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流れる雲の果て……21 

静かに聞いて居た醍醐が、話の腰を折った。

「本当のところは、どうだったんです?」

「そんなことで、松井さんは先生の手を放しちまったんですか?そういうお人には見えませんが……。」

「おれの気持ちは、美千緒と出会った時から変わりません。むしろ美千緒の抱えていることを聞いても、どんどんあいつが愛おしくなるばかりで、離れたいとか一度も考えたことはありませんでした。」

「そうですか。安心しました。」

「じゃあ、なんで美千緒さんは、あんな寂しいアパートに一人でいたんだよっ。」

「これ、大二郎。」

「だって、空っぽの部屋だったんだ。布団もタンスも、お茶碗さえないような部屋で、美千緒さんはおれの事を「聡」って呼んだんだ。おれには、何もない部屋が美千緒さんの心だと思ったよ。可哀そうでたまらなかった。」

「大二郎くん。」

「美千緒さんは、毎日、舞台を見つめていたよ。お師匠さんとおれの顔があんたに似ていたからだろう?時々苦しそうにするし、何か訳ありだとは思ってたけど、三か月だなんて……あんまりじゃないか……。何で、これまでほおっておいたんだ。おれはガキだけど、美千緒さんが今でもあんたのことを好きなことくらいわかる。おれだって、美千緒さんの事好きだから……。」

「ありがとう、大二郎くん。美千緒の傍にずっといてくれたんだね。おれもあの寂しがり屋を一人にさせたくなくて、一生懸命捜してたんだ。」

唇が震える。
罵ってやろうと思ったが、きっとこの男は本気で美千緒を愛しているのだと思った。大二郎はきゅっと唇をかみしめた。

「ここまで打ち明けた以上、美千緒が何故離れて行ったのかお話したいと思います。」

松井聡は、きちんと居住まいを正した。

「一緒に住むようになって、おれはマンションを買いました。戸籍を入れる代わりにと言うのもおかしな話ですけど、美千緒におれの本気を形にして見せてやりたかったんです。」

*****

新しいマンションに連れて行ったとき、部屋を見渡し、恋人の顔を眺めて、美千緒は例えようもないほどうれしそうな笑顔を見せた。

「ここに二人で住むの?すごくいい部屋だね。カーテンもぼくの好きな色だ。」

「良かった。張り込んだ甲斐があったよ。」

「カーテンレールがアイアンだなんて……聡。すごい、ぼくの頭の中覗かれた気がする。」

「実は訳ありで安くなってるのをネットで買ったんだ。おれが好きなものはきっと美千緒も好きだろうと思ったからね。」

「聡。どうしよう……何か嬉しすぎて足が震える……。」

「美千緒の喜ぶ顔が見たかった。足りない物はこれから二人で一つずつ揃えて行こう。ここから二人で始めような。」

「うん。」

聡は美千緒の手を曳いて、奥の部屋を開けた。

「これだけは、おれの趣味。」

「でっかいベッド……」

「抱きあって眠るには、このくらいの大きさが必要だろ?美千緒は別々に眠りたかったかもしれないけど、おれが一緒に居たいからこれにした。」

「聡と一緒に居ると、ぼくはどんな夢を見るんだろう。」

きっと幸せな夢だねと、美千緒は聡を見上げ、蕩けるように微笑んだ。




(´・ω・`) 悲しいね……←書いといて。

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