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淡雪の如く 37 

是道は怖気づいた。
絵草子の鬼の絵にそっくりの兄上が、自分を手招きする。酒呑童子のように頭からぱくりと自分を食べてしまいそうで怖かった。

「い、や。いや。いやです、お兄さま。是道はお傍には参れません。どうか、お許しください。お、お人形をお返しください。」

「にんぎょう……。」

髪をふり乱した若い鬼が、是道の大切な這う子を摘み上げ頭をもいだ。

「あっ!お人形が……!」

酒天童子を退治した渡辺綱は、是道の傍にはいなかった。たった一人、恐ろしい鬼と対峙するしかない。
格子の前で凍える身体を丸くし、ふるふると頭を振る是道に引導を渡したのは、義母だった。つま先で背後から、ぽんと腰を蹴った。

「お兄様がいらっしゃいとお呼びなのに、あなたはどうしてお側に行けないの。ほら、お傍に寄って大切なお人形を返していただきなさい。」

「お母さま……。でも、でも……。」

「さあ、早く。」

格子の鍵を開け是道を押し込んだ義母と老女は、重い錠を下ろすとその場からいなくなった。

「待って!お母さま。お母さま。ここから、出して。お母さま、是道もお連れ下さい。」

「お兄さまが……怖い、お兄さまが、きゃあああーーっ!」

*****

高い悲鳴が屋敷内に響いたが、風呂炊きの下男への仕打ちを知っていた使用人たちは、正室をおそれ耳をふさぎ目をふさいだ。
皆、自分が可愛かった。
父親の県令が出かけて留守だったのも、是道の不幸だった。
義兄の乱暴をとめるものは、家中に誰もいなかった。

只ならぬ悲鳴に是道を探していた詩音が気付き、庭師の父を呼び是道を救出するまでに四半時もかかった。是道の切れ切れの悲鳴を頼りに、詩音が広い邸宅を走り回って、やっと奥座敷にたどりついたとき、是道は長く使い込んだ雑巾のように打ち捨てられ、血まみれで気を失いぐったりとしていた。

「わ……若さまーーっ!?」

衣類は乱れ、身体中に紅く無数の吸痕の痕が散り、そこかしこに咬み傷が付いていた。是道は、自由をはく奪されたまま、突然屋敷奥に押し込められた獣の、意趣返しの標的となった。

常人と迄はいかずとも、押し込められた兄は決して何もわからない異常者ではなかった。精神は幼いながらに、置かれた境遇を哀しみ、尽きない身内への思慕と行き場の無い怒りを貯めていた。寂しい獣の前へ現れた是道は、古風な美しい着物を着せられていた。それは、押し込められる前自分が着ていた見覚えのある物だった。義兄は曲解した。

「かえせーーーっ!わしのきも……のじゃ……。わしのじゃ……!」

獣は荒れ狂い、是道を貪り食った。
元服前に廃嫡され、狂人として押し込められた幼いままの兄は、何もかも着物を奪った是道のせいだと思い全てを呪った。怒りに任せてむしり取った着物に、焚き染められた伽羅に、現れた是道の白い肌に……囚われの獣の血は沸騰し猛った。
自分と取って代わった「これみち」さえ、いなくなれば元の世界に戻れると、本能が告げた。

何故、自分がこのような日も差さない奥に押し込められねばならないのか。
父も母も乳母もいない。暖かい褥も奪われた。凍てつく夜に手あぶりの火鉢さえない。
ある日突然、背中を押されこの座敷に入ってから、世界と自由が無くなった。心は幼かったが、身体は頑健な若い牡で、突き上げるどうしようもない荒ぶる衝動に夜な夜な呻いていた。
……そこへ生贄が捧げられた。

「是道さまっ!若さまーーーっ!!」

「若さまあっ!……あぁ~ん、若さまがーーっ!お父さん、若さまが死んでしまう―……。食べられてしまう!若さまぁ……!」

「詩音!落ち着きなさい。」

父はぱんと息子の頬を一つ張り、指示を与えた。

「いいかい。若さまは、お父さんがきっと助けるから、おまえはすぐにお医師を呼んでおいで。若さまのお世話係に、お布団を敷いてお湯を沸かせて下さいと言いなさい。いいね。」

「お医師、お湯……。」

詩音が必死にお医師を求める間に、詩音の父は老女に恐ろしい剣幕で詰め寄り、座敷牢の鍵を得た。




ヾ(。`Д´。)ノ 是道:「こら~!此花!ぼけ~、かす~!死ぬわ~!」

。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。詩音:「え~ん。若さまが~~!」

|゚∀゚) 此花:「えっと。是道くんは、最優秀主演男優賞でっす。」

(〃ー〃) 是道:「え~……?そ、そう?」

( *`ω´) 詩音:「若さま。騙されてはなりませぬ。」

(`・ω・´)此花:「詩音。最優秀助演男優賞!」

(ノ´▽`)ノヽ(´▽`ヽ) 是道 詩音:「きゃっきゃっ……うふふ~」

(*´・ω・)(・ω・`*) 良太郎 市太郎:「これだから世間知らずは……」「ね~。」


お読みいただきありがとうございます。 
何とか、後、数話の所まで来ました。  此花咲耶



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4 Comments

此花咲耶  

tukiyo さま

> 詩音ばっかりやさしくしてぇ~良太郎のバカバカ!!
>
(´・ω・`) ですよね~。どうやら良太郎は儚げな詩音に流されてしまったみたいです。これからどうやって、是道くんが救いを手に入れるかが問題でっす。

> 無理にえっちシーンを入れ込むことはないと思いまーす。
> 此花さんが書きたいものを書いて、その流れの中でそういうシーンが入れば入れれば。
> 精神的なBLも絶対にあると思うし~~。

(`・ω・´)おお~~。プラトニックラブ!
なんか目から鱗のご意見、ありがとうございます。実はうだうだ言いながらも、今回は書きたいもがかなり入っている気がします。
どんなお話でも、そこに何らかの救いを見いだせれば此花はバドエンではないと思っているので、着地点で救いを探しています。
(ノд-。)……でも、難しいんだ、これが~。フランダースの犬的なハピエンかなぁ……

コメントありがとうございました。
(*⌒▽⌒*)♪がんばります!

2011/12/11 (Sun) 18:19 | REPLY |   

tukiyo  

ああああ

詩音ばっかりやさしくしてぇ~良太郎のバカバカ!!

無理にえっちシーンを入れ込むことはないと思いまーす。
此花さんが書きたいものを書いて、その流れの中でそういうシーンが入れば入れれば。
精神的なBLも絶対にあると思うし~~。

2011/12/11 (Sun) 09:37 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

鍵付きコメント様

(*⌒▽⌒*)♪お久しぶり~ふでっす。←こればっかり。

此花の所にお越しくださる方は、そっと読んでゆかれる方が多いような気がします。
もしくはコメント入れにくい作品かも……(´・ω・`)
時代物を書いている時は、もれなく閲覧数がじわじわ落ちてゆくので、いろいろ煮詰まったりします。
此花は、とても小心者なので、すぐに凹みます。今も、先が見えてきたのでやっと浮上しつつありますが、エチが書けないジレンマに自己嫌悪でした。BLなのに、そこに行きつかないのはきついです……。
いっそ、時代物ブログに帰ったほうが良いかな~とか、思ったりもしていました。
やっぱり、現代もののほうがとっつきやすいよね~とか。

でも、今は自分の好きなものを書けばいいんだと思うことにしました。
もちろん読み手さまのご意見はとてもありがたいです。時代物も好きですよなんて、うれしいご意見に元気をもらって舞い上がります。

せっかく、書くのですから楽しく書きたいです。がんばってくださいね。此花も自分なりにがんばります。
杏樹と蘇芳、お好きですか?ありがとうございます。作者が愛すると、登場人物はぼろぞうきんになってしまいます。今回もやはりぼろぞうきんになりました。
いじめっ子です。(`・ω・´)←自覚~
コメントありがとうございました。(*⌒▽⌒*)♪

2011/12/11 (Sun) 00:20 | REPLY |   

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2011/12/10 (Sat) 23:40 | REPLY |   

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