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Archive: 2016年11月  1/3

波濤を越えて 28

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美術館の中は、相変わらず閑散としていた。人が来はじめるのは、もう少ししてからですと正樹が教えた。昨日から楽しみにしていた日本工芸賞の作品を、フリッツは一つ一つ丁寧にゆっくり見て回った。「わからないことがあったら質問してください。できる範囲で答えます」「ありがとう。……これは何という焼き物?」「それは砥部焼というんです。日常に使われる陶器が多いようです」厚めの白磁に流麗な筆致が躍る。呉須を使って描いた...

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波濤を越えて 29

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夕刻、いつもの居酒屋に呼び出された田神は、グラスを重ねる正樹を心配していた。こんな風に飲む正樹を見たのは初めてだった。「で?そのままその外国人は帰ってこなかったの?」「そうだよ」「柳瀨さんから助けてもらったとはいえ、正樹は行きずりの男と寝たってこと?」「だから、そうだって言ってるじゃないか」珍しく正樹は、いらついていた。「連絡先は?」「聞いてない」「メアドは?」「知らない」「はぁ……?」田神は呆れた...

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波濤を越えて 30

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食事の途中で帰った先日のことを、田神は持ち出してきた。「今日は俺がおごるから」「うん」「そこまで送るよ。涙は止まった?」「田神……あの、突然呼び出してごめんね。……彼女と約束とかしてなかった?」「気にするな。茉希は正樹のファンだから、正樹が泣きべかいて俺を呼んでるって言ったら、早く行ってあげてってさ」「……何かそれって、優先順位が変……」「いいんだよ。正樹は、昔っから手のかかる弟みたいなもんだろ」「否定は...

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波濤を越えて 31

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自分は正樹の幼馴染で一番の親友ですと、田神はもう一度自己紹介をした。フリッツは満面の笑顔で、握手を求めてきた。「よろしくお願いします」「フリッツ、あのね。田神は、とても頼りがいがあるんだ。同じ年なんだけど、まるで父親みたいにしっかりしてるんだよ」「そうじゃなくて。正樹といると、誰でも保護者になってしまうんだろう。一緒にいるとわかるでしょう?」「正樹を……大切にしたいと思う事?」「そうです。さっきまで...

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波濤を越えて 32

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困ると正樹は何も言わなくなってしまう。もの言いたげな揺れる瞳が、田神とフリッツを交互に見つめていた。「もういいよ」ため息交じりに田神が折れた。「正樹がそれでいいなら、俺はもう何も言わない。だけど、お互いを知るにはできるだけ時間をかけること。些細なことで卑屈にならないで、理解しようと努めること」「うん」「返事はいいんだけどなぁ……本気で向き合って、きちんと話をしろよ」「わかった」「正樹は、案外頑固だか...

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波濤を越えて 33

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BL的性愛表現があります逃げるように正樹がずり上がるのを、フリッツが捕まえて引き込んだ。「正樹、お願い……逃げないで」耳朶に甘く囁かれて、ふるっと小さく正樹が身じろいだ。夜目に白く発光する肌を抱きしめ、身を固くする正樹の下肢に、そっと指先を忍ばせる。芯を持ち始めたセクスは、紅くしこった乳首と共に緩やかに天を突き、愛撫の手を待っているようだ。「ここ感じているの?可愛い」「……みっともなくて、恥ずかしいです...

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波濤を越えて 34

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BL的性愛表現がありますフリッツは経験の少ない正樹の様子をうかがいながら、ゆっくりと無理せずに高めてゆく。手の中に握り込んだセクスは芯を持って勃ち上がり、やがて先端にこぷりと歓喜の露を浮かべた。敏感な反りをくすぐるようになぞられて、正樹は思わず声を上げてのけぞった。官能の波に呑まれるぎりぎりのところで、踏みとどまっていたのは、呑まれた後、自分がどうなってしまうのか怖かったからだ。「あっ……」「正樹、痛...

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波濤を越えて 35

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互いに幸せな日々が続くと思っていたある日、別れは唐突に訪れた。近県の美術館の所蔵品を調べて、鑑賞に出かけていたはずのフリッツが、突然正樹の美術館に現れた。出会った時と同じ、大きなデイバッグを背中に背負って。「フリッツ?どうしたんですか?」強張ったフリッツの顔に、ただ事ではないと知る。「正樹。わたしは急いで国に帰らなくてはなりません」「えっ……!」抱えていた館内案内パンフレットが、ばさばさと足元に落ち...

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本日お休みします

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記事はできているのですが、ワードの不具合と、fc2へのログインに手間取ってしまいました。何とか上げようと努力したのですが、コピーできない……ってどうゆうこと?……という感じです。なので、すみませんが本日は休載いたします。覗いてくださった方、ごめんなさい。また、明日からよろしくお願いいたします。  此花咲耶...

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波濤を越えて 36

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「いつ……」帰るの?と、言いかけて正樹が口をつぐむ。縋る言葉は、フリッツにとって重荷でしかない。元々、観光ビザで入国したフリッツが、長く滞在できないのはわかっていた。だから精いっぱい声を張った。「フリッツ。お別れ会をしましょう。田神に、都合を聞いてみます」「ありがとう、正樹。あなたに泣かれたら、どうしようかと思いました」「そんな子供じゃありませんよ。僕は頼りなく見えるかもしれませんけど、大人なんです...

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