FC2ブログ

一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 3 

拾った青年は、どういうわけかどこか不自然な、時代がかった言葉を使った。

「とりあえず、風呂に入ったら?君、、どうやら冷え切っているみたいだし。あの、まさかとは思うけど、さっき頭を打ったせいでおかしくなったとか…?もしかすると、まじで外国人。え~と、ニホンゴ、ワカリマスカ・・・?」

「妙なことを問う?生国は…」

「あ、いい、いい。日本語でいいなら後にしよう、風呂から上がったら冷たいビールでも飲みながら話を聞くから。」

「え~と、とりあえずさっぱりしてきなよ。」

ひんやりとした腕を掴んで、風呂場に押し込んだ。
ほっとしたのも束の間、マンション中に響き渡るような悲鳴で俺は飛び上がった。

「ぐわぁーーーーっ…――――っ…!!」

「ど、どうしたーー!!??」

声もかけずに、思わず風呂場に飛び込んだ。

「ああーーーっ!」

右手を抱え込むようにして、狹い風呂場で真っ裸の青年が呻いている。その手の先が、まるでキッチンミトン(鍋つかみ)のようになっているのを見て、思わず俺の方が意識を手放しそうになった。
俺がその後どうしたかというと、情けないんだが、動転しすぎて実の所あまり良く覚えていない。

「うわぁ~~~・・・手が・・・手がえらいことになってるーーー!!」

大慌てで台所へ走ってゆき、製氷機の氷をがらがらとナイロン袋に放り込み、とにかく冷やすことしか考えられなかった。
おれはその時、そいつが大火傷したと思ったのだ。
後から思えば風呂はむしろ温い目に設定してあったから、火傷をするはずなどなかった。
だが、手の先が溶けたようになって、俺は大昔に読んだ野口英世の伝記の中身を咄嗟に思い出した。
赤ん坊の野口英世が、囲炉裏の中に転げ込み大やけどを負って苦労した話…は、今はどうでもいい!

「大丈夫か?ちょっと診せて見ろ。病院に行かないと…。」

「…構うな。いずれ、全て溶けてこうなる。時期が来たら、痛みも感じなくなる。此度(こたび)は油断していて熱さに少し驚いただけだ。」

心配には及ばぬ。…と、青年は口の端を上げて薄く笑った。少年にも見えるような若い男は二十歳そこそこだろうか。見た目の若さとは裏腹に、やたらと落ち着き払って時代がかっている。
氷水の中に手首から先を漬けたまま、男はしばらくそうしていたが、やがてほら…と元に戻った手のひらを振って見せた。

「…溶けたはずの手が、元に戻ってる…。君は一体何者なんだ?」

おれの脳内では瞬時に、SF設定が渦を巻いていた。

「…地球外生物か?それとも侵略者か?俺を狙ったのかUMA。」

狙ったという言葉に、一瞬凍りついたような目を向け、やがて青年はゆっくりと口を開いた。

「さあ…この時代では何と言ったかな…、確か、イエティとかビッグフットというのではなかったか。後は…未確認生物?」

「イエティって…まさか…とは思うけど、それって雪男ってこと?」

とろけるような笑顔を向けて、そう呼ばれた事もあると頷いた。
俺はすぐさまパソコンに向かい、『雪男』でググった。冗談抜きで、こんなビジュアルの雪男が居るわけない。

「検索っと。人里離れた山奥に住む、全身毛むくじゃら、直立二足歩行するという特徴が挙げられる。体色については、白、茶色、灰色など諸説あり…これじゃ、いくらなんでも、違うだろ?」

真剣に、自称「雪男」は語った。

「そこに記された特徴は、至極もっともだ。この通り毛髪は長いし、体色については言わずもがなであろう?それに、どこから見ても雪女には見えぬのだから雪男と名乗るのが正しいと思うが。…よもや、おかしいのか?」

「いや、おかしくは…むしろ、そのよもやって言う単語が…。最初見たときは女だと思ったな。華奢だし…おれの田舎では、雪女のことは雪女郎とか雪姉さっていうんだ。ここに、イエティってヒグマのことだって書いてある。ヒグマよりも雪女郎って名前の方が合ってるよ。」

「女郎呼ばわりとは、無礼千万。笑止の沙汰だ。」

あ…怒ってる…。そっと、普段使わない「笑止」という言葉を打ち込んでみた。
おお~、いろいろな意味がある~…って、感心している場合じゃないよな。
傍にパソコンが有ってよかった。

俺、もう少し、ちゃんと古典やっとけばよかったかも…。






(*/д\*) 「わ・・・おまえ丸見え。タオルくらい腰に巻けよ。」

(`・ω・´)「この手では、布を巻くことあたわず~。(この手じゃ、巻けないも~ん)」

ヾ(。`Д´。)ノ「わかるように言え~~~!!」

拍手もポチもありがとうございます。
感想、コメントもお待ちしております。
ランキングに参加していますので、よろしくお願いします。   此花咲耶

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ



関連記事

4 Comments

此花咲耶  

Rink さま

> やっぱり、このはなワールドだったんですね~!

すんなり現代ものに移行するはずが、ちょっぴり怪しいです。www

> 時代がかった雪男さんとは!
> 会社の後輩さんは関係なかったのか。

会社の後輩さんは、これから出てきます。もう一波乱あることにしました・

> 続きを楽しみにしています。

Rink さんも、お引越し先でがんばってください。
コメントありがとうございました~(*⌒▽⌒*)♪

2011/08/20 (Sat) 00:47 | REPLY |   

此花咲耶  

鍵付きコメント様


(´・ω・`) ・・・お笑いだと思われている・・・?
純愛路線なのに~wwww

えっと、これからたぶん、悲しい方向に向かうかもです。
切ない愛の世界になるはず・・・←自信持とう、此花(`・ω・´)

コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/08/20 (Sat) 00:35 | REPLY |   

Rink  

あははは!現代ものだけど・・・

やっぱり、このはなワールドだったんですね~!
時代がかった雪男さんとは!
会社の後輩さんは関係なかったのか。
続きを楽しみにしています。

2011/08/19 (Fri) 22:33 | REPLY |   

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2011/08/19 (Fri) 21:52 | REPLY |   

Leave a comment