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だいじろうくんの事情 1 

さあちゃんこと金剛禎克(こんごうさだかつ)は、その夜から熱を出した。
大好きな大二郎がいなくなった哀しみと空しさがごちゃごちゃになって、小さな身体には受けとめきれなかった。
熱にうなされ、時折り「大二郎くん……」と求めるのが、なかなか素直になれなかった禎克の本心だったかもしれない。
大二郎くんと呼びかければ、夢の中で紅いお振袖を着た禿も、頬を濡らして「さあちゃ~ん」と泣いた。
悲しくて悲しくて、たまらなかった。

*****

一方、既に四国の土地を踏んでいた大二郎も、踊りに身が入らずぼんやりとしていた。
稽古場に叱咤の声が響く。

「大二郎!足が違う。引き足が逆だと上手く回れないだろう?」

「あ……。はい。すみません、お師匠さん。」

「もう一度やってみなさい。羽鳥、音楽。」

先ほどから、同じ振りを繰り返している大二郎だった。
何度も同じ個所で間違えて叱られた。

「あ~!もう、やめだ、やめだ!今日の演目で、お前の踊りは無し。いいな。そんな身の入らない手踊りに、木戸銭を頂くわけにはいかない。どこが悪いかわかってるんだろう?」

「……はい。ごめんなさい。」

悔し涙がぽろりと零れる。
大二郎には、座長が求めることは分かっていた。生まれた時からこの劇団の役者で、小さいながらもすでに金を稼ぐプロだった。
ただ、今の大二郎は大好きな舞踊に、何故か身が入らなかった。自分でもいつもと勝手が違うのが不思議だった。
一人その場で花傘を取り上げ、小首を曲げて少女の可愛いしなを作った。何度も間違ったところを繰り返して踊る。

******

「醍醐さん。あれじゃ、大二郎が可哀想ですよ。あんなきつい言い方をしなくても、大二郎はいつも通り一生懸命やっているじゃありませんか。」

「羽鳥。」

思わず追ってきて、大二郎をかばった副座長の羽鳥に、醍醐は向き直った。

「わかっている。今日は意識を踊りだけに向けてやろうと思って、きつく言ったんだ。あいつは負けん気だからな。本人に判っているかどうかはわからないが、大二郎は初めての別れを経験して、ちいとばかり参っているようだ。」

「そうでしたか。余計な差し出口を叩いて、すみませんでした。今回の出会いは、大二郎には初恋ですかね?」

「さあ、どうなんだろうなぁ。子供ってのは親が思っているよりは、はるかにきちんと物を考えているからな。まあ、次に興行するときまでお互いが覚えているなら、縁があったということなんだろうよ。」

座長の言葉に安心して、羽鳥と呼ばれた青年はふっと柔らかい笑みを浮かべた。舞台で常に醍醐の相手役を務める息の合った座員だった。

「さあちゃんって呼んでましたね。とてもかわいい坊ちゃんでした。お見送りの時に、醍醐さんにはもう一人子供がいたのかいって、多くのお客様に聞かれましたよ。」

「そうだなぁ。もう一人、子供がいれば大二郎も寂しくないし、演目も増える。羽鳥、お前、俺の子を産んでくれるか?」

男の羽鳥が、自分に叶わぬ想いを寄せているのを知っていて、こういう戯言を醍醐は平気で口にする。心の揺れを決して気取られないように、わざと虚勢を張ってその場に手を突き、羽鳥は真面目くさった面持ちで答えた。

「醍醐さんの子供なら、俺はいつでも産めますよ。覚悟はできてます。どうぞ、孕ませてください。」

「ばか。」

醍醐はついと羽鳥のあごを持ち上げて、軽く唇をなぶった。





(`・ω・´)羽鳥 「ぱんつ脱ぎましょうか?醍醐さん。」

(*⌒▽⌒*)♪醍醐 「ないない~」

(´・ω・`) 此花「ごめんね……」

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今日からしばらくは、大二郎くんのお話です。
よろしくお願いします。    此花咲耶


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