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Archive: 2013年08月  1/3

これまでのあらすじ

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更科翔月(さらしなかつき)と荏田青児(えだせいじ)は幼馴染だった。翔月は華奢で、体も弱く小さくクラスでも微妙に浮いた存在だった。青児は隣りのクラスで、生徒会長、野球部のエースとして周囲からの人望も厚い。高校二年の春、赴任してきた柏木という教諭は、翔月の秘密を知っていた。翔月の秘密、それは決して気取られないように、秘めて来た同性の幼馴染に抱いた劣情のまま、眠る青児にキスをしたことだった。中学時代、た...

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風に哭く花 19

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そして、ベスト4を決める準々決勝。連投でここまで善戦してきた青児は、ついに力尽きた。祈るように見つめる翔月の目の前で、金属バットの小気味よい音が響き、白球は外野スタンドに吸い込まれていった。しばしの静寂の後、敗者へのねぎらいの拍手が沸き起こった。「終わった……」翔月と青児は同時に空を見上げ、呟いた。同じ言葉だったが、同じ意味を持たない。*****その日の夕刻、約束通り翔月は柏木の元を訪ねた。にこやか...

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風に哭く花 20

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柏木は直も意地悪く、言葉で翔月を弄った。「荏田君も知らない本当の君を見せてあげるよ。ほら……一人で、ここにおいで。場所は分かる?」翔月は柏木の住所が書かれたメモを受け取ると、ポケットにねじ込んだ。自分が考えるよりも常に先手を打つ柏木に、どう対処すればいいのだろう。もしも、柏木の言うのが事実ならば、投稿しているサイトを知らねばならない。動画を削除するには、そこに入るパスワードがどうしても必要だった。パ...

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風に哭く花 21

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狭い風呂の扉を開けて、二人に注視されながら、翔月は湯を使うしかなかった。絡みつく視線に冒されながら、身体を洗う翔月の心は既に疲れ切っていた。罠にかかった小動物のように、翔月は二人に向かって怯えた視線を向けていた。「可哀想に。せっかくお風呂に入ったのに、もう汗ばんでいるね、うさぎちゃん。」「ちゃんと洗えた?」バスタオルを与えた支配者の長い指が、あちこち確かめるように翔月の上を滑ってゆく。「う~ん……何...

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風に哭く花 22

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ふと翔月に呼ばれたような気がして、青児は振り返った。「ん?翔月……?」青児は地区予選の打ち上げで、駅前の焼き肉店に来ている。先輩たちの父兄、野球部ОB等と共に、何度めかの乾杯が行われた。創部設立以来の快挙に、グラスを何度も上げながら、青児は輪の中心にいたがやっと抜け出した。「青児?」「すみません。ちょっとトイレっす。」「早く戻れよ。主役なんだからな。」「はい。」弱小野球部にとって、ベスト8はお祭り騒...

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風に哭く花 23

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青児が心配している頃、翔月は柏木の腕の中でしゃくりあげながら震えていた。「うさぎちゃん?」「せんせい……こわい……こわい……あぁんっ……」このまま何か違うものになってしまう気がすると言って、翔月は泣いていた。「早熟な子はとうにセクスなど済ませている、こんなの何でもないことだよ。」「いつかは、誰でも経験するのだからね。」普通の生活が出来なくなるようなことはない、何も変わらないと、柏木は翔月を励ましたが、焦燥...

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風に哭く花 24

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左右の膝をそれぞれに折り曲げて緩く結わえられただけで、勃ちあがった翔月のモノを見て柏木は、ほら……と俊哉に指さした。「見て、俊哉。うさぎちゃんは、こうされるのが好きなんだよ。だから、かまってあげないと……。ねぇ、俊哉は知ってる?うさぎってね……寂しいと死んじゃうんだよ。」それは誰かの作り上げた嘘っぱちだ。そう言いかけて、俊哉は言葉を飲み込んだ。俊哉の知る柏木直樹は、過去に大切な人を失って自暴自棄となり、...

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風に哭く花 25

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登校日は、青児にとっても翔月にとっても忘れられない辛い日になった。互いに求めていながら、二人は互いの手を振り払ってしまう。これまでも二人は、些細な喧嘩を何度もしてきた。いつも青児が翔月を一方的に叱っているようにも見えた。それでも少し時間が経てば何事もなかったように、元通りに翔月は寄り添った。部活に入っていない翔月は、教室かグラウンドでじっと野球部の練習が終わるのを待って、帰宅はいつも二人仲良く一緒...

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風に哭く花 26

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翔月をなじる青児の言葉は尖っていた。「……おれは翔月とはずっと変わらないで一緒に居られると思っていたけど、翔月はそう思っていなかったんだな。翔月にとってのおれは、一週間顔も見なくてもいいし、声も聞かなくてもいい軽い存在だったんだ。おれの思いは、翔月にとっちゃ重荷でしかないって良く、わかったよ。望み通り離れてやるよ。もう翔月が何をしようが構わないから、好きにすればいい。」翔月の俯いた口の容が「そんな……...

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風に哭く花 27

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青児は、大人げない自分に腹を立てていた。翔月が自分から離れようとしているのが理解できず、無性に腹立たしかった。本当は泣かせるつもりなどなかった。抱きしめて優しく話を聞いてやるつもりだったのに……生徒会室を後にして、握ったボールを思い切り自販機に叩きつけた。ガン!!……自販機に当たって派手な音をさせたボールを、驚いたような顔をしたクラスメイトが通りかかって拾った。「危ないなぁ。何やってるのよ、荏田。」「...

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