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露草の記(弐)12【最終話】 

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時代は移り、残酷な天下人の命は腹心の裏切りで潰えた。
織田が滅び、秀吉の天下となり、やがて徳川が牙をむき反旗を翻す。
蒲生も彼岸の人となった。

徳川の懐刀として仕える本多が、伊賀の忘れ形見を雇い入れることを望み、儚い露草の名を露丸と変え傍に置いた。
自在に顔を変え年齢や性別すらも偽って、仕込んだ養父も驚く変化(へんげ)の技は、本多が抱えた各地の忍びも舌を巻くほどのものだった。
露草は、後にその手口から「郭公」とあだ名される、手練れの忍者になっていた。

「露丸。褒美をやろう。望むならば、一国なりともくれてやるぞ。」

「本多さま。つゆの欲しいものは、変わりませぬよ。」

命一つに、報酬は金平糖一握り。
本多は懐の紙包みをほおった。

容易く人を垂らす露丸の氷の美貌は、仲間内で敬意を込めて、「傾城」けいせい(国を傾けること)と呼ばれていた。顔色も変えず敵中に入り込み、内側から瓦解した。
一握りの甘い砂糖菓子と引き換えに、露丸は躊躇なく身体を汚し、惜しげもなく命を削った。
何ものにも執着しない無情の露丸の刃に、無垢な命が幾つも散った。
人を殺めるたびに、心の内で何かが軋む音がしたが、やがていつかむせ返る血の臭いにも馴れた。
脆い感情に蓋をして、クナイを振るう。修羅を行くこの世の鬼の姿は美しく輝くばかりだった。
いつかこの先、自分があれほど慕った義兄の命すら奪うことになると、今の露丸は知らない。

*****

艶然と相手が蕩ける様を眺め、おずおずと口を吸った相手の喉を、流れるように懐剣を閃かし掻き切った。
仕留めた相手の意識があるうちに、ひらりと、素肌に薄絹をまとっただけの姿で、血を浴びて美しく微笑む露丸は、天守から堀へと白鷺のように滑空する。
決して伸ばされた手に、捕まることはなかった。

「これが次の……?」

本多に渡された獲物の人相書きを見て、露丸はふっと綻び艶やかに笑った。

「いつものように喉笛を掻き切って、この若さまに成り代わればよろしいのですね。」

「左様。できるか?」

「雑作もない。」

次々舞い込む容易い仕事に、笑いがこみ上げる。

「お可愛らしい相馬藩嫡男、安名秀佳さま……。」

「つゆと一緒に、遊びましょうねぇ。」

この先、儚い「草」が命を賭して守る、かけがえのない主君に出会う日は近い。




              露草の記(弐)―完―





(*ノ▽ノ)キャ~ッ 露草「わたしの過去話でした~。」

(ノд-。) 秀佳「おギギ……苦労したのだな……。」

*****

第弐章、終了しました。
……エチ場面の一つもなく……(´・ω・`) 無理だった~
歴史カテゴリーにお引越しする事も考えましたが、このまま続けようと思います。
第参章もよろしくお願いします。

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