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禎克君の恋人 16 

舞台が開演するまでのわずかな時間。
禎克は、急いで自宅に帰った。

「ただいま~!」

「あら。さあちゃん、遅かったのね~。」

「お母さん。湊は?」

「部屋にいると思うけど?」

「ありがと。シャワー浴びたら、直ぐに出かけるから。」

「あら。忙しいこと。」

「大二郎くんに会って来る。」

合宿の洗濯物を渡すと、禎克は階段を駆け上がった。

「湊!大二郎くんに会った!……じゃなくて、メールありがとう。これから、大二郎くんの舞台を見るんだ。湊も行く?」

「さあちゃ~ん。空気読める男にならなきゃだめだぞ。」

「ん?どうゆうこと?」

「大二郎くんは、さあちゃんに見て欲しいのよ。その位、わかってあげなきゃ。一緒に行ったら、湊は完璧お邪魔虫だよ。」

「あ、そうか。」

今更のように禎克は頷いた。

「大二郎くん、今が正念場だって言ってた。何かね、悲壮な顔だったよ。」

「そりゃあね。だって、劇団醍醐って言うくらいだから、これまでは醍醐さん一人で引っ張ってたようなものでしょ?お父さんの闘病だってあるだろうし、もし長引くのだとしたら、これからは大二郎くんが劇団を背負ってゆくことになるんじゃないの?大変よ。」

「そっか……。」

「湊も小さな劇団のことは、色々調べて知ってるけど、どこも経営状態は火の車で大変みたい。大二郎くんの所は、テレビや映画があるから貯えもあるだろうけど、実は演劇って儲からないのよね~。」

「へえ。そんな大変なのに、続けるんだね。」

「それが、したいことだから。どんな苦労しても、板の上に上がりたいって思うのよ。さあちゃんだってそうでしょ。一度アキレス腱切っても、バスケット止めずに続けてるじゃない。」

「湊もそうなのか?」

「湊の決心なんて、大二郎くんの背負ってるものに比べたら、ちっぽけなものだよ。励ましてあげて。それが一番いいと思う。」

「うん。」

湊は自分が役者を目指しているだけあって、演劇について禎克よりは詳しかった。だから、大二郎の置かれた今の厳しい状況についても、少しは理解していた。

何も知らない禎克には、大二郎の抱えた現実は、まるで目からうろこのような話だ。
話を聞けば、大二郎の背負っているものの重さを、ほんの少しわかったような気がする。
父親が手術したばかりなのに、病院へ行っていないのが少し不思議だったが、舞台に立つ大二郎の小さな肩に、劇団の明日が重く生活がのしかかっていたからだった。
自分の胸までしかなかった大二郎の、華奢な肩と涙を思い出した。

*****

「お母さん。これから大二郎くんの所へ行って、そのままインターハイに出発するから。」

母が夕飯を大急ぎで仕上げ、あれこれ沢山詰めてくれた。

「こんなものしかないけれど、持って行って。さあちゃんも、しっかりご飯食べるのよ。試合、頑張ってね。」

「うん。ありがとう。頑張ってきます。」

大二郎を求めて駆け上がった坂を一目散に上る。
子どもの足ではなかなかつかなかった入り口も、今はあっという間だ。華やいだ幟旗も今は違う目で見ていた。




何も知らなかった大二郎くんの世界。

(´・ω・`) 禎克 「結構大変みたい……」

(。'-')(。,_,)ウンウン 湊 「そうなの。」

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