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禎克君の恋人 23 

食後、そそくさと洗面所に向かう禎克を追った大二郎が、背後にぴとっと張り付いた。

「ん?どうしたの?」

「だって……。見張ってないと、いなくなりそうだから。」

ふと気づいて、禎克は聞いてみた。

「そう言えば大二郎くん。ぼくのこと、昔っからさあちゃんって呼ぶけど、名前覚えてる?」

「さあちゃんは……さあちゃんだよ。」

「やっぱり、覚えてなかったか。そうじゃないかなって気はしてたけど。」

「なんで?」

「だって、久しぶりに会ったのにちゃん付けはないだろ?ちびの頃は、まるで似合わないって誰も名前を呼ばなかったけど、今は友達は名前で呼ぶんだよ。サダカツとかサダって。」

「おれは、さあちゃんの方が馴染みが有って良いよ。ずっとさあちゃんって言って来たし、それにね、誰も呼ばない名前で呼びたい……それって、おれが特別ってことだろ?」

「大二郎くんは、ずっと特別だよ。こっち来て。大切なお守りを見せてあげる。大事な試合の時はいつも持っていくんだ。」

「お守り?」

ほら……と言ってパウチされた古い写真を見せたら、大二郎はじっと見入った。

「これ……。おれもね……同じ写真、すごく大事にしてたんだよ。でも旅のどさくさで失くしてしまって、あの時は哀しかったなぁ……。さあちゃんをもう一回失くしてしまったような気がしたよ。」

「写真一枚で大げさだなぁ。もしかして、泣いたの?」

「ううん。役者はね……哀しくてもプライベートでは泣いちゃいけないんだよ。顔が崩れちゃ仕事に響くだろ。だから、仕事が休みの日まで待って、いっぱい泣いた。お師匠さんが、縁が有ったら必ず会えるから時期をお待ちって言ったけど、会えるまで長かった~。」

会って以来、しょっちゅう泣いてるじゃないかと思ったが、そこは何とか呑み込んだ。
久し振りに逢った遠距離恋愛の恋人同士のような会話になっているのに、禎克は気が付いていない。
奥手の禎克にとって、今の二人で過ごす心地よい時間に名前を付けろと言っても思いつく単語はないだろう。

「さあちゃん……歯磨き終わった?」

「うん。」

「だったら、キスしよ……?」

「だったらって?」

「いっぱいキスして。おれ……これからさあちゃんのこと、いっぱい愛してもいい?」

真剣な顔の大二郎を、思わずまじまじと見つめてしまう。

「愛してもいいって、もうキスをしたよ……?」

「足りないよ。キスだけじゃなく、もっと。もっと、さあちゃんを感じたい。離れ離れになっても、さあちゃんがおれのこと忘れないように、さあちゃんに印をつけたいんだ。」

大二郎は真っ直ぐに禎克に向かい、ずいと足を進めた。
気圧されて禎克は、ベッドにとんと腰を下ろす格好になった。

「あの……あのね、大二郎くん。正直にいうと、ぼくは本当にバスケットしかしてこなかったから、気持ちは嬉しいんだけどどうしていいかわからない。印ってキスマークの事?」

「さあちゃん……。オナニーってしたことある?」

「オッ……!?え……と。そりゃ、男だし、多少は……あります。」

「セクスは?誰かと一つになったことある?」

「ないよ。女の子と付き合う暇なんてなかったからね。ファーストキスだって言っただろ。大二郎くんは、いろいろ知ってそうだけど、ぼくは知らない。」

「さあちゃん。おれの顔をぶったこと、覚えてる?」

「あ~……、あの時はごめん。ちびだったから、役者の顔に傷を付けちゃいけないなんて、考えもしなかったんだ。」

「おれ達、あれっきりだっただろ?青紫の痣が、緑色になって薄黄色になってまだらになったとき、さあちゃんとつなぐものが何もないことに気が付いて、おれすごく悲しかったんだよ。」

「ぼくは会った時、大二郎くんが綺麗な顔だったんで、ほっとした。」

「さあちゃん……。」

禎克の胸に、大二郎は顔を埋めた。

「ずっと、好きだったよ。だから……だから……。もう失いたくない。おれのさあちゃんでいて。」

初めてではないはずの大二郎の指先が震え、禎克の言葉を待って怯えていた。

「大二郎くん。」

禎克は、大二郎の一途な思いに圧倒されていた。




(〃゚∇゚〃) ここまで来ました。
ちゃんと、大二郎くんの気持ちが伝わるといいね。
もどかしい二人ですけど、見守ってやってください。

どきどき……(*ノ▽ノ)キャ~ッ←書きながら照れます~

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