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Archive: 2014年08月  1/4

漂泊の青い玻璃 ・これまでのあらすじ

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母の再婚によって、家族を得た琉生(るい)。小さな諍いや事件はあったが、一つずつ乗り越えて家族は一つになってゆく。束の間の平穏の中で、琉生の母親が実父と同じ病に倒れ、幸せは少しずつ揺らいでゆく。二人の兄、尊(たける)と隼人(はやと)は病の母と小さな弟を支えようとするが、母は結局、琉生を残して儚くなってしまう。母は、琉生に実父の残した一枚の絵の存在を告げていた。妻の死を受け入れない義父の寺川は、やがて...

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漂泊の青い玻璃 42

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琉生が学校に行った後、尊と隼人は忙しなく引っ越し準備を整えた。琉生が自分でスーツケースに入れた物は、絵の道具とさしあたって日々必要なものだけで、それほど多くは無い。なるべく静かに、尊と隼人は琉生の部屋から荷物を下ろした。「俺、練習があるから今日も遅いんだ。琉生の引っ越し、兄貴一人で大丈夫?」「バイトが入っていたけど、明日の夜に振り替えて貰ったんだ。琉生の荷物は少ないから、一人で十分だ。学校が終わる...

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漂泊の青い玻璃 43

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琉生は助手席で、不安そうにしていた。初めての一人暮らしだ、無理はない。「学校からも塾からも近いんだ。いい場所だろ?」「うん。え~と……すごくアンティークな建物だね。」「築40年ものだからな。でも中は、思ったより綺麗なんだ。解体が決まってから、住人も引っ越しを始めているから、静かだよ。」「じゃあ、あまり人がいないんだね、ここ。」琉生は鍵を受け取ると、自分の城になった部屋へと足を踏み入れた。「わぁ~……台...

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漂泊の青い玻璃 44

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父の精神疾患さえなかったら、琉生がこんな風に自分を責めることなどなかったのにと、尊は思う。「本当は僕も琉生一人をアパートに放り込むなんてこと、したくは無かったんだ。だけど話をしても、親父が自分を病気だと認めない以上、入院させるのは難しくてね。琉生の為にも、今は離れて暮らすのが一番いいことなんだ。」「お父さんが一人ぼっちで可哀想だなんて思うなよ、琉生。琉生がどれだけ我慢してきたか、僕達はもうみんな知...

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漂泊の青い玻璃 45

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表まで出た尊と隼人は、短い会話をした。「しっかりしているように見えても、琉生も取った年だな。」「そうか?僕は一度も琉生をしっかりしていると思った事は無いぞ。」「え?尊兄にとって、琉生はどういうイメージなんだ?」「僕にとっての琉生か?最初に遊園地で会った時から変わらないよ。戦隊物が大好きで、お母さんの後に隠れてた。小さくて可愛かったな。」隼人は呆れた。「そこで止まってるのか。だったら可愛くて仕方がな...

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漂泊の青い玻璃 46

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「琉生?」「ぼく……ずっと尊兄ちゃんと……キス……したかった……んだ……」口角が上がるのを、尊は辛うじて抑えた。「琉生。ごめん……嬉しくて、ちょっと意地悪したくなった。」「……尊兄ちゃ……んっ……。」そのまま顔を近づけて、尊は琉生の二枚貝を割った。一瞬、硬直した琉生が身体を預け、おずおずと応えて来る。交互に上下の唇を舐めとるだけの甘い優しいキスに、緊張の解けた琉生は腕の中で放心していた。「僕も琉生が好きだよ。ずっと...

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漂泊の青い玻璃 47

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尊と隼人、二人の兄に大切に庇護されて、琉生の時間は過ぎてゆく。空き時間を、好きな絵の制作に注ぎ込んだ琉生は、めきめきと技術を身に付けていった。美術部の顧問は、琉生の才能に気付くと進路に向けていくつもの課題を与え、琉生もそれに応えた。夜が更けるまでデッサンに手を入れる琉生の、手にした鉛筆や木炭を取り上げるのは毎日顔を出す隼人の役目だった。「こら、ちび琉生。また、飯も食わずにお絵かきに没頭してただろ?...

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漂泊の青い玻璃 48

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ふと、隼人は琉生の絵に目をやった。壁際のイーゼルに立てかけられた絵には、覆いが掛けられていた。「琉生。この絵って、どこかの美術展に出すやつ?」「そうだよ。顧問が好きなものをいっぱい描いて、多くの人に見て貰いなさいって言ってくれたんだ。本当は、デッサンとか基礎をもっとやらないといけないけど、学校の勉強もおろそかにしてたら大学通らないから、どっちも頑張るんだ。」「両方頑張れって、先生がそう言ったのか?...

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漂泊の青い玻璃 49

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それでも、父がアニメ制作に関わり、忙しくしていると琉生の事を忘れてくれるのではないかと兄達は期待した。実際、放映後の反響は大きく、すぐに二期の制作が決まったほどだ。尊もテレビで見たらしく、隼人に連絡をしてきた。「隼人。親父のあれ、見たか?」その一言で、互いに判ってしまう。「ああ。琉生には見せたくないな。話が重くてさ、俺は何だか嫌な気分になったよ。」「僕には、主人公が求める少女が琉生に見えたよ。」「...

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漂泊の青い玻璃 50

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しばらく何もなかったから、油断していたのかもしれない。招かれざる客は、琉生が一人で過ごす夕刻、唐突に現れた。尊がいつか心配していたように、琉生が一人の時間だった。買い物を済ませ、イーゼルの前に腰掛けて集中しようとした時、ノックの音に気付いた。「ん?隼人兄ちゃん?」ゆっくりと古いノブが回転するのを、振り向いた琉生は、不思議とも思わず見つめていた。「久しぶりだな。元気そうじゃないか。」微かに笑みをたた...

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