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一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 27 

夜がほのぼのと明け始めた朝ぼらけ、おれ達は目を覚ました。
どちらが言い出したのでもなく、コートを着こんでそっと庭に出た。庭の片隅にある小さな若宮のようなものは、何かを慰霊するため建立されたものだろう。
三崎は長い間碑に向かい、黙って手を合わせていた。
若宮の背後には、朽ちかけた道標のようなものがあった。

「…道標だ。雪男の見せた最後のあれじゃないのか…?」

なぁ、三崎、と隣に座り声を掛けたら、三崎はふいにぱたりと雪の中につんのめって倒れた。

「三崎?おい、どうしたんだ。」

気を失った白い顔に、細かな雪がひらひらと舞い降りた。おれは自分のまいたマフラーを風邪をひかぬように三崎に巻いてやっておぶった。

「久しいの。」

聞き覚えのある声に、おれは笑顔を向けた。

「…雪…六花。いつも傍にいただろう?何となく、分かっていたよ。あれから、ずっとおれは分かっていたよ。」

それには何も答えず、六花は儚くも美しい笑みを浮かべていた。透き通った氷の微笑に、胸がつきんと痛む。

「この子供は、我の生まれ変わりだったのだな。ここにきてようやく合点がいった。その方の中には源七郎さまの魂が転生したのは知っておったが、この子供に我の欠けた魂が入っているとは思いもよらなかった。」

胸の中に気泡が生まれ、ゆらゆらと水面に浮かび競り上がってくるような気がする。おれの中に封じ込められた古い記憶を持つ魂の欠片が、引きあって動き始めたのだろうか。

「彷徨っていた我は、ずっと源七郎さまを求めて居た。生まれ変わることも諦めて、ずっと探し求めていた念兄が、遠く離れた江戸表に居ると聞き、その方の元に飛んだのだ。魂は千里を走り、思いは風に乗った。」

「六花は、…雪男は残された思いが結晶したものだったのか…?」

晴れ晴れとした顔で六花は、白い手で三崎を抱き下ろした。降り始めた雪は、すぐ先も見えないほど酷くなり物を言うたび喉に粉雪が張り付く始末だ。六花は三崎を抱えると、万感の思いを込めておれに手を伸ばした。

「源七郎さま!」

胸の中の気泡が呼ばれて、ぱちんと音を立て弾けた。
おれの意思を無視しておれの口が、最愛の年弟の名を呼ぶ。

「六花!」

「六花……。捜したぞ。里山も城内も魂となってくまなく求めたが、姿が見えなかった。だから、あれからそなたはまだ生きていると思い、捜すのを諦めたのだ。」

「源七郎さまのいない現世(うつしよ)に、六花の居場所はありません。六花は雪になったのです。源七郎さまの亡骸を覆い、ずっとお傍にいるために神仙女王にお縋りしました。」

伸ばした指先が触れ絡んだ。

「いつか、この場所で巡り合えるよう願を掛けました。我の誠が神仏に届いたら、もう一度源七郎さまのお傍に参れますようにと……。」

気を失った三崎の中にいる六花と、おれの中に転生していた源七郎はひしと抱き合い、互いの肌に触れた。

「愛おしい六花。わたしは何度も、転生した。今度こそと思っても、お前に会えずいつか深い場所で眠ることに慣れてしまった。」

「源七郎さま。今こそお傍に……。」

「六花。わたしが屍となり土に還っても直、傍にいたのだな。」

「はい、ずっとお傍に。源七郎さまは、我の…現世で生きていた頃の全てでした。」

「やっと、思いが通じたな。」

互いに確かめ合うように、二人はひたすら抱きしめ合っていた。おれの中から抜け出るように現れた源七郎は、雪の精となってずっと自分を探し求めていた思い人を、今度こそ離すまいと腕に力を込めた。

「今こそ、共に参ろう。」

どこへ……?

起きろ!三崎~~~!!





(`・ω・´)大方の予想通りの展開かと思います。
次回、最終回です。たぶん~

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4 Comments

此花咲耶  

Rinkさま

> やっと巡り会えた二人、どこへ行かれるのでしょう?
> もう最後の一回なのかもしれないのですね。
> 最後まで応援しています。

お返事遅くなりました。
本編はやっと終わりました、お読みいただき本当にありがとうございました。

2011/09/17 (Sat) 01:55 | REPLY |   

Rink  

Rink

やっと巡り会えた二人、どこへ行かれるのでしょう?
もう最後の一回なのかもしれないのですね。
最後まで応援しています。

2011/09/15 (Thu) 11:06 | REPLY |   

此花咲耶  

tukiyo さま

> 六花が「源七郎さま!」と呼んだ時、ウルっとしちゃったー。

輪廻転生とか信じてしまいます。前世で幸せになれなかったなら、今世で幸せになろうね~という感じです。
ウルっとしてくださった ̄(*⌒▽⌒*)♪うれしいです。もう一息、がんばります!

> 本来なら子供の六花に子供呼ばわりされる三崎が可愛いぞ。

上手く書けてるかどうか不安ですが、凛々しい部分を抜いて魂が転生してしまったつもりです。
もう一息、頑張ります!(`・ω・´)
コメントありがとうございました。(*⌒▽⌒*)♪

2011/09/14 (Wed) 23:54 | REPLY |   

tukiyo  

六花が「源七郎さま!」と呼んだ時、ウルっとしちゃったー。
本来なら子供の六花に子供呼ばわりされる三崎が可愛いぞ。

2011/09/14 (Wed) 23:19 | EDIT | REPLY |   

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