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Archive: 2014年03月  1/3

朔良咲く 11

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朔良は髪をかき上げた。何気ない動作に、思わず目が行く。主治医がこれまで見たことのない艶めかしい仕草だった。「あの、ちょっと。」去りかけた島本が、足を止めた。「一つ聞きたいことが有るんだけど?」「……何だ?」「あんた、何で理学療法士になったの?答えてよ。」「……ん?君達、知り合いだったのか?」驚いたように医師が言う。「ええ。同じ高校なんです。僕は陸上部の後輩で……先輩には、ずいぶんお世話になったんですよ。...

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朔良咲く 12

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島本は、何故か彩の事も知っていた。「織田は朔良姫のリハビリにも、付き合ってくれていたんだろ?卒業前も学校に来ていなかったから、ずっと病院に付き添っているんだろうと思っていた。」「あんたはおにいちゃんの何を知っているの?」「……朔良姫の父親の会社に入社したことくらいは、聞いているよ。同級生だから、その位の話は入って来る。良かったな。」「なにが?」「何がって……好きな奴が父親の会社に入社したってことは、ず...

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朔良咲く 13

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朔良は冷ややかな眼を向けた。「自分勝手な事言うね。そんなの自分満足で、あんたが楽になるだけだ。」「うん、都合の良い詭弁かもしれないな。だけど、信じられないかもしれないけど、俺には朔良姫に会う気はなかったよ。本当に二度と会わないつもりだったんだ。それが朔良姫に酷いことをした自分への罰だと思っていたからな。」「ふ~~~~ん……」「やはり信じられないか?この病院で会ってしまったけど、これは偶然だった。俺は...

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朔良咲く 14

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いずみという名の少女は、殆ど病院で過ごしているせいか、年齢よりもっと幼く見えた。小学校も入学以来、ほんの数日しか通えていないという。「せんせい。王子さまは、いずちゃんに会いに来たのかなぁ。」「どうかな?お話してみようか。」「いずちゃん、王子さまとお話するのはじめて……。どきどきする。」島本が手を上げて自分を呼んでいるのに、朔良は気付いた。出来る限りの不機嫌そうな表情を作り、渋々傍に行く。「……なに?」...

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朔良咲く 15

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朔良は、病院からスイミングへと移動した。いつものように水中歩行訓練をした後、朔良はマッサージを受けながらインストラクターと話をしていた。どこか飄々としていて、側に居ても圧迫感がなく、二人きりの空間は心地よかった。主治医の友人と聞いて、余計な垣根が出来なかったのかもしれない。彩と家族、主治医以外の人間の前で、朔良が打ち解けて饒舌になる事は余り無かったが、この男とは不思議なことに自然と会話が続いていた...

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朔良咲く 16

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その夜、朔良は彩の帰宅を待っていた。父親から、明日は会社の休日だと聞いて、メールを入れていた。「おにいちゃん……お帰りなさい。」「ああ、朔良。ただいま。寒いのに、家に入っていれば良かったな。」「ううん。僕が上がり込むと、叔母さんに気を使わせてしまうから……」「そうか。じゃ、このままちょっと外に出ようか。寒かったんだろう?鼻の頭が赤くなってる。ほら。」彩は巻いていたマフラーを外すと、冷えた朔良の首に巻い...

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朔良咲く 17

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朔良の下げた頭を、ぽんぽんと彩は撫でた。「もっと早くに、朔良と話をすればよかったな。そんな風に思ってたのか。俺は叔父さんにはとても感謝してるんだ。正直、大学に行かないで働くって決めるまでには葛藤もあったけど、今は毎日が大切だって思えるようになった。仕事も余暇も、とても充実してるんだ。朔良が俺に負い目を感じる事なんてないんだぞ。」「ほんとに?無理してたり負け惜しみ言ったりしてない……?」「俺が、そんな...

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朔良咲く 18

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朔良が思わず引くほど、はしゃぐ彩には酒も入っていた。だから、余計にテンションが上がったのかもしれない。「すごいな~!甘ったれの朔良が自分で進路を考えるなんて、思いもしなかったよ。さあ、飲め。酔ったら負ぶってやる。」「十分飲んでるよ。……あのさ、おにいちゃん。僕だって少しは考えるんだよ。」「いや、それはないだろ。」言い切る彩に、さすがに若干むっとする。「何それ。僕だって、いつまでもこのままじゃ駄目だっ...

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朔良咲く 19

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「朔良?あなた、何してるの?」「ん?あ、ママ、お帰りなさい。……確かこのクローゼットの中にあったと思ったんだけど……」「探し物なの?なに?」「ママが作ってくれたスーツ。ほら、ママの趣味満載の薄い色の。」朔良が捜している物、それは成人式に母がオーダーメイドで作らせたスーツだった。上質な灰紫色のスーツは、デザインがまるで新郎みたいだから嫌だと、朔良は袖を通した事は無い。「あるわよ。ほら、確かこれね。……箱に...

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朔良咲く 20

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母の用意したもの。花飾りのついた白いふわふわのニットの帽子、これは病気で髪の毛が抜けた子供がかぶれるようにと配慮されたものだ。クリスタルビーズの煌めくカチューシャ、ボビンレースのシュシュ、女の子の好みそうな白や薄桃色の小物がぷりきゅあの紙バッグに、ぎゅうぎゅう詰めに入っている。パジャマの上に羽織るガウンも、それぞれにおしゃれなものだった。院長に電話した母は、仕入れた情報を元に病児学級に通う5人の女...

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