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露草の記・参(草陰の露)2 

藩主が買って参れと義弟に命じた於義丸と言う少年は、実は伊賀の里出身の「忍」である。

幼い時に、天正伊賀の乱に巻き込まれ、奇跡的に助かった命だった。
織田家の家臣、蒲生に拾われた後、忍びの修練と研鑚を積み、徳川の懐刀、本多に飼われることになった。多くの藩を取り潰す陽忍として暗躍し、双馬藩を取り潰す役目を持って、内から瓦解すべく忍び込んだ。

於義丸の忍びとしての資質は、織田家によって壊滅状態にされた伊賀の長の家系に生まれたものである。親譲りの類いまれな美貌と才を持って、今度も簡単に仕事をやってのけるはずだった。

隙間風の吹くような、寂しい天涯孤独の心中に何が起きたか、推し量るすべはない。だが、屠るはずの嫡男に心を許し、寄り添った「草」は任務を忘れ、切り裂くはずの相手の代わりに自らが深手を負った。
忍び「露草」は、こうして味方と主家を裏切り、抜け忍の汚名を着て、一生を日陰者として追われる身に落ちた。
抜け忍が再び自由を勝ち得るには、雇い主である本多と一族の長(やしない親)、双方の許しを請わなければならなかった。
武家には武家のしきたりがあるように、忍びには忍びの厳しい掟が有り、追われる「草」の命は、風に舞う一片の花弁よりも軽い。
任務を忘れた忍びを生かすことがどれほど難しいか、藩主も兼良も知っていた。

抜け忍は地の果てまでも追い詰められて、その末路は、野に行けば草生(む)すかばね(死体)になり、海に行けば水生すかばねになるものと決まっていた。裏切りの対価は身をもって償う事、それは武家も忍びもかわりがない。
一命をなげうった草を、助けたいと思った。

*****

本多との対面は、存外簡単に許された。
控える兼良と秀幸に、どんと着座した本多が問う。

「双馬殿には、今だお身体が本復せぬようで、お見舞い申し上げる。さて……。先日「露丸」の形見分けを頂戴したはずだが、兼良殿の本日の用向きは、先日離縁した於喜代の事かな?」

本多が双馬藩に世話した北の方は、元々本多の側室で、腹に子を宿したまま嫁してきた。
生まれ月が合わないのに双馬藩主が気付き、離縁したことになっていた。本多はそのことに文句を付けに来たのだろうと踏んでいた。

「まさか、わしがお譲りした側室の腹に子がいたとはのう。知らぬこととはいえ、すまなかった。この通り、詫びを言う。」

殊勝に頭を下げるところは、中々の狸である。

「なんの。それらは過ぎたことでございます。義兄は此度のことで、一層、本多さまとお近づきになれたと喜んでおりますし、むしろ、縁戚になれなかったのが残念だと申しておりました。」

「ほう……。安名殿が。」

本多が非を認めているのが、付け入る隙となるはずだった。

「今日まかり越しましたのは、先ほど名前の出ました「露丸」なる忍びの事でござる。」

「忍び……?たかが草の一人や二人、遠慮なく兼良殿の天下無双の朱槍の錆にするがよろしかろう。当方は双馬藩で起きた騒動には関わりないゆえ、捕らえた者などお好きにするがよいと思うが……?」

「露丸」を相馬藩に送り込んだと、認めるつもりは無いようだった。

「いやいや、捕らえた忍びの話ではござらぬが、尋ねたい儀がござる。本多さまの存知よりの忍びの頭領に、露丸なる忍びを見知ったものはおりませぬか?」

「さて……。忍びの身内に会うて、何とする所存じゃな。」

「実はその者に、これへ連れて参った甥の命を救って貰うたゆえ、香典を持参いたしました。」

「香典……?」

ぴくりと、興味を持った本多の顔が動いたのを兼良は見逃さなかった。




 ( -ω-)y─┛~~~~本多「露丸……?さあ、だれの事?」

( *`ω´) 兼良「狸め~。」

( ゚д゚ ) ジーッ 秀幸「ばかしあいだ~」

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