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Archive: 2013年07月  1/2

風に哭く花 【作品概要】

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更科翔月(さらしなかつき)と荏田青児(えだせいじ)は幼馴染だった。翔月は華奢で、体も弱くクラスでも微妙に浮いた存在だった。青児は隣りのクラスで、生徒会長、野球部のエースとして周囲からの人望も厚い。高校二年の春、赴任してきた柏木という教諭は、翔月の秘密を知っていた。翔月の秘密、それは決して気取られないように、秘めて来た同性の幼馴染に抱いた劣情。白衣を着た淫魔が翔月を襲う。二人の恋は成就するのか……**...

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風に哭く花 1

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内向的……更科翔月(さらしな かつき)を一言で表現するなら、この言葉が適切だろう。「おはよう係」という別名を持つ、登校してくる生徒たちへの声掛け係に推薦されて、翔月は断りきれなかった。小学生ならともかく高校生にもなって、朝の挨拶運動なんてかったるいにもほどがある。目立たないし、生徒会ともクラス役員とも縁がないのに、なんでぼく……?……と心の中で思っていても、翔月は嫌ですとはっきり口に出来なかった。「よっ...

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風に哭く花 2

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何故こんな風に、青児にそっけなく言ってしまうのか。理由は簡単だ。投げやりに見えるのは、もうとっくに諦めてしまっているからだ。誰かに期待するような子供っぽい感情は、とうに捨てたんだと、翔月は必死に自分に言い聞かせていた。なぜなら……翔月には、誰にも言えない秘密がある。それは青児だけでなく、決して誰にも打ち明けてはならない秘め事だ。口にはしないが青児は今も、翔月の事を何も知らない清らかな子供だと思ってい...

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風に哭く花 3

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しばらく一人で泣いた後、重い足を引きずるように、翔月は教室に帰ってきた。喧騒の中に空いた自分の居場所を見つけ座り込むと、ほうっと深いため息をつく。「……更科。ほら、先生が呼んでるぞ。」「え?」小突かれて気が付き、顔を上げた、ぴリ……と怖気が走る。そこに居たのは、理科の柏木だった。「先生……」「更科君。明日の実験準備があるから、放課後、準備室に手伝いに来てくれるかな。」白衣を着た教師が教室を覗くとそう言っ...

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風に哭く花 4

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とんと柏木に背後から肩を押されて、翔月は生物実験室に入った。誰もいない生物実験室は、全ての窓に白いカーテンが引かれて、ほの暗い。まるで学校の中ではないみたいな気がする。儀式が行われるにふさわしい静寂がここにはある。「荏田くんは、君のことが本当に大好きなんだねぇ……」背後から、恐ろしい声がする。「先生、君らの会話を聞いて、すっかり妬けちゃったよ……そして、少しだけ悲しくなった。まるで、二人の仲は特別なん...

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風に哭く花 5

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翔月の身体の上に屈みこんで、あちこちもて遊んでいた柏木が、何かを思いついて顔を上げた。しっとりと薄い汗をかいた翔月の胸に、一つ痕を残してキスを贈ると、肌けていたシャツのボタンを留め直し始めた。ぺリ……と、ガムテープをはがされて、もう気が済んだのだろうか……許されるのだろうか……と、ほっと翔月が息を付いたのも束の間、頭上に上げた手首も下ろされる。どっと熱く血が通うのを感じた。「つまらないね。更科君は、早く...

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風に哭く花 6

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翔月はまるで覚えていないが、柏木との出会いは数年前にさかのぼる。柏木は大学時代、教員資格を取る為、翔月と青児の通う中学校に教育実習生として赴任して来た。中学校でも翔月は、青児と当たり前のように、いつも一緒だった。小柄で幼く見える翔月は、その頃、既に青児のことが大好きで、吐露できないくすぶる思いに気付き始めたばかりだった。決して気取られてはならない幼馴染の青児に向けた感情は、翔月の胸の奥に静かに秘め...

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風に哭く花 7

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柏木は震える翔月の肩を、この上なく優しく抱いた。「そんなに驚いたの?嬉しいな……」ごきゅと翔月の喉が鳴る。「僕はね……学力が違うから、君達は高校で別れるだろうと思っていたよ。彼は君のレベルに落として受験したんだね。明晰な頭脳なのに、勿体無い。今は生徒会長だっけ……?一緒に入学して来るなんて、思いもよらなかったよ。」図星かもしれない。青児は進学校への推薦受験の誘いを蹴って、野球をするからと言い訳をして、翔...

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風に哭く花 8

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いつかあの子を、自分のモノにしよう……翔月を見つめる柏木の激しい思いは、人に好かれる容姿の下に見事に隠されて誰も気づかなかった。柏木は教育熱心な優秀な教師として、内外の信頼も厚い。放課後、翔月を呼び出して、柏木の思いは半分遂げられたかに見えた。だが更科翔月の思いは、酷く扱えば尚更、荏田青児へと向かっているようで、それが無性に腹立たしい。固く目を閉じて耐える翔月は、脳裡に荏田青児を思い浮かべていた。風...

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風に哭く花 9

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男にしては華奢すぎる線の細さも、小さな顔も、翔月はずっと変わらない。青児にとって、翔月はいつも守ってやりたいと思える愛おしい存在だった。ただ、これまで青児は翔月に向けた想いを、一度も口にしたことはない。口にしなくても、翔月には全て判っていると思っていた。それが青児の誤算だった。「……なぁ。柏木先生って、昔会ったことあったっけ?」「え?」「陸上部の坂崎ってやついるじゃん、二組の。あいつが柏木の事、中学...

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