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青い小さな人魚 (虹色真珠) 1 

世界中の珍しい物を集めている王さまがいた。
欲しいものは他人の持ち物だろうがおかまいなし、すべて力ずくで手に入れるような、欲の深い残酷な王さまだった。
王さまの手に入らない物はない。
例えば、龍のひげを持つ美青年、猫の足音であるく少年、流れ星の欠片、虹で編んだショール、東の果ての黒髪の美童など。ありとあらゆる策を弄して手に入れたそれらは、王さまの宝物倉の中に大切にしまわれていた。
時折り、王宮の深い場所ですすり泣く声が聞こえたが、誰も覗きにいったりはしなかった。

ある日、東の大きな国で争いが起こり、戦に負けた国の多くの珍しいものが王さまのところへ流れてきた。
負けた国のお城の奥にしまわれていた、多くの財宝、外国の美術品、調度品が、商人たちの手によって運ばれてくる。
王さまは、眼前に並べられた、あらゆる珍しいものの吟味に忙しかった。

「時間が勿体ない。次々、休まずに運び込め。」

王さまの御前に、珍しいものを持って並ぶ、従者の長い行列が出来ていた。
王さまは、白い象の曳く大きな山車に乗せられて、巨大な水槽が運ばれてきたのに目をとめた。玉座から眺めていた王さまは、驚きのあまり近くに寄り水槽へと思わず歩を進めた。

東の国から奴隷商人が連れて来たものは、一匹の青い人魚だった。
人魚というのは話には聞いたことがあっても、王さまの国では誰も見たことの無い、とても珍しい生き物だった。小さな青い人魚は、戦に敗れた大国の王さまの持ち物で、王さまが自害した後、王の側近が逃げ延びる際に盗んで連れだしたらしかった。首筋に魚のように、水の中で息をする鰓(えら)があり、「水の中でも陸上でも呼吸はできるのです。」と、奴隷商人が説明した。

「ただし、半身の鱗は水気が無いと干からびて死んでしまうので、ご注意ください。」

「さようか……。」

水槽に近付いて、王さまはうっとりと青い人魚を見た。

小さな波がいくつも重なったような、青く透明な鱗に覆われた下肢以外は、滑らかな人間と同じ肌を持ち、豊かな銀色の髪を水中にたゆたわせていた。

「いかがですか?王さま。この美しい生き物を持っているものは、世界中探してもどこにもいません。」

王さまが水槽に手を当てると、人魚はそっと同じように手をかざし、物言いたげな口からこぽりと泡を吐いた。人魚は、せつなげに水槽越しに王さまの手に頬を寄せると、じっとしていた。
王さまは法外な金額を吹っかけた奴隷商人の求めるまま、巨大な水槽と同じ重さの金塊を山車に乗せた。王さまは、どうしてもこの人魚を手元に置きたいと思った。

王さまが手に入れた珍しい青い人魚は、宝物倉に入れられることなく、いつでも自由に眺められるように王さまの居室に置かれた。王さまの広い浴室が、そのまま人魚の住処となった。
奴隷商人は、声を潛め、「恐れながら…」と、王さまに耳打ちした。

「いいですか?王さま。決してあの者を海に近附けてはなりませんよ。海鳥に姿を見せてもいけません。囚われの人魚がいると、海鳥は海神に告げ口いたしますから。」

「それは、なぜだ?海風に吹かれて、海の底を懷かしむ位のことは許してやってもいいのではないか?元々、海から来た生き物なのだから……。」

「いえいえ、海の生き物は、いつもこの者を捜し回っているのです。高波が、防波堤を超えてお城の塔の真下まで上がってくるのはそのせいなのです。どういう事か、海はこの人魚を取り返そうとしています。」

王さまは小さく頼りない青い人魚を眺めた。煌めく銀鱗が微かに入ってきた夕日を弾き、まるで虹をまとっているように見える。この世のものとは思えない美しい生き物を手に入れたと思えば、王さまは所有欲が満たされて震える思いだった。

奴隷商人は、事実を何も知らなかった。
もしも知っていたなら、きっと海に向かってひれ伏して許しを乞うただろう。

王さまが大金を積み上げて手に入れた人魚は、北の深い海の底に棲む海神が、誰よりも深く愛する末王子だった。
嵐の日に海面に浮かび出て迷子になり、人間風情の手に落ちた王子の行方が分からなくなっていたのを、海の生き物総出で探していた。

海神は王子を取り戻すためなら、何でもするだろう。
王子の声を、海全体が聞き漏らすまいと聞き耳を立てていた。




新しいお話です。
BL童話、人魚姫です。(*⌒▽⌒*)♪
お読みいただければうれしいです。


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2 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

> 此花さまの不思議なおとぎ話、好きだよ~♪

おひさしぶり~ふのけいったんさま。(*⌒▽⌒*)♪
ありがとうございます~!しばらくほったらかしていた作品は、読み返すと粗だらけで、我ながら赤面です。
>
> 今回は、キラキラと波打つ鱗を纏った人魚王子様の物語なんですね。
> 楽しく読ませて頂きますねぇ!
> ワクワクo(@^◇^@)oウキウキ...byebye☆

いじめっこ此花で、最後までお楽しみください。「きゃあ~」ε=(ノ゚Д゚)ノ ←人魚
よろしくお願いします。

2012/02/27 (Mon) 21:44 | REPLY |   

けいったん  

おひさしぶりです♪<(_ _*)>

此花さまの不思議なおとぎ話、好きだよ~♪

今回は、キラキラと波打つ鱗を纏った人魚王子様の物語なんですね。
楽しく読ませて頂きますねぇ!
ワクワクo(@^◇^@)oウキウキ...byebye☆

2012/02/27 (Mon) 21:33 | REPLY |   

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