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純情男道 9 

門倉は、姐さんと呼ぶ女将と話をしていた。何処か晴れ晴れとして、これから郷里に帰るんだと語った。

「あんたもつくづく、面倒くさい男だねぇ。全く。」

「すみません。」

「あたしが知らせてやってただろう。心配しなくても、性根は最初にあんたが育てたんだ。周二は大丈夫だよって。」

「年を取ると、自分の目で確かめなきゃ気が済まないんですよ。でも、姐さんの言うとおりでしたね。あのお稚児さん、動じませんでした。あれなら、ちゃんと周二さんの支えになりそうだ。これでもう、安心して隠居できます。」

深々と頭を下げる門倉は、先代が病没したとき後を追うつもりだったのを見越した女将に、ふざけるなと叱り付けられた経緯があり、それ以来頭が上がらない。

「先代が亡くなった時は、散々姐さんの世話になりましたね。」

「ほんとだよ。世話の焼けるじじいなんざ、金輪際いい迷惑だよ。どうせ面倒見るんなら、あたしは隼ちゃんみたいに、可愛らしいのがいいね。」

「わたしもです。」

今でこそ、こうして笑って出来る話だったが、当時は大変だった。

*****

その頃、先代は病を得て何度も入退院を繰り返していた。

懸命に看護していた門倉だったが、先代がこと切れた後、葬儀をつつがなく終えた後、行方が分からなくなった。
朦朧とした意識のまま先代を求めて彷徨い歩いた門倉は、真新しい卒塔婆の立つ代々墓の前で突っ伏していたのを発見された。
長ドスを握り締めて、思い詰めた顔の門倉を見た妾は、先代を失った門倉が何をするつもりなのか直ぐに理解した。
飛び掛かる様にして、力を込めて頬を打った。


「ばかっ!明治の御世の乃木将軍じゃあるまいし、殉死しようなんて考えるんじゃないよ。どうしても死にたいのなら、あんた一人死ぬのは勝手だが、盃返してからにしてもらうよ。」

「姐さん……。」

「木庭組とは関係の無いところで、好きにのたれ死ぬんだね。その、懐の得物も、あんたが誰かを守る為に使えってくれたんだろう?あの人の代わりに、あたしがきっぱり縁を切ってやるから、もらった物はみんな返してから、あたしの見えないところで勝手にお逝き。」

「これは……親父が、俺にくれたものです。俺のです。俺だけの……もんだっ。」

門倉は、今は形見となった先代から貰った得物を抱きしめて、慟哭した。

「門倉。あんた、ほんとの弟のように大事にしてもらってただろう?あの人が大事にしたあんたが、自分の命を粗末にしてどうするんだい。拾ってもらった恩義があるのなら、あの人に返すこと考えな。倅も孫もいるじゃないか。」

門倉はそこでやっと気が付いた。
組長がいなくなって、やりきれなさに苛(さいな)まれているのはこの人も同じだった。むしろ、喪失感は肌を合わせたこの人の方が大きいに違いない……。
哀しみに浸る暇もなく、葬儀の手配をし礼状を書き、寝る間もなくやつれた内縁の妻は、気丈に振るまっていたが、三代目とは何の縁もない。戸籍に護られていない内縁の立場は、縁戚にほうり出されても、何も言えない立場だった。

「姐さん。すみません……っ、俺が間違ってました。親父から受け取ったもん、俺が死んだら渡す相手がいなくなってしまいます。これからは、俺が組長を守ります。そうさせてください。木庭組の……先代に頂いたもの、組長と小さな坊ちゃんに返します。」

「門倉……。ありがと……よ。」

*****

それから門倉は、まだ若い三代目の片腕となり、いつか木庭組に無くてはならない男になった。
まるで、周二の祖父のようにたくましい男に、周二もよく懐いた。
そして、平和な暮らしを引き裂いた一発の銃弾……。後は、良く知る話だ。

四角い部屋に収監され、門倉の孤独な長い時が流れた。




 ( -ω-)y─┛~~~~姐さん:「まったくもって、男ってのはしようもないねぇ。」

(〃ー〃) 門倉:「面目ないっす……。」


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