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Archive: 2016年09月  1/3

Caféアヴェク・トワシリーズ、最終章「君と共に」始めます

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Caféアヴェク・トワシリーズ、最終章「君と共に」を、連載開始いたします。前回から余りに時間が空きすぎたので、主人公二人と簡単なあらすじをあげておきます。松本(まつもと)木庭組所属の構成員。現在、木庭組自体は時代にそぐわない893稼業からは殆ど手を引いている。経済893として、敬愛する兄分、木本の傍で水商売の勉強をしている松本だったが、新しく店舗(Café)をオープンすることとなり、店長に抜擢された。松本...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に 1

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固く閉ざされた扉の向こうは静かで、ひそとも音がしない。荒木は珈琲を片手に、ちらりとスタッフの顔を見る。「はい。誰か、松本さんにこれ持ってって~」談笑していたスタッフは、聞くなり顔を見合わせ沈黙した。部屋の向こうにいる松本は不機嫌で、煙のたちこめたそこには誰も足を踏み入れたくない。珈琲を運んで行ったが最後、つかまるのは皆分かっていた。繰り返されてきた会話はこうだ。「なあ……お前ら。昼休憩、暇だろ?、ケ...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に2

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直はオークジホテルの広いホールで、多くのシェフと一緒に生き生きと働いていた。笑顔で時折会話を交わしているのを見て、松本はほっと息をつく。人付き合いの苦手な直が周囲とうまくやっていけるかどうか、未だに心配でならなかった。「相良くん。マーブルケーキが減っている。ホワイトチョコの仕上げ頼む」「はい」「客前だけど大丈夫か?」「出来ます」ケーキバイキングの売りには、客前で実際にケーキを作って見せるパフォーマ...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に3

直が出向している高級ホテルのケーキバイキングは、名の知れた一流ホテルだけあって、周囲を見渡すと、めかしこんだ女性客が多い。男性客もいないわけではないが、ごくまれだ。松本も一人で覗きに来るのは、気恥ずかしさもあるのだろう。連れの居る今日は、いつになく上機嫌でエスプレッソを口に運んでいた。「直の傍にいるのが、チーフシェフだ。やはり手際の良さが目を引くな」「あの人が木本さんのお知り合いなんですか。背が高...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に4

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どちらの仕事も終わった夜、約束通り松本は直と連れだってホテルのバーにいた。チーフシェフの言いたいことは何となくわかっていたので、直はその場所に行くのは気が進まなかったのだが、同席しろと松本が言うので渋々ついてきた。仕事の話では、逃げるわけにはいかない。松本と飲みに出るのが初めてだったので、そこだけは少し楽しみだった。「あ。おいしそう……」洒落たカクテルが運ばれてゆくのを、視線で追う直に、チーフシェフ...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に5

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申し訳なさそうに、バーテンダーが小声でささやいた。「あのぅ、お連れ様がお飲みになったのは、スクリュードライバーです。すみません。後ろで飲んでいたカップルの男性が頼んだものと同じものをくださいとおっしゃったので、何も考えずにお出ししました。口当たりがオレンジジュースと似ているので間違われたようです……喉が渇いていたとおっしゃって、続けて3杯くらいはお飲みになったかと」「まじか~。つかお前、こんなにアル...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に6

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今でこそ落ち着いているが、木庭組に世話になり始めたころの松本は、感情のふり幅が激しかった。一度、頭に血が上ってしまうとささくれた感情は、自分では抑えがきかない奔流となる。荒れ狂う衝動に任せたまま、相手が手向かいできなくなるまでぶちのめし、相手の流した血の海の中でやっと我に返るような塩梅だった。やりすぎだと文句を言われても、自分に非がない以上決して頭は下げなかった。松本を拾ってくれた木庭組の面々は、...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に7

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温かい灯りのともる場所に、松本は足を踏み入れた。「まあ、飲め」「いただきます」「面を見せるのも久しぶりだな。親父が寂しがってたぞ」「後で上に顔出してきます」直のアパートから直接、木庭組に顔を出した松本は、木本に勧められるままグラスを重ねた。心に刺さった小さな氷の棘が、この場所にいるだけで溶けるような気がする。「兄貴。親父さんの具合はどうなんすか?」「相変わらずだな。季節の変わり目は古傷が痛みだすか...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に8

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一方、Caféの方に出勤してきた直には、松本の不機嫌の理由が皆目わからなかった。眉間に皺を刻んだ松本の傍に、おずおずと近づいてみたが、ぎこちない会話しか交わしてくれないので途方にくれていた。「あの……店長?」「ああ?」「おはようございます……」「ああ」「フレンチトーストに蜂蜜かけますか?」「ああ」「コーヒーはブラックでいいんですよね?」「ああ」「おれ……席を外した方がいいですか?仕事の邪魔ですか?」「……」空...

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Caféアヴェク・トワ 君と共に9

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荒木は思い出した。これまで松本の恋は成就したことがない。不器用と言ってしまえばそれまでなのだろうが、中学の頃から落ち込む姿を何度も見てきた荒木だった。元来、惚れっぽく一途な質だが、こらえ性がないのがその一因だった。落ちている消しゴムを拾って手渡したときに、指先が触れ合っただけで恋だと勘違いするほど惚れやすいくせに、相手が誰かと親しげに話をしているのを一瞥しただけで、一方的に身を引いて終止符を打つ。...

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