽ばたいたりはできないのだった。

仕えた禿が馬鹿なことをしでかしたせいで、この美しい雪華花魁が酷い目に遭う……。
止まらない嗚咽と溢れる涙で、六花も溺れそうになっていた。誰も悪いことなどしていない。初雪は、好きな人に逢いたかっただけだ。
それでも、最初に交わした約定がある限り、それは許されない。
胸に契約の重さが沈んだ。

「うっ……うっ、六花ぁ。」

「初雪さん……うっうっ……」

庇った雪華花魁がどんな目に遭うのか、想像もつかずただ二人の禿は抱き合って、滂沱の涙に泣きぬれていた。

「六花。初雪。もう、泣くのはおよし。」

頬についた土を舐め取ってやると、さあ、六花も支度を手伝っておくれねと優しく三日月の瞳を向けた。

「あ……い。雪華兄さん。申し訳もございんせん。」

「初雪兄さん、ね、支度のお手伝いをしよう。」

「あ……い。」

涙を拭いて毅然と六花は、先に立ち上がった。雪華花魁の覚悟を知った上は、もう迷いはなかった。
どんなことが起ころうとも、この綺麗な人がどれほど乱れても、きちんと動ぜずに自分は見届けようと思った。
それが、雪華花魁に付いた禿の務めだった。





(*´・ω・)(・ω・`*)「公開折檻なんて……」「だいじょぶ……?」

(〃゚∇゚〃) ……雪華花魁吊るされます←此花だいじょぶか?

本日もお読みいただきありがとうございます。荒唐無稽なお話として、お読みいただければと思います。

「ファンタジーでっす!」(`・ω・´)此花咲耶


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