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露草の記(弐)9 

玄太には陽忍が何をするか、分かりすぎるほど分かっていた。
鍛練を積んだ忍びと言えども、声も変わらぬ幼い身で、色をしかけ肌を寄せるのは精神にも肉体にも大変な苦痛を伴う。
きつく決心はしていても、蹂躙されて後、心が壊れるものもいる。

男根を受けるだけの、売女のようになってしまい、「草」に立ち返れないものも居た。男なしではいられなくなった、陽忍のなれの果てが物狂いとなり、閉じ込められた、「溜まり」の格子から男を誘って手招きするのを見ると怖気が走る。
ひげ面に粉白粉をはたき、紅を引いて幽鬼のような姿になってなお、好いた男の面影を求めるさまは、言葉では例えようのないほど哀れだった。

過酷な修行に身をよじって泣く、陽忍達を長の傍らで玄太は多く見てきた。
彼らの多くが、長の手で選ばれた姿の良い者達だった。
密命ひとつで、彼らはどこへでも飛び、相手の望むままに姿を変えた。
そして玄太はその者たちがしくじった時、さしずめ地獄の牛頭、馬頭のように、冷淡に顔色一つ変えず首を刎ねてきた。

必死の命乞いに、耳を傾けたことなど無い。
一つの失敗が、一族の存亡に関わるからだ。
大事の前に、小事はことごとく潰さねばならないと疑いを持つことなく生きてきた。

露草と共に、屋敷から逃げることも考えた。
だが露草を連れ出して、二人そろって抜け忍になってしまえば、地の果てまで追い詰められて切り刻まれるとわかっていた。
長の血縁も関係ない。一族の平穏をかき乱すものは、容赦なく切り捨てる。それが玄太の知る非情な掟だった。

これまで気にもしなかったが、露草を陽忍にさせると聞き、玄太の心は乱れた。
露草が任務に失敗したときのことを思うと、胸が痛む。露草を失ったら、平常心ではいられないだろうと自分でも思う。
だが、玄太に一族を裏切る勇気はなかった。

「……すまぬ、露。わしは、おまえを捨てる。」

「玄太にぃ……?」

このままでは、本人が望まぬ足抜けさえさせてしまいそうだった。

身を捨てて掟からも守ってやりたいと思うほど、自分のぬくもりを求めて眠る懐の弟は可愛かった。乳の匂いのする幼児のむつきを変え、背中におぶって野を駆けてきた。

このまま傍で、露草が誰かの物になるのを見ているくらいなら、いっそ何も見えなくなるほど遠くへ離れた方がまだましだと思った。





此花の世界では、女性は子を産み育てるものとして、任務に就くのはごく一部の手練れに限ります。
その代わりに、性が未分化に見える少年忍者を使うのです。

(´・ω・`) 話のきりが良いので、今日は短いのですがここで切っておきます。

本日もお読みいただきありがとうございます。
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