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Archive: 2014年01月  1/3

これまでと、今後のあらすじ

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(先輩×後輩 再会物)片桐里流(かたぎりさとる)織田彩(おだひかる)***織田朔良(おださくら)自分のせいで怪我をしてしまった朔良の足が治るまで、傍に居ると決めた彩。我儘に手を焼きながらも少しずつ良くなってきた朔良に、彩はふと自分の夢を思い出す。いつかは大学に行って、子供達の手助けをしたい……そんな夢を話す彩に母は彩の知らなかった現実を語る。思いがけない父親の多額の借金に、彩は打ちのめされ、夢が遠のく...

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嘘つきな唇 26

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結局、彩は朔良の父親の申し出を受ける事にした。考えた末に決めた彩の報告を、母親は涙を浮かべて聞いた。無理をしていると分かっていても、朔良の父親が提示した条件は大卒と同じもので、彩の家にとってもありがたい申し出だった。「そう……。そうすることにしたの。彩はそれでいいのね?」彩は肯いた。「俺も今のままだと身分は高卒でしかないわけだし、伯父さんの所みたいな企業にはなかなか入れないからね。でも、いつになるか...

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嘘つきな唇 27

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すぐそこに看板が見えているスポーツ用品専門店まで行くのに、45分も掛けて二人は到着した。すっかり朔良は疲れ果てていた。靴売り場に置かれたソファにしゃげつくように腰掛けた朔良に、見繕って来てやるからここで待ってて、と彩は声を掛け、売り場へと一人向かった。ふと彩は同僚の姿に気付く。右も左もわからない途中入社の彩に、講師としてのノウハウを教授してくれた親切な二人だった。声を掛けようとして近付いた時、彩は...

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嘘つきな唇 28

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気付けば、あの事故から三年の月日が過ぎていた。週三日のリハビリは少しずつ効果を上げ、朔良は流れる足を引きずりながらではあったが、杖の助けを借りて何とか自力で歩行していた。彩が傍に居る事で落ち着きを得て、朔良の親も喜んでいた。しかし、以前のように普通に歩けるようになるには、痛めた足にもう少し体重をかけて歩く訓練をしなければならない。痛みに弱い朔良に、それはかなり困難だった。一度変な歩行癖がついてしま...

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嘘つきな唇 29

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帰り道、助手席の朔良は寡黙だった。彩もどう話を切り出していいか考えあぐねていた。言いだしたものの説得する自信はなかった。「いつ……から……考えていたの?」視線を落としたままで、朔良が辛うじて言葉を絞り出した。「大学受験……のこと。」「教師になることか?ずっと前からだ。朔良と俺が事故に遭う前から、決めていたことだ。」「ぼくがわがままだから……嫌いになったんじゃなくて?」彩は車を止めると、ふっと優しく微笑みを...

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嘘つきな唇 30

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真摯な瞳に戸惑ってしまう。朔良がそんな気持ちでいると、これまで微塵も考えた事は無かった。ずっと親しい身内として慕われていると思っていた。ふわりと浮かんだ片桐里流の姿が懐かしかった。「朔良……どうしたんだ?突然……」「突然なんかじゃないよ。ぼくじゃダメ……なのかな?ぼくはおにいちゃんの恋人にはなれない?パパの会社に遠慮もあるから?」「朔良。あのな、そうじゃなくて……どう言えばいいかな。俺にとって朔良は、ずっ...

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嘘つきな唇 31

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電話は滅多にかけたことなど無い彩の母親からだった。「もしもし……?あ、母さん?どうしたの?えっ……父さんが……!?」傍に居る朔良が驚くほど、彩は慌てていた。思わず朔良も耳を寄せた。電話の向こうでは彩の母親が、動転していた。受話器の向こうで彩を呼ぶ悲鳴のような声が、朔良にも漏れ聞こえてきた。「お父さんが……?様子がおかしいの?今帰り道だから、直ぐに着く。分かった、こちらからすぐに救急車に電話しておくよ。お母...

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嘘つきな唇 32

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病室の前の椅子に座って、彩は所在無くぼんやりとしていた。父は倒れてから時間をおかずに病院に搬送出来たため、手術をせずに点滴治療で回復できるだろうと言われた。詳しい病状を医師に聞き、命に別状はないのだと家族は安堵した。脳梗塞、それが倒れた父の病名だった。脳内に拡がる血の塊が映ったフィルムを見つめる彩と母に向かって、しばらくの入院加療の必要を医師は説いた。母は深く頭を下げていたが、彩は既に現実の事を考...

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嘘つきな唇 33

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そして翌日から毎日、変わることなく彩は会社へと通っていた。まるで何事もなかったように、淡々と仕事をこなす日々を送っていた。たまに同僚に誘われても断らずに、酒を飲むようになっていた。父の方は、まだ半身に麻痺が残っているものの、顕著に快方へと向かっていた。少しずつ改善するだろうと医師が請け負ってくれた。朔良のリハビリに長く付き合ったように、今度は母が父を支えてゆく。商売の方はと言えば、近所の住人が母親...

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嘘つきな唇 34

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居酒屋の奥の部屋で、従業員にふわりと掛けられたブランケットの温もりに、彩は眠りを深くしていた。連日数時間の睡眠で、新しいシステムのプレゼン練習に没頭してきた疲れがどっと押し寄せて来ていた。聞こえて来る会話が、眠りに落ちてゆく耳に心地よかった。「爆睡だな。」「身じろぎもしませんね。目の下の隈、ひどいっすね。クソまじめだから、ずっと寝てなかったんだろうなぁ。」「そこがお前と違うところだよ。だが、このま...

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