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Archive: 2014年02月  1/2

嘘つきな唇 49

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里流は悲しかった。酒の上の事と、全てを忘れてしまおうと思ったのに、話を蒸し返して彩は何を考えているのだろう。里流の好きだった彩は、本当に欠片もなくなってしまって、もしかするとやはり生活の憂さを自分に向けたいだけなのではないか……そんなはずはないと思いながらも、ついそんな風に考えてしまう。それとも一度抱かれた自分は、誰にでも身体を開く便利な存在と思われてしまったのか……里流は、唇をかんだ。「待ってくれ、...

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嘘つきな唇 50

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腕の中で彩の温もりを感じて、少しずつ里流は落ち着きを取り戻していた。強張っていた心身が、解れてゆく気がする。真っ直ぐに下ろしたまま緩く握られていた拳が、ゆっくりと迷うように上がり、静かに彩の背中に回った。「里流……」里流はくんと、彩の匂いを嗅いだ。里流の好きなシトラスの清潔な青い匂いが、ふわりと鼻腔をくすぐった。「彩さん……、大丈夫です。すみ……ません。逃げないって決めたのに。」「里流が俺を怖がるなんて...

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嘘つきな唇 51

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※BL的性表現があります。ご注意ください。背後から抱きしめられた里流は、彩の上に倒れ込むようにして横倒しに転がった。寝台の上で重なり合ってもつれ込む。「……あぁ……彩さん……」自分を求める彩の手に全てを委ねながら、腕の中で里流はやっと凍りついた時間が動き出したのを感じていた。彩の大きな手が、凝視する里流の髪をかきあげた。「里流……そんなに見つめたら、悪いことをしている気になる。力を抜け……」「はい……」愛おし...

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嘘つきな唇 52

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※BL的性表現があります。ご注意ください。きっぱりと言い切った彩の言葉に安堵して、里流はとうとう嗚咽を漏らした。「おれも……おれも……叶わないと思っていたけど、彩さん……彩さんっ……。」彩は忙しなく服を脱ぎ捨てると、首筋から胸へと胸の中の里流に吸痕を付けながら舌先を滑らせた。「……んっ。」小柱を舌で転がされると、甘い痺れが走る。強く吸われて、何もない胸の突起だけが膨らんで赤みを増した。乳首を甘噛みされて、里...

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嘘つきな唇 53

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BL的性表現があります。ご注意ください。失ったあの日から、求めてはいけないと自分に言い聞かせて来た彩の優しい視線に晒されて、里流の心は満ち足りていた。ほろほろと零れ落ちる、とまらない涙を隠したくて、シーツに強く顔をこすり付ける。抱きしめ合って時間が過ぎることだけを夢見て来たはずだったのに、もっと触れてほしい、彩を受け入れたいと、どうしようもなく歪な欲求が湧きあがる。里流の中に眠っていた激しい劣情が...

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嘘つきな唇 54

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「里流……?里流……大丈夫か?」何度も名前を呼ばれて、里流は気が付いた。返事の代わりに、腕を伸ばし胸に顔をうずめた。「彩さん……ひ……かるさん……」「なんだ。泣き虫だなぁ……」事後の始末もそのままの、間抜けな格好に苦笑しながら、彩は里流を抱きしめた。優しく頭を撫でられて、再び涙は止まらなくなってしまっている。自分でもこれほど涙もろくなるとは思いもよらなかった。好きな人に愛された、それだけのことで心が震える。「...

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嘘つきな唇 55  【最終話】

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忘れるはずはなかった。大好きな人に言われた、信じられない酷い言葉。彩に促されても、里流はどうしても口にできなかった。もう一度口にしてしまえば、やっとふさがった疵口が開く気がする。「……済んだことは、もういいんです。それにどんな彩さんも……おれは好きです。」「里流……それは嘘だろ?」「え?」「今日尋ねて来た時、泣いた跡があった。里流はごまかしたつもりだろうが、いくら鈍感な俺にもその位は分かる。俺はもう、里...

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朔良咲く 【作品概要】

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一応タイトルだけは決まりました。(〃゚∇゚〃)「嘘つきな唇」の 番外編となります。作中、第三番目の登場人物として書いていた、織田朔良のお話です。男児でありながら、目を引く美貌を持った朔良にとって、周囲は余り優しくはありませんでした。幼いころ、近くに住む高校生に乱暴された朔良は、どこかいびつな少年として成長します。彩の後を追って入学した高校でも、思わぬ災禍に見舞われた朔良は、ますます彩だけを追ってしまいま...

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朔良咲く 1

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織田朔良は、誰もが目を瞠る美しい少年だった。清浄な佇まいは、決して誰にも穢されない潔癖さを見せていた。しかし無垢な雪原に誰しも最初の一歩を印したいと思うように、朔良の美貌は一部の嗜好を持つ者の邪な劣情を刺激した。被虐心をそそる美を持って生まれたのは、朔良の悲劇だった。一人でいると、誰かがいつも声を掛けてきた。それは朔良にとって、決まって良いことではなかった。だが、幼い朔良には、事の良し悪しは分から...

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朔良咲く 2

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朔良の記憶はそこでぷつりと消えている。思いだそうとしても思いだせない。深いところにある記憶を無理に手繰ろうとすると、恐ろしい夢魔が淵から現れて朔良を喰らおうとし、パニックを起こした。学校に馴染めない高校生に何をされたか、心配する親と質問する警察官に朔良は何も言えなかった。ママに言っちゃ駄目だよ……という強い暗示が、朔良を捕らえていた。公園裏で乱暴された朔良を、最初に見つけたのは彩だった。あちこちに、...

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