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Archive: 2015年08月  1/3

Café  アヴェク・トワへようこそ 1

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木庭組が新規事業として目を付けたのは、カフェ経営だった。水商売の寵児として、組長代行のままいくつかの店を抱える木本には、新しい店までは手が回らない。そこで、ずっと木本の傍に仕えていた松本を雇われ店長にしたのだが、松本は不服そうだった。「だりぃわ~。俺、本当は二番手のほうが良いんだけどなぁ……」しかし木本は、松本の自分への依存を見破っていた。このままでは独り立ちできない危うさが見え隠れしている。「親父...

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Café  アヴェク・トワへようこそ 2

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荒木は苛々していた。松本が即決で雇うと決めた経験者の相良が、思ったほど役に立たないのを目の当たりにしていたからだ。「松本さん。もう一度聞くけど、あの子本気で採用する気?」「そうだけど。何か問題あるか?」「小さい店だからさ、厨房も忙しいときには、ホールに出るだろう?あいつ、恐ろしいほどどんくさいんだ。人前は使えないぜ?断るつもりなら早いほうがいい。」その時、ホールで派手な破裂音が響いた。「ほら、また...

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Café  アヴェク・トワへようこそ 3

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「店長としては、相良くんをどうしたいわけ?」松本のきつい視線に耐えかねて、荒木が先に声を発した。「……あの不器用さは、時間がたてば何とかなるってもんじゃないっすよ。」「おまえ、気づいていなかったのか?」「は?」「良くは分からないけど、直のあれって「虎馬」……ってやつじゃね~のか?」「トラウマ?なんでそう思うんすか?」「俺じゃなくたって、あんな分かりやすいの、誰でも気づくと思うけどな……」松本は荒木が気づ...

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Café  アヴェク・トワへようこそ 4

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一方で相良は、自分の駄目っぷりに落ち込んでいた。頭の中では、いつまでもこんな風ではだめだと分かっているが、誰かに背後から手を伸ばされると、全身が総毛立つ。松本が睨んだ通り、相良はある理由から人が苦手だった。笑い合って、賄いを食べる仲間に、打ち明けることもできない相良の傷は、いつまでたってもじくじくと癒えなかった。パティシエになりたくて、心機一転、新しい店でやり直そうと思っていたのに、中々過去を振り...

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Café  アヴェク・トワへようこそ 5

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静かに水回りの拭き掃除をする相良に、松本は声をかけた。「直。切りのいいところで止めていいぞ。明日も頼むな。これ、直には店の合鍵渡しておくから。」「……はい。」「なぁ、直は前の仕事場で何か嫌な目に遭ったのか?……あ、すまん直球過ぎた。答えなくていい。」「……店長は、優しいですね。何か、話をしていると温かい気持ちになります。」「そうか?」「ええ。女の子たちが話していたでしょう。前の店のオーナーとは大違いです...

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Café  アヴェク・トワへようこそ 6

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相良が帰宅したのち、松本はフランス語の辞書を眺めていた。そろそろ店名も決めなければならない。候補名はいくつもあった。「よう。」ノックと共に顔を出したのは、兄分の木本だった。「あ、兄貴。お疲れ様っす。」「どうだ、調子は?」「順調です。何とかスタッフも確保できましたし、荒木が帰ってきたらメニューをつめるつもりです。名前も、いくつか候補を絞りました。」「そうか。おれの手がなくても十分やっていけてるじゃな...

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Café  アヴェク・トワへようこそ 7

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松本は、電話の向こうに、悲鳴のような切羽詰まった声を聴いた。「す、すみませんっ……店長。あのっ……。」「相良っ?どうした?何かあったのか?」「……今、自宅の前に……前の店のオーナーが……」「すぐ行く。待ってろ。」電話を切ると、松本は走りながら、そのまますぐに木本に連絡を入れた。「兄貴、松本です。例の奴とトラブってるみたいなんで、これから相良の自宅に行ってきます。住所は……」「わかった。手がいるようなら知らせて...

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Café  アヴェク・トワへようこそ 8

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そこに松本がいるのが、力になったのかもしれない。相良は、カチャ……とチェーンを外して出てきた。緊張しているせいなのか、青ざめていた。「店長をやくざだというのなら、黒崎さんはなんだというんです。製菓学校を出たばかりのおれに、あんたが何をしたか言えますか?」「な、何を、言い出すんだ。人聞きの悪いことを言うな。合意だったじゃないか?私の所に来たいと言ったのは君の方だ。そうだろう?」黒崎は機嫌を取るように、...

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Café  アヴェク・トワへようこそ 9

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松本は黒崎に近づくと顔を覗き込み、一般論を口にした。「わかるはずがない?……あいにくだな。わかるんだよ。例えば……裏ルートから出稼ぎにやって来た奴がいるとするだろう?……世間に疎いのをいいことに、パスポートを奪ってタコ部屋に囲い込み、家賃だと言って給料の殆どを巻き上げる。金のほとんどを奪っておきながら、家賃不足だ、生活費不足だと言って、強姦まがいに夜ごと自分の性欲処理をさせる。もちろん無料奉仕だ。不法滞...

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Café  アヴェク・トワへようこそ 10  【R-18】

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BL的性愛表現があります。ご注意くださいまるで、物語に出て来る初々しい恋が、密やかに成就する瞬間のようだった。高い鼓動を気にしながら、二人はぎこちなく互いを抱いた。「俺でいいのか?……つか、男だけど有り?」降ってわいた幸せを半信半疑で問う松本に、腕の中で頬を染めた相良がこくりと頷く。「……おれ、シャワー浴びてきます。」「そのままでいい。」「でも、汗かいてるし……」「焦らすな、直。」「あ……っ!」Tシャツをた...

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