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夏の秘めごと 19 【最終話】 

禎克の話をさえぎって、上谷は叫んだ。




「金剛の出すパスコースが、相手の裏をかくのはわかったけど、おれが金剛に合わせなかったんだ。わかりきったパスコースにいるおれへのボールがカットされてスティールされたのは、当たり前のことだ。絶対に金剛のせいじゃない。」

「負けたのが誰かのせいって言う話なら、それはむしろおれだ。おれは金剛の才能に嫉妬したんだよ。金剛と組んで練習するうちに、達也さんの膝が直っても、きっともうコートにあの人の居場所はないとわかってしまった。達也さんもそうだ。金剛がいる限り膝が直っても自分の出る幕はないと諦めてしまった。おれは……綺麗ごとを並べて、いい先輩面をしながら金剛を傷つけることで、憂さ晴らしをしたかっただけだ。本当にごめん。」

頭を下げ続ける上谷に、禎克は乾いた声でもういいです、と声を掛けた。上谷がキャプテンに対して抱いている気持ちに、嘘はないようだ。だったら、許せると思った。

「ぼくが全中選抜からチームに入って、推薦枠の二年生と上手くいかなかったとき、上谷先輩が言ってくれました。コートにいる先発の5人だけが選ばれた人間じゃないって。ベンチに入った全員で試合をしようって……。」

「ああ……そう言ったかな。」

「ベンチに控えがいるから、先発もファールを恐れず思い切ったプレイが出来る。誰かの足を引っ張ったりしないで一緒に上を目指そうって。ポイントガードはチームに一人でいいんじゃないかって言った先輩もいたけど、上谷先輩は、金剛の力がいつか必要になる。今年のチームだけじゃない、来年、再来年に金剛が必要なんだって。違うタイプのポイントガードがいるだけで、カードが増えるって言ってくれました。」

「本当にそう思ったから、言ったんだ。」

「先輩さん。さあちゃんの力は認めてたってことなんでしょ?」

「勿論だ。金剛がいれば、来年はもっと上にいけると思う。行きたいと思ってる。」

大二郎は、くすっと笑った。

「魔が差したってことか。さあちゃん、かわいいもんねぇ。」

「ああ。もう二度とあんなことしない。誓う。すまなかった。」

もう一度、深々と頭を下げる上谷に、禎克は肩をすくめてもういいですと告げた。

「上谷先輩にそんな風に思われてたなんて、驚きました。ぼくは、初めて高校のチームに参加したとき、こんなにレベルが高いところでやっていけるのかって思ってましたから。インハイに出場して、自分がどれだけ未熟で使えない奴かも思い知ったところだったし。」

禎克も本音を打ち明けた。

「それに、ぼくもキャプテンが怪我したとき、表で心配しながらも、もしかすると自分にも出番があるかもしれないって思いましたから、お互い様です。高校に入って一番面倒見てくれた上谷先輩に、裏切られたような気がしたんだけど、先輩もキャプテンの為なら我を忘れるってことっすね。」

「誰もみんな、恋すると盲目になるってことだよ、さあちゃん。」

「うん。話が出来て、良かった。上谷先輩は、いつも大人で物わかりが良いと思ってたけど、中身はあまり変わらないっていうか、暴走するタイプだったというか。」

「すまん。」

上谷は笑いながら泣き、泣きながら笑っていた。きっと、ここに来るのも相当勇気を振り絞ってのことに違いない。
誰かを思うあまりに、これほど冷静な上谷でさえ我を忘れる。
禎克も、目の前で微笑む大切なものを、見失わないようにしようと思った。

*****

自転車に乗って手を振った。

「大二郎くん、またね。くじけんなよ。」

「うん。さあちゃんも。」

笑顔が、くしゃと崩れそうになる。

「離れても、傍にいるから、泣くな。」

変な日本語だと言って、大二郎はもう一度抱き付いてきた。
二の腕の内側にいつの間にか、大二郎が内緒で付けた小さな紅い花が咲く。

夏の秘めごとを心に抱いて、禎克は風を切った。

盛夏。

陽炎が揺れた。





長らくお読みいただき、ありがとうございました。
最後を書き直していたら、すっかり時間が経ってしまいました。すまぬ~(´・ω・`)
なので、あとがきは後で書きます。

本日もお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチもコメントもありがとうございます。
日々の励みになりました。とてもうれしかったです。  此花咲耶

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4 Comments

此花咲耶  

ちよさま

> 初恋のおちびさん時代からずぅーっとお互い想いあって、
> これからもずぅーっと想い続けていくんでしょうね。

二人とも良く忘れずに、ここまで来たな~という感じです。
きっと何があっても、変わらず好きでいると思います。(*⌒▽⌒*)♪
>
「離れても、傍にいるから、泣くな。」
>
> 素敵な言葉です。
> 大二郎くんの禎克くんへの強い愛を感じます~。

この言葉に目を留めてくださって、ありがとうございます。実は、この言葉を何度も書き直しました。
嬉しいです。(〃゚∇゚〃)

> 禎克くんだって、この夏、いろんなことを
> 先輩や大二郎くんからお勉強しましたよね。

何も知らなかったさあちゃんも、少しは大人になったかな。
これからパソコン検索をかけて、おうちでひっくり返るはずです。♪ψ(=ФωФ)ψ

> 恋すること、人を愛おしむ想いを知って
> これからも大二郎くんへのラブを大放出してください。
>
禎克「ありがとうございます。がんばります。(`・ω・´)」

> 続編も、もちろん、その他のきゅんきゅん~なお話も楽しみにしております。
> 素敵なお話をありがとうございました。

こちらこそ、お読みいただきありがとうございました。コメントうれしかったです。
これからも頑張って、書いてゆきたいと思います。
きゅんきゅん~なお話。(〃゚∇゚〃) 色々書きたいことがいっぱいあります。
よろしくお願いします。

2012/09/15 (Sat) 19:55 | REPLY |   

ちよ  

祝・完結

初恋のおちびさん時代からずぅーっとお互い想いあって、
これからもずぅーっと想い続けていくんでしょうね。

大二郎くんの「離れても、傍にいるから、泣くな。」

素敵な言葉です。
大二郎くんの禎克くんへの強い愛を感じます~。
禎克くんだって、この夏、いろんなことを
先輩や大二郎くんからお勉強しましたよね。
恋すること、人を愛おしむ想いを知って
これからも大二郎くんへのラブを大放出してください。

続編も、もちろん、その他のきゅんきゅん~なお話も楽しみにしております。
素敵なお話をありがとうございました。

2012/09/15 (Sat) 13:53 | REPLY |   

此花咲耶  

けいったんさま

> 先輩との蟠りも解け 良かったね、さあちゃん♪
>
(〃゚∇゚〃) 禎克 「ホッとしました。これで、バスケットも続けられそうです。」

> さあちゃんは バスケ、大二郎は 役者として進む道は違うけれど
> 挫けそうになった時には 互いを支え合う存在となってね!
>
(ノ´▽`)ノヽ(´▽`ヽ) 支え合う存在~。になれたらいいなぁと思います。きっと大二郎くんのほうが大変だと思うけど、好きな稼業なので乗り切ってくれると思います。

> 完結お疲れ様です。
> 幼少時代編、青年時代編と 成長した2人を楽しく読ませて頂きました。
> ヾ(@^▽^@)ノ ァリガトゥー...byebye☆

ありがとうございます。いただいたコメント、とてもうれしかったです。
けいったんさんのコメは、すごく深いところまで読んでくださっているので、裏を書くのが大変です。(〃ー〃)
ちびのころが一番書きやすかったような気がします。
>
> P.S.で、大人編もあるの、此花さま?:*:・'゜ (〃ゝ∇・)ゞえヘッ♪

Σ( ̄口 ̄*)……お、大人編……、中学生編を書こうと思ってました、(*/д\*)
いつかは大人の恋愛も書けるようになりたいです。←遠そう~。

コメントありがとうございました。
嬉しかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2012/09/15 (Sat) 00:00 | REPLY |   

けいったん  

先輩との蟠りも解け 良かったね、さあちゃん♪

さあちゃんは バスケ、大二郎は 役者として進む道は違うけれど
挫けそうになった時には 互いを支え合う存在となってね!

完結お疲れ様です。
幼少時代編、青年時代編と 成長した2人を楽しく読ませて頂きました。
ヾ(@^▽^@)ノ ァリガトゥー...byebye☆

P.S.で、大人編もあるの、此花さま?:*:・'゜ (〃ゝ∇・)ゞえヘッ♪

2012/09/14 (Fri) 22:37 | REPLY |   

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