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純情男道 7 

隼はどこまでも健気に、顔をこわばらせる周二に向かって、微笑んで見せた。

ぞわりと這い上がって来ようとする恐ろしい黒い影に怯えながらも、周二を守ろうとしていた。内に潜む昏(くら)いものに捕まってしまえば、隼は自分の白い部屋に逃げ込むしかなくなると分かっていた。
誰の声も届かない、音の無い温かい白い部屋の壁だけを見つめて、幼い日、長いこと隼は精神の均衡を失っていた。傍目にはぽっかりと何も映さない瞳を見開いて、息はしていたが感情をなくし、殆ど生きながらに死んでいた。パパ沢木が、毎日必死で呼びかけ生還させた。
周二も、それを知っていた。
どうか、呑まれないでくれと祈るような思いで、褥に転がる思い人を見つめていた。

骨張った門倉の指は、思いがけず優しかった。薄く汗をかいて冷たくなった肌を、根気よく温めているようにさえ見えた。

「お稚児さん。力、抜きな……。ちっぽけだがいっちょまえにもう、包茎(かわかむり)じゃないんだな。これ、自分で剥いたのか?」

「き……木本さんに……。」

「木本に大人にしてもらったのか。ははっ……。」

楽しげに笑った門倉は、二本の指でもて遊ぶように、ゆらゆらと反応の無い若い茎をなぶった。勃ち上がる気配さえ見せない隼のぴんくのぞうさんが、意思を持って頭をもたげるのを拒んでいるかのようだ。
周二の見つめる前で、隼は祭壇に捧げられる生贄にようだった。視線だけをまっすぐに周二に向け、台の上で引き裂かれるために、子羊は自ら強張った足を開いてゆく。
歯を食いしばっていないと、今にも手を伸ばし、「周二くん、助けて。」と名前を呼びそうになる。
周二以外の手が、肌を這うのを、全身が総毛立って拒んでいた。

素肌にシャツを掛けたままの門倉の背中越しに、周二と隼は互いを見つめ合っていた。いつかゆっくりとにじり寄って、周二は隼の手を握り締めた。恐怖に汗ばんだ小さな手を掴むと、力を込めた隼のか細い指先が、必死に周二の甲に爪を立てた。
血が出るほど唇をかみしめた周二と、まだ低い声にさえなり切っていない隼が、指を絡めているのを門倉はどこか優しい顔をしてみていた。

門倉は指を濡らすと、隼の内腿を押しあけた。
最奥に手を伸ばしそっと絞りをなぞったら、隼は身を固くして強張った。太腿の筋肉が震え、慎ましい隼の最奥は頑なに、異物の侵入を固く拒んでいた。
周二も実は、隼のそこをまともに見たことはない。正常な若い男として、たまらなく下半身が疼き切ない日もあったが、これまで周二は決して無理強いはしなかった。脳裡に裸体を浮かべて妄想しながら、周二なりに、本気で隼を大切にしてきた。
その大切な思い人が、自分の為に他人の手で冒されようとしている。

門倉は、隼を横抱きに抱えると、ぷつりと指を侵入させたまま、きつい絞りに執着していた。
固く閉じた場所に焦れて隼を転がし、ふっと息を吹きかけたら、とうとう噛み締めた唇から捨てられた子猫のような泣き声が漏れた。

「にゃぅ……っ……」

「ふっ……にゃ……」

固く閉じた隼の目蓋に、堪えた涙がついに滲んだのを周二は見た。

*****

一秒を何時間にも感じる。
隼を泣かせるために、一緒に居るんじゃない。恥ずかしげに頬を染めて、たどたどしく名前を呼ばれるのが好きだった。泣かせる奴を許せなかった。
誰よりも愛おしくて守ってやりたくて、誰にも渡したくなくて、ありえない嘘をつくほど隼が好きだった。

「くっそぉーー!!」

周二は吠えた。

「隼っ!もういいっ!」

虚ろに焦点がずれかけていた隼の視線が、しばらく瞬いた後、やっと周二を捉えた。

「周……じくん……?」

「な、泣いちゃだめ。ぼくは、平気だから……。」

そう言いながら、透明な滴が転がった。

「一番大事な奴も守れないで、何が面子だ、くそったれ。待ってろ、門倉っ。片は自分でつける。」

奥の部屋を飛び出してゆく周二に、「木本っ!止めろ!」と門倉が声を掛けた。
周二が何をするかは、隼以外簡単に想像がついた。

周二は一目散に調理場に行くと、「出刃貸せっ!」と叫んだ。余りの剣幕に、板場は騒然となる。周二は出刃包丁を探して板前を押しのけ、がらがらと辺り構わずひっくり返して回った。

「周二坊ちゃん!」

「うるせぇっ!エンコ(断指)すんだよ。放せーーーーっ!」

木本は実践慣れしていた。手刀でとんと出刃を落とすと、そのままかかってきた周二の勢いを利用して軽く一回転させた。

「くっそ!何で……。」

「隙だらけです、周二坊ちゃん。沢木の坊ちゃんの方が腹座ってるじゃないですか。」

「……どういうことだよ。」

「お忘れですか?門倉は、木本の前に周二さんの守り役だった男ですよ。みんな、お見通しです。」

周二には今一つ、話が見えなかった。




(´・ω・`) 隼:「周二くん……暴れちゃだめだよ。」

ヾ(。`Д´。)ノ周二:「くそぉ~~~~!!」



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