FC2ブログ

Archive: 2012年12月  1/3

沢木淳也・最後の日 8

No image

沢木と鹿島が参加した合同捜査会議は、早朝から行われた。捜査員をすべて班分けにし、それぞれチームを組んで捜査は進められる。捜査に関わる人数は、今回の殺人事件が広域捜査になったことで異例の多さになった。西署の沢木が連れた新人が実はキャリアで、その名前から鹿島警視監の息子だという事は、すでに知れ渡っていた。全国26万警察官のトップになるべき人物は、これまで例外なく警視監二十名の中から選ばれている。鹿島雄...

  •  2
  •  0

沢木淳也・最後の日 9

No image

沢木は最後まで残り、今回の捜査で直属の上司となった班長に声を掛けた。「警察をかきまわして、喜んでいるように見えると言うよりは、俺には誰かの注意を引きたいだけのような気がしますね。」「なぜそう思う?」「こうすることで自分を見てくれと、存在をアピールしているような気がするんです。プロファイルを否定する気はありませんが、同じ手口で害者は皆、警察官の子息だ。それが、どうも気になって……。まあ、裏が無い以上思...

  •  4
  •  0

沢木淳也・最後の日 10

No image

生徒会室で過ごす昼休みは、連日、蒼太と隼と周二で、盛大な昼食会となっていた。真ん中に木本が腕によりを掛けた、豪華な弁当が並ぶ。隼の父親の三段弁当に引けを取らない料亭顔負けの手の込んだものだった。「りんご、も~らいっ!」「あ!ぼくのうさぎさん~!や~ん。」「木庭。大人げない。沢木に返したまえ。君はそっちのみかんでも食べてなさい。」「ちっ。」うさぎりんごの争奪戦は、隼の勝利となった。「うふふ~、ねぇ、...

  •  6
  •  0

沢木淳也・最後の日 11

No image

隼は周二を伴って、呼び出された会議室に向かった。「こんにちは。君が沢木隼くん?」初対面の相手には、気軽に返事をしないように隼は周二に言われている。後ろに立つ周二の恐ろしいほどの気圧(オーラ)に、相手はたじろいだ。「初めまして。沢木さんと一緒に働いている鹿島と言います。」隼を訪ねて来た鹿島は、隼と周二に警察手帳を見せた。勿論、正真正銘の本物だ。「パパの……同僚の人?」「そうです。捜査が長引いて、心配し...

  •  6
  •  0

沢木淳也・最後の日 12

No image

沢木はいらだっていた。約束の時間を過ぎても、鹿島が戻ってこない。何度電話をかけても、つながらない。「くそっ。鹿島の奴、何をやってるんだ。」腹立ちまぎれに、沢木が何本目かの煙草を踏みつけた時、能天気な声がした。「すみませんーーー!遅くなってしまって……」息せき切って走って来た鹿島を、否応なく怒鳴りつけた。「ばか野郎っ!何が有っても時間は守れ。おまえが遅れたせいで、犯人を取り逃がすことだってあるんだ。恋...

  •  4
  •  0

沢木淳也・最後の日 13

No image

沢木は、木本に、「もし何かあったら遠慮しないで連絡してください。裏の事はこちらの方が動きやすいこともありますから。」と言われていた。木本のような893くずれに手を借りるつもりはなかったのだが、用を足す振りをして、片手で携帯を通話にした。実際は本部に連絡を入れるべきだったのだろうが、鹿島に知られたくはなかった。ただ、刑事の勘で今誰かに伝えないとまずい気がする。ざっと濁った水が流れた。「そういや鹿島。...

  •  4
  •  0

沢木淳也・最後の日 14

No image

空中に投げ出された沢木は、落ちながら目の前にあった床に手を掛けた。その位の反射神経はあるが、ぽかりと空いた空間に辛うじて指先だけでしがみつく格好になった。「すごいなぁ。沢木さんって、運動神経もいいんですね。落ちると思ったのに。」「……くっ!」頭上から鹿島が覗き込む。「返事してくれないんですか?冷たいなぁ。」「あ、そうだ、いいものがあるんです。聞かせてあげますね。きっと、僕に返事をしたくなりますよ。」...

  •  2
  •  0

沢木淳也・最後の日 15

No image

沢木は朦朧としながらも、相手に掴みかかろうとしていた。必死に伸ばした腕を、相手は難なくすり抜けた。「な……にを使いやがった?」「ん~?薬品名で言うなら、パンクロニウム……?なんてね、冗談ですよ。そんなきついものじゃありません。怖いなぁ……そんな恐ろしい顔しないでください。雄ちゃん、なぁにこの人、薬が効かないの?まじこわいよ~。」「パンクロニウムだと……?」筋弛緩剤の一種、パンクロニウムはアメリカでは死刑執...

  •  2
  •  0

沢木淳也・最後の日 16

No image

落ち着かない周二を尻目に、戻って来た木本は至極冷静だった。木本には沢木の流してきた情報で、ある程度の推理が出来ていた。「周二さん。こういう事は余り言いたくありませんが……。これまで、犯人は遺体を遺棄しちまっていますよね。隠そうともせず、まるで誇示するように。」「だから、なんだ?」「こんなことを言うのは、どうかと思いますけど、大抵、警察(サツ)の行う家宅捜索って言うのは拳銃(チャカ)と日本刀の一振り位...

  •  3
  •  0

沢木淳也・最後の日 17

No image

ドアホンが鳴り、木本が相手を確かめた。「松本です。」「ただいま戻りました。」隼を迎えに行った松本が帰ってきた。「ただいま、周二くん……何かあったの?」「いや。腹減ってないか?隼。」隼はすぐに周二の腕の中に、すっぽりと抱かれて見上げた。無垢な瞳にじっと見つめられて、思わず視線を外しそうになるが、辛うじて笑みを浮かべた。感が良すぎて、時々周二は困るが、木本が助け舟を出してくれた。強面の木本は、カフェのギ...

  •  0
  •  0