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露草の記・参(草陰の露)21 

藩主は兼良から話を聞き、即断した。

素性の不確かな義元を誰よりも信頼していたのは、案外、拾い主の双馬藩主、安名元秀であったかも知れぬ。秀幸に向ける、ひたすらの一途な思いに気付いていた。

「兼良殿。義元の思うように、やらせてみよ。佐々井家には、わたしがすぐに文を書く。」

「はっ。即刻。」

*****

「義元!殿のご裁可が下りた。思うようにしてみよ。」

(ああ……良かった。ありがとうございます、父上。……直ぐに支度を!)

すぐに秀幸が隔離された奥座敷に、義元が入った。

熱で伏せる嫡男の枕もとには、守役の老臣秋津が片時も離れず、寝ずの看護に当たっている。
幼い頃からずっと守り役として傍に控えて来た秋津は、高い熱が出始めた秀幸の額に、何度も濡れ手拭いを乗せ必死の看病をしていた。
自らも幼子を失った経験上、この病には打つ手のないことも十二分に良く知っていた。

「秋津。義元が病に効く手当てをする。傍に居たいだろうが、聞き分けて席を外してくれ。」

「それは……義元さまには若さまを御救い下さると言うことですかな。策があると?」

「そうだ。手当ては一刻を争う。」

すぐに施術の説明を受けたが、秋津は義元がどこの馬の骨かも知れない出自でありながら、嫡男と関わるのを余り面白くは思っていなかった。まして兼良が驚いたように、そのような手当ては長く生きてきた秋津も聞いたことが無い。

忠義な秋津は、普段は義元に仕方なくおざなりに頭を下げるものの、他の重臣たちと同じように忸怩たる思いを抱え、気安く声などかけたこともなかった。
兼良との養子縁組も、里へ帰した北の方のように藩主の弟、兼良をはかりごとにかけ、何かの魂胆があって、双馬藩内部に深く入って来たのではないかという疑いを持っていた。
さすがに、老いたりとはいえ確かな洞察力を持った忠臣である。

秀幸の元服以来、表向きは守り役を離れたものの、義元が何らかの仔細があって潜り込んだのではなかったかと疑いを抱え、常に油断なく動向をうかがっていた。

しかし義元が現実に何度も秀幸を死地から救うのを見て、次第に疑いの気持ちは揺るぎ始めていた。心からは信用できないと思いながらも、双馬の跡取り秀幸を失うよりはましだと思い直し、得体の知れない女のような優男にかけてみることにした。

「義元さま、わしからもこの通り頼む。何とぞ秀幸さまをお助け下され。老いたこの身でよければいかようにもお使いいただきたい。」

(はい……。義元の持てるすべてを投げ打って、必ず若さまをお助けいたしまする。)

深々と互いに頭を下げ合った。

*****

義元の細い声を、もらす事無く義父が伝える。
秋津は城内を走り回って必要な物を整えた。

「すぐに、火桶を持って参れ。」

「沸騰させた湯がいる。」

「新しい小柄(こづか)を煮沸するのじゃ。」

「傷を洗う度の強い焼酎を。」

「清潔な晒し布を。大量に用意せよ!」

「細い縫い針と、絹糸。」

盆に載せられた物を抱え、今朝一番で自ら領内から集めた新鮮な血膿を片手に、義元が病人の枕元に寄った。

(わかさま……。)

側で声をかけると、顔に包帯を巻かれた秀幸が、気付いて呻く。





(´・ω・`) おギギ (若さま。おいたわしい……)

。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。 秀幸 「頭痛い~。体が熱い~。」

(ノд-。) おギギ (若さま……お可哀想に……)


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