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紅蓮の虹・9 

「覚えていたのか・・・?」

真っ直ぐに俺を見つめる黒い瞳がきらめいた。

どこにいても、いつも何かが足りない気がしていたのはこれのせいだったのか・・・?

自分の内に巣食うもどかしさが、形になったような気がした。

これまで何度かうなされた夢が、やけにリアルに迫ってきたのは一度に色々なことが起こりすぎたせいだ・・・

「水をくれよ。」

赤い硝子の水差しには、気泡が入っていた。

気付けの水を入れた、コップを持つ手が意思に関係なく震える・・・

夢と現実がまだ上手く切り離せないでいた。

「飲ませてやろう、わたしの虹・・・」

「いい・・・」

ガキじゃあるまいし、と続けようとしたが目の前が暗転した。

俺は、もう一度意識を失った。




やっと落ち着いて、俺は今風呂にいる。

一人きりで、腑に落ちない今日のできごとを振り返ってみた。

いきなり施設で暮らす俺の下に、父親の使いと名乗る爺さんがあらわれた。

これまで何度も夢に見たあやふやな映像が、連れて来られた屋敷で、古い旗を見てから突然リアルな映像になった。

しかもものすごく、古い時代らしかった。

鉄砲が、歴史の教科書で見た事のある、火縄のついたものだったのだ。

何故だ?

何がどうなってるんだ・・?

ぬるい湯の中で、俺は長い時間考えていた。

どう見ても、それほど年が離れているとは思えない父親と名乗る男。

あいつが、関わっているのは確かなようだ。

浅い考えをめぐらせても、答えなんて出ない。

「やめた!」

わからなければ、聞くまでだ。

バスルームの、戸が少し開いた。

「大丈夫でございますか?」

「わっ!」

暇さえあれば、俺にまといつこうとする自称父親が入ってきたのかと思った・・・

と言うか、俺、まだあいつの名前さえ聞いてないぞ。

急な出発に、施設長はこれから向かう父親の名すら俺に告げなかったのだ。


物事、順序って物があるだろう・・・

とりあえず、はじめましてから、やり直しだな。



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