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Archive: 2014年07月  1/1

漂泊の青い玻璃 37

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微笑む看護師に背を押されるようにして、尊は父の話をし始めた。母を失ってから二年余り、まるで生きながら死んでいるようなふさぎ込んだ状態の日々だったこと。それまで、連れ子の琉生にはまるで興味を示さなかったのに、何故か突然執着し始めた不自然さに戸惑っている事。自分でも驚くほど素直に、尊は個人的なことを細々と吐露していた。看護師という職業柄だろうか、包み込むような優しさは、心地よかった。まるで自身のカウン...

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漂泊の青い玻璃 38

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人気の無い薄暗いロビーは、冷たく無機質な空気が澱んでいた。薄く漂う消毒液のにおいが、ここが病院なのだと改めて意識させる。数枚の絵が掛かる階段を下りた場所、案内の場所の中央上部に、その絵はあった。「これ……琉生だ。」尊には一目でそれが琉生の父親が描いたものだと分かった。画面中央にいる嬰児には、琉生の面影が有った。慈愛に満ちた世界の中にいる琉生は、現実とは違い幸せな人生を辿っている。早逝したと言う父親は...

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漂泊の青い玻璃 39

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回された手に力がこもった。「電話しようとしたんだってな。僕に電話を掛けようとしていたみたいだって、聞いた。」「ん……僕、尊兄ちゃんには、居場所を言わなきゃって思ったんだ。でも、何か急に頭がぐるぐるして、立っていられなくなった。」「そうか……きっと、雨に当たったのとショックで熱が出たからだ。もう、平気か?寒くない?」琉生はこくりと頷いた。「看護士さんが、濡れた服をランドリーで乾かしてくれたから……」「この...

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漂泊の青い玻璃 40

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明け方近くになって、琉生と尊は自宅に帰って来た。琉生の髪は、親切な看護師の手によって整えられていた。老人介護に携わっていると、何でもしなきゃいけないのよ、だから任せてねと手際よく琉生の髪は短くなった。鏡を覗き込んだ琉生は、突然サイドが刈り上げたようになった自分の髪形に、慣れないようだった。「おかしくない?隼人兄ちゃん、笑わないかな。」「そうだな……何だか男の子みたいだって言うんじゃないか?」「怒るよ...

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漂泊の青い玻璃 41

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父が口を挟む前に、素早く寄り切ってしまおうと尊は考えた。「琉生は一通りの家事はできるし、うちの家事は(家政婦の)織田さんに、これまで通り頼めばいい。それで親父に不都合はないと思うんだけど、どうかな。」「あ、そうだ。すっかり忘れていたけど、通帳に記帳してきたんだ。琉生の通帳にお母さんの生命保険が入金されていたよ。」寺川は不安そうに「生命保険……?」とつぶやいた。「そうだよ。お母さんが昔から掛けていた小さ...

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