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Archive: 2014年06月  1/3

漂泊の青い玻璃 7

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尊の首に必死にしがみついて、琉生は頭の中のドーベルマンを追い払おうとした。「隼人っ!いい加減にしろよ!」「ば~か!ちび琉生の泣き虫。がう~っ!」「うわ~~~~あぁ~ん……」「よしよし……琉生。大丈夫だ。後でお兄ちゃんが隼人の事、ちゃんと叱っておくからな。近藤さんちのドーベルマンは、琉生の事を噛んだりしないよ。」尊はしゃくりあげる琉生の背中を、ぽんぽんと宥めるように撫でた。「ひっ……っく……ほんとう?」「あ...

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漂泊の青い玻璃 8

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琉生は覚えている。寺川の父と結婚する前、明るい髪をかき上げながら、歌うように母は言った。頬を染めて少し嬉しそうな母は、その日初めて、琉生に再婚相手の話を告げた。「ねぇ、琉生。お母さんね、琉生に紹介したい人がいるの。新しいお父さん欲しくない?」「新しい……お父さん……?」「そう。紹介していただいたの。その方が一度、琉生と会ってみたいっておっしゃったの。どうかな。」「琉生くんは……」そんなものは欲しくなかっ...

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漂泊の青い玻璃 9

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※琉生と闘病中の父親の悲しい別れの描写があります。ご注意ください。廊下を歩く微かな足音に、琉生の父親は直ぐに気付いた。紫煙と脂粉の入り混じった妻の香りがする。「あなた。気分はどう?」「……ああ、美和さん。お帰りなさい……」「琉生はぐずらなかった?」「全然……今日も琉生はいい子だったよ。ずっとお絵かきをしててね……後、琉生が絵本を読んでくれたんだ。この子は賢いね。もう、ひらがながすらすらと読めるんだよ。」「...

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漂泊の青い玻璃 10

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小さな子供がいる琉生の母は、思うような職に就けず、結局近くのスーパーにパートの職を得た。地域の民生委員の骨折りのおかげで、琉生は何とか公立保育園に編入することができた。私立の無認可保育園では、預けるお金が高くて、とても親子2人やっていけない。たまたま転勤する人がいて、空きが有ったのが幸運だった。琉生と母は、しばらくは朝型の生活になれるのに苦労した。慌ただしく時は過ぎてゆく。保育園のお迎えは、いつも...

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漂泊の青い玻璃 11

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母がどうやって新しい父と知り合ったのか、琉生は詳しいことは知らない。きっと母も父が亡くなった後、あれこれ悩んでいたのだろう。母に身寄りがないことは、琉生も知っていた。保育園の敬老会に、琉生には誰も来なかったから。ある休日、母は琉生に一番いい服を着せて、遊園地に行こうと誘った。「ゆうえんち……?保育園は、お休みするの?」「先生には、お母さんが電話したから大丈夫。」琉生は遊園地に行ったことが無かった。父...

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漂泊の青い玻璃 12

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遊園地の入り口で、琉生と相手の家族は初対面の挨拶をした。「こんにちは。琉生くん?」「……こんにちは。大槻琉生(おおつきるい)です……。」母の後に半分隠れて、何とか初対面の三人に挨拶をした琉生の目線に、上の兄だと言う少年が降りた。「お利口さんだね。きちんと、ご挨拶できるんだ。僕は、尊(たける)って言うんだ。こっちは、隼人(はやと)とお父さん。あっちに、ソフトクリームを売ってる売店があるんだよ。一緒に行っ...

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漂泊の青い玻璃 13

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琉生は母と別れ、尊と隼人と三人で、前方の席に座った。「琉生くん、ほら、こっちこっち。」「お~、やるなぁ、隼人。いい席じゃないか。」「きゅうこうじゃーが好きだって言ってたからさ、前の方が喜ぶって思ったんだ。ほら、ここならレッドがすぐ傍を通るだろ。琉生くんは、ここの通路側に座るんだよ。」「うん。」「おれたちは、すぐ横の席にいるからね、何かあったらすぐに隣りの尊お兄ちゃんに言うんだよ。」「わかった~。」...

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漂泊の青い玻璃 14

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公演後、戦隊ショーの半券を手にした琉生は、尊に抱き上げられて、初めて間近で見たテレビの中でしか会ったことのない正義の味方と、握手をした。舞台に参加した記念に貰った、きゅこうじゃーの特別な帽子をかぶった琉生に、レッドが気付いた。「琉生くん。今日は一緒に戦ってくれて、本当にありがとう。おにいちゃんとこれからも仲良くね。」「うん。……あの、レッド。手は痛くない?」「きゅうこうじゃーのスーツが守ってくれたん...

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漂泊の青い玻璃 15

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馴染みのラーメン屋に紹介された寺川という男は、最初は無口で神経質な印象だった。むしろ無愛想と言ってもいいかもしれないくらい、口数は少なかった。だが、ありったけの勇気を振り絞ったのだろうか、二回目に会った時いきなり、もしあなたさえ良かったら子育てを手伝ってくれませんかと、素直に頭を下げて美和を驚かせた。高学歴で自尊心の高い男だと、認識していたから意外だった。美和自身は釣り合いが取れないような気がして...

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漂泊の青い玻璃 16

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母は胸騒ぎを感じた。隼人は俯いたきり、顔を上げなかった。「あの、お隣の奥さま。……隼人君が何か……?」「あら、寺川さん、いらしたのね。何でもないのよ。前の奥さんと、わたし達仲良しだったから、今どうしているのかと思って話を聞いたのよ。でも、隼人君は知らなかったみたい。お邪魔しました~。」「いえ……」「そのうち、お茶でもしましょうね。寺川さん。」「はい、よろしくお願いします。」琉生の母親は、そそくさとその場...

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