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一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 12 

何となく、雪男にごまかされた気がする。大人なんだか子供なんだか、今一つわからない。

「いつか…別れの時に、そなたに告げようと思って居た。おそらく、この一両日中のことになるだろうと思う。そなたの名も聞きたい。」

「そうか、出会った途端、もう別れ話だな。」

雪男は、くすっと綻ぶように笑った。
いくつか、不思議なことが有った。

「あのさ、見せてもらったちびの雪男はずいぶん幼くて、今とは年齢が違う気がするけど、何故だ?」

「今の姿は…源七郎さまが身まかった時と同じ年齢だ。満で言うなら17歳になる。我は、いつも元服後は源七郎さまのようになりたいと思っていたから、神仙女王さまが願いを聞いて下すったのだろう。これは、生きていたなら成長したはずの17歳の我の姿だと思う。最初見たときは、自分でも少し不思議だった。ずいぶん昔になるが…。」

…確かに老けて見えるぞ、雪男。
少なくとも17歳には見えない。二十歳くらいかなと思って居たけれど、話をしても下手すれば三崎の方が年下に見える位幼いんじゃないか。

「17歳にしては、ずいぶん大人びて見えるな。」と、我ながらうまいことを言った。

「源七郎さまも、とても大人びてご立派な方でした。思慮深く胆力もあり、西洋兵器の扱いにも優れ、いずれは藩のご重役に推挙されるはずだった…。」

え…と、ご重役…たぶん、おっつけ出世しただろうってことね。
そこは昔の武家の子供は、幼くとも社会的責任を負い、早く一人前になったという事なんだろう。
何しろ今は二十歳が大人年齢だが、元服って今の少年式とか、立志式の14、15の年齢じゃなかったっけ…?…忘れたな~…。って、おれが遠い目をしてどうする。
おれは背後から、はだけた雪男を抱きしめてゆらゆらと、中心の花芯を弄っていた。見かけが17歳で中身がちびの桃太郎なのだとしても、たぶん百年以上は経っているはずだ。
いけないことをしているんじゃないよな?…と、一人小さくごちた。
雪男はおれに身体を預け、ぼんやりしていた。

おれの手の中で少しずつ形を変え、ふるふると頭を持ち上げはじめた雪男の芯は、切ない硬さになり露を戴いた。時折、固く身じろぐ雪男の頬を伝う涙は、透明な雪解け水のように冷たい。
春先に、ぽたぽたと軒下のつららが溶けるように、涙は止まらずおれは胸の中にすっぽりと雪男を抱いた。寂しい雪男が、消えゆく寸前おれに出会ったのに、何か意味はあるのだろうか。

「泣くほどつらいのか?溶けるのが、悲しい?」

いいえ…と雪男は頭を振った。

「それは季節ごとに繰り返されたことだから、もう慣れた。源七郎さまに…あれから、一度も会えなかった。我が人の理(ことわり)を外れてしまって、人外のものになってしまったから…。例え、源七郎さまが生まれ変ったとしても、我にはこの世界で見つける術がない。人じゃないものに、転生を望むのは本当は禁忌なのだそうだ。」

だからもう、二度とこの身では愛しい人と言葉を交わすこともできないのだと、雪男は泣いた。
可哀想な雪男、何度こうやって季節の変わり目ごとに泣いたのだろう。
何かのけじめのように、己を罰するように、偽りの抱擁に溺れてはいけないと思っているのだろうか。雪男は名前を告げなかった。

だが、雪男の中心を含んで吸い上げた時、おれの頭を掴んだ雪男は声をあげた。固く目を閉じてまぶたの裏の思い人の名を呼んだ。

「ああっ、…源七郎さまぁ…っ。」

おれは、ちびの桃太郎が雪男に成った理由を、まだ聞いていなかった。
夜が白々と明けようとしている。




(´・ω・`) ・・・うっすら。

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2 Comments

此花咲耶  

鍵付きコメント様

なんだか、 イケそうな気がする~(*⌒▽⌒*)♪

・・・と、思っていたのですがお互いにただ一人の相手ではないので、一つにはなれませんでした。
思いきりが悪い作者です。も~~~自分にぱんち~!■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ
主人公、誰かとエチしろ~ヽ(`Д´)ノ ウワァァァァァン!

コメントありがとうございました。(〃▽〃)

2011/08/29 (Mon) 13:24 | REPLY |   

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2011/08/28 (Sun) 23:53 | REPLY |   

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