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さだかつくんの恋人 12 

「ほら。さあちゃん、花魁になってた大二郎くんのお父さんもお元気でしょ?さっき、格好良くお歌を歌って、踊ってたのも見たでしょ?」

「うん……。」

禿の扮装のままオレンジジュースを飲んでいた大二郎が、禎克に気が付いた。
大急ぎでぱたぱたと、長い袖を振ってやって来る。

「さあちゃんっ……来てくれたの?うれしいっ!」

舞台ではずいぶん頼りなく小さく見えた大二郎が、傍によると、いつも通り自分よりも頭一つ分大きかったのでちょっと安心する。

「さあちゃんね、大二郎くんが可哀想だって、涙が止まらなくなってしまったの。お芝居だって言ったのだけどね。」

「だって……大二郎くんが、ひとりぼっちになったもん……。」

「さあちゃん。心配してくれてありがと。もう、怒ってない……?」

「うん……。」

本当は、はじめから怒ってなどいない禎克だった。何か言わなきゃと思いながら、見つめ合ったまま、もじもじとしていた。禿の格好の大二郎が、とてもかわいくて恥ずかしくなってしまった。
突然、頭上から大きな手が下りてきて、ぽんぽんと禎克の頭を撫でた。

「さあちゃんは、大二郎の為に泣いてくれたのかい?嬉しいねぇ。役者冥利につきるってもんだ。お芝居は面白かったかい?」

「大二郎くんが、可哀想だった。大二郎くんのお父さん、すごく綺麗だった。ぼく、どきどきした……。」

「そうかい。ありがとうよ。さあちゃんは感受性の強い優しい子だね。」

禎克たちをその場において、ごったがす楽屋裏で柏木醍醐は慌ただしく衣装を解き始めた。

「すみません、金剛さん。時間が取れなくて、御見苦しい裏を見せてしまいます。表でお待ちいただいているお客様方にご挨拶してきますので、しばらくこちらでお待ちください。」

花魁の日本髪のかつらを外し、晒しを巻いてさっと着流しを着こみ、瞬時にいなせな男姿になると、柏木醍醐はしゅっと襟をしごき客の見送りに出かけた。楽屋に届いたたくさんの花束を解いて抱えて、それをお客様に一輪ずつ配るのだと言う。
禎克も湊も知らなかったが、柏木醍醐劇団では常にこんな風に、来てくださったお客様を精一杯お見送りするらしい。
結ばれた一期一会のご縁を、一度きりにしないように。
いつか再び会う日を約束して、指切り代わりに一人一人に花が渡される。

「さあちゃん。ちょっとだけ待っててね。最後の一人をお見送りするまでが、劇団のお仕事なんだ。おれも、お見送りに行って来る。」

「ぼくも行く。」

「さあちゃんも、お見送りするの?」

「うん。」

「そう?じゃ、一緒にいこ。」

仲良く手をつないで、お見送りに向かう禎克を母と湊は笑顔で送った。




(*⌒▽⌒*)♪「さあちゃんっ!来てくれたんだ!」

やっと、仲良くできました。(*⌒▽⌒*)♪
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