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Archive: 2013年03月  1/3

桃花散る里の秘め 8

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「……うっ……」やがて……こぷりと口元から水を零すと、大姫は目を開けて激しく咽た。「姫さま!ああ、良かった。」丸くなって激しく咳き込む姫の背を優しく撫でた。やがて落ち着いた大姫は、ぬれねずみでしょんぼりとうつむいたまま、一言も言わない。きっと義高が怒っていると思って顔を上げられないでいた。付いていかないとげんまんしたのに、約束を反故にしたのを悔いていた。何より大好きな義高に嫌われるのが怖かった。「大姫さ...

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桃花散る里の秘め 9

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門番の知らせで、侍女が血相を変えて走って来た。「姫さま!大姫さま、いかがなされたのです!お怪我はございませぬか?」大姫はにっこりと、義高の背中から笑いかけた。「怪我はしておりませぬ。それよりも、橋から落ちた大津を助けてくれた義高さまにお礼を言っておくれ。」「……えっ!橋から!?」しかし、義高に向けられたのは、恐ろしいほどの激高だった。「義高殿っ!あなた様がついて居ながら、一体どういう事です。このよう...

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桃花散る里の秘め 10

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国家老は義高を呼ぶと、薄暗い行燈の元で、声を潜めて仔細を打ち明けた。「元々、大津には丈夫に育つよう願を掛け、元服までと決めて女子の形で育てるつもりであった。本来ならば、女子の姿をさせていても、いずれは我が家の男子として家名を継がせるべく、厳しく武門もしつけるはずであったのだ。だが、あの通り大津は男子としては余りにひ弱で、医師からも長生きしたければ滋養に勤め安静にするようにと言われていた。」「そうで...

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桃花散る里の秘め 11

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数日後、元服を控えた少年たちによる御前試合が行われた。残念ながら、藩籍のない義高はその場に参加できなかった。優勝は前評判通り、武芸指南役の嫡男、高坂一颯(かずさ)であった。*****優勝者が藩主にお目見えしたその席で、国家老は窮地に立たされる事となる。高坂一颯が藩主に大姫をめとりたいと言い出し、藩主もそれは良いと言い出してしまったのだった。元々、大津を姫として育てるのも子供時分だけのつもりであった...

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桃花散る里の秘め 12

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国家老は肩を落としていた。主君は、国家老が色よい返事をするものと思っているだろう。相手は安土から続く名門の家柄で、本来ならば断る理由がなかった。「四面楚歌か……」追い詰められていた。「旦那さま。お早いお帰りですのね。お城で何かございましたか?」浮かない顔をした主に気付いた妻は、そっと障子を閉めた。「大津の縁談を持ちかけられた。」「まあ……それで、なんと?」「病身ゆえ婚姻は叶いませぬと、殿に言上して参っ...

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どうやっても……

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ブログ村に記事が反映されません。新しいお話を更新してるのだけど……(´・ω・`) なので、お知らせするために一度この記事を上げてみます。どうしてかなぁ……...

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桃花散る里の秘め 13

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「高坂殿……大姫さまが、川に落ちたことをご存じか?」「仮死状態の姫に、大槻殿が必死で蘇生の術を施したところもな。見事であったな。あれは国許で覚えたのか?」「……わたしの国では、稲作が盛んで、大小いくつもため池があるのです。時折り幼い子らが落ちるので、おぼれた時には傍に居る者が、誰でも命を救えるようにと、班ごとに年長者が付いて教えるのです。そうして毎年、命を拾うものがおります。」「誰にも口外してはおらぬ...

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桃花散る里の秘め 14

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義高は仕方なく高坂と連れだって門をくぐった。いつものように、門の内側に大姫がいると困ると思いながらくぐると、そこには大姫の姿はなかった。ほっと安堵の反面、心配になる。まだ熱がひかないのだろうか。「義高さま。すぐにすすぎ(足を洗う水)をお持ちいたします。……そちらは?」「菊さん。こちらは藩校の友人で、高坂殿です。大姫さまの見舞にいらしたのです。」高坂は神妙に頭を下げた。「まあ、義高殿。奥方さまは、ご重...

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桃花散る里の秘め 15

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所望された茶を運んできた義高は、自分の部屋から高坂が忽然と姿を消したのを知り、急ぎ大姫の部屋へと向かった。「御無礼っ、大姫さまっ!高坂殿。」何時も大事に抱えている糸手毬もなく、血相を変えた義高が、門へと走り門番を問い詰めた。「大姫さまと高坂殿を見なかったか?」「義高さまのご友人と大姫さまなら、あちらの方へ向かって行かれました。大姫さまは、ご友人の御背に負ぶさっていらっしゃいました。」「何か言って居...

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桃花散る里の秘め 16

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ほんの一刻(約14分)前。「さあ、大姫さま。ここまで来たらお覚悟召され。諦めが肝要かと存じまする。」「……なんの覚悟をするのですか?大津はあなたが何をおっしゃっているのか、何をしたいのかわかりません。早くお家にお返しください。」「わたしは、姫さまの秘密を知っているのですよ。父上の御身が御大切なら、聞き分けて潔くわたしのものにおなりなさい。」ひなびた社の祠の中は、板は張っているもののざらざらと土埃で土間と...

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