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露草の記(弐)6 

露草が縄抜けの訓練に入ったと聞いて、使いから戻った玄太は顔色を変えた。

「縄抜け?父者。いくらなんでも露にはまだ無理じゃ。」

見かねた玄太は、露草に余りに厳しい父に、少し手加減するわけにはいかないだろうかと、話をした。

「いきなり両肩を外されたのは、わしでもきつかった。朱音たちのように、片方ずつに慣れてからでよかろう。父者はいつも、露草には格別厳しく当たりすぎる。あれでは露が可哀想じゃ。」

父親は、露草に甘い息子を諭した。

「露草は、朱音や玄太のような陰にはせぬ。お館さまが早く一人前の陽忍にしてくれとの仰せじゃ。大きな声では言えぬが、三河の本多さまがたっての願いじゃ。」

「……露はまだ、ほんの子供ではないか。」

「子どもでしか出来ない仕事もある。囚われた時、縄を抜けられないようでは話しにならぬ。」

「これは、親心じゃ。お前のような甘い考えでは、露草が一人前になるのが遅れるばかりじゃ。以後、口出しは無用!おまえのような甘い考えは、露草の枷にしかならぬ。」

玄太は、燃える目で父をねめつけた。
これ以上、家長である父に、逆らうことは許されなかった。

*****

奥では芋虫のように転がった露草が、息も絶えんばかりに苦悶していた。
腰を中心にして、何度も壁に強く肩をこすりつけたが、その度ごとに痛みが走る。泣き虫の露草の頬は、滂沱の涙で濡れていた。

「くっ……!もう、少し……。」

明け六つまで放置され、ようよう青息吐息の露草は助けられた。

例え訓練でも、長時間関節を外したままでいると、そのまま指の感覚が戻らなくなったり、薄く骨がはがれたり、色々と不都合なことが起きるのは知れている。
外されて短くなった腕が、肩を入れてやると、やっと丸みを帯びた元の姿に戻った。
力が入らなかった指が動いたのを見て、やっと一息ついた露草だった。

「ほう。これは……。」

それでも何とか、曲がりなりにも一方を自分で入れていたらしい。
肩を入れてくれる義父が思いがけず破顔した。

「露。初めてにしては、上出来じゃ。一方だけだが、きちんと入っておる。大したものじゃ。」

大きく肩で息をする蒼白の露草が、ほんの少し顔を上げて、褒めてもらった嬉しさに目を細めた。

*****

「痛むか、露……。頑張ったなぁ。」

覗き込んだ玄太の姿に、思わずひくっと安堵の涙がこぼれる。張りつめていた緊張の糸がふっと解れた。

「玄太にぃ。」

「そら、肩に痛み止めの膏薬を貼ってやろう。背中を向けてごらん。」

「ん……。」

指南する養父は、玄太の胸に手放しで顔を埋める露草の姿に、眉をひそめた。
誰かに向ける脆い感情を覚えては、今後の修行の妨げになる。
思慕で任務を忘れたり、おろそかにするような事があってはならない。

早々に生ぬるい情の芽を摘まねばならぬな……と、冷ややかな視線が、優しい兄の背中に注がれていた。
露草の、ただ一つの拠り所が、奪われようとしている。




(o・_・)ノ”(ノд-。) 玄太「頑張ったな。えらいぞ、露草。」

           露草「玄太にぃ……。」

玄太と露草の、別れの時が近づいてきます……(´・ω・`)
どこがBLやねん……。

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