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Archive: 2018年04月  1/2

新連載のお知らせ

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明日、火曜日より新連載を始めます。前回と同じく、火、木、土曜日更新予定です。タイトルは「愛し君の頭上に花降る」です。前作、「明けない夜の向こう側」の番外編になります。番外編ではありますが、独立したお話になるように気を付けて書きました。お読みいただければ嬉しいです。【作品概要】元華族の望月祥一郎(もちづきしょういちろう)は、子供時分から自分に自信が持てなかった。親の力で何とか医師になったものの、才能...

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愛し君の頭上に花降る 1

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「望月祥一朗」は、旧華族、望月子爵家の嫡男として生まれた。良い意味だけを持つ「祥」の字に、幸せな人生を送りますようにと両親が願いを込めて付けた名前だった。だが、縁起の良い名前を持った祥一朗は、残念ながら両親にとってどうしようもない不肖の息子だった。「どうした、祥一朗。何を泣いている」「お父さま……」徒競走で転んだせいで最下位になってしまったと、祥一朗は泣きながら告げたが、父は嘘だと知っている。元々、...

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愛し君の頭上に花降る 2

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祥一朗は諦めきれなかった。「お父さまに言って、軍部に手を回してもらおうか?医専を卒業したばかりで、ぼくも君も医師としてはまだまだ未熟だ。もっと学ぶことはある」「望月君の父上が、軍部に顔が利くというのなら、そういうことは君の時にこそお願いすべきだ。ぼくは目が悪いから、乙種合格すら貰えなかったけれど、軍医になれば軍隊では少尉殿だ。二等兵ではないから、毎日殴られるようなことはないだろう」「君はそれでいい...

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愛し君の頭上に花降る 3

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終戦を迎え、祥一朗は初恋相手の住んで居た辺りに出かけ、懸命に米屋を探した。せめて彼の生死だけでも知りたかったが、辺り一面、焼け野原になり、捜し歩いても初恋相手の実家の米屋の看板すら見つけられなかった。やがて、進駐軍の手により華族制度が瓦解した。それまでは子爵として国から多大な恩恵を受けていた望月家も、これからは自らの才覚で生きてゆかねばならない。周囲には環境の変化に対応できず、労働の対価として収入...

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愛し君の頭上に花降る 4

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その夜も、袖を引いてきた若い男娼と、窓のない四畳半の連れ込み宿にしけこんだ。祥一朗は、体液の染み込んだせんべい布団に転がった固い体に、セクスを打ち付けて一時の快楽を得た。自分の劣情が発散できれば、相手の気持ちなどどうでもよかった。思いやる言葉さえ口にすることはない。「あ……あ、あぁ……」切ない喘ぎが、細く部屋に零れた。「おそろしく下手な口技だな」「ご……めんなさい……」拙い舌技に半ば呆れながら、身体の下に...

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愛し君の頭上に花降る 5

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その夜から、祥一郎はぷつりと男漁りをやめた。甥の郁人の体調が急激に悪化して、目が離せない危機的状態に陥ったことも一因だった。さすがに郁人が心配で、過去のカルテを引っ張り出したりして、祥一朗なりにできることを懸命に探った。気に入らない浮浪児兄弟の片割れに頭を下げて、教えを請い、最新治療の勉強もした。透析治療に生命を救われた郁人の様子に、ほっと安堵しながら、祥一朗は自分の持つ医術は稚拙で古く、郁人の役...

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愛し君の頭上に花降る 6

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数日後、笹崎に連れられて目の前に立った細身の青年は、予想通り申し分なく上品な佇まいだった。荒れた生活にいささかやつれたとはいえ、立ち居振る舞いに卑屈なところは感じられず、おそらく美意識の高い望月の嗜好に合うだろうと、最上家令は確信した。「お探ししましたよ、結城さん」「……ぼくに何用ですか……?」視線が不安げに彷徨った。「簡単な仕事です。これからあなたには旧華族の集まる夜会に出向いていただいて、望月祥一...

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愛し君の頭上に花降る 7

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目を伏せた青年を見つめる祥一朗の耳元に、背後から近付いてきた笹崎が小声で告げた。「望月さま。この方は元結城男爵さまのご嫡男です。名を結城秋星さまとおっしゃいます」「男爵……そうか。それで合点がいった。名前も優美なのだな。どんな字を書くの?」「……季節の秋に夜空の星と」「似合いの名だ。結城君、この先何か予定はある?」「いいえ……」「軽い食事をさせるカフェが近くにあるんだ。これからどう?」内心の喜色を浮かべ...

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愛し君の頭上に花降る 8

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奇妙なことに、秋星の手順は祥一朗がこれまで肌を重ねて来た相手を思い出させた。脳裏にほんの少しそんな考えがよぎったが、秋星の高貴な出自を思い出して、馬鹿げた考えを打ち消した。余計な思案を巡らせた途端、熱く巻き付く舌に強く茎を絡めとられて、祥一朗は呻いた。敏感な亀頭を、乳を舐める子猫のように、柔らかな舌で丁寧になぞられるたび、甘い快感がぞくぞくと背筋を走り抜ける。滑るような手管に、思わず腕を伸ばして秋...

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愛し君の頭上に花降る 9

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祥一朗は秋星を抱き起すと、優しく懐に抱いた。「……秋星、君は誤解しているよ。見えなくともぼくの心は歪で、傷だらけだ。誰かに好かれたいとずっと思い続けてきたが、誰も手に入れられなかった。ぼくが愛するものは、いつも手に入らない。これまで、思い通りにならない人生を送って来たよ。だから……もし君が、ぼくを欲しいと思ってくれたなら、とても嬉しいよ……」「望月先生……」微かにくすんだ薔薇色の尖りに、祥一朗は滑らせた唇...

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