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Archive: 2012年11月  1/3

平成大江戸花魁物語 17

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公開折檻の後、雪華太夫の元には馴染みの客から次々と見舞いの品物が届いた。離れの私室に、豪奢な品物が次々運び込まれる湯上りの雪華は、素肌に緋襦袢をひっかけて出窓に腰掛けて、禿の六花が楽しげに荷を解くのを眺めていた。どれほど汚され貶められても、決して染みになることはなく、雪華花魁の輝く玉の肌は変わらない。花菱楼の雪華花魁は、どんな目に遭おうとも、白蓮のように穢れなく清らかに大江戸に咲き誇る大輪の花だっ...

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平成大江戸花魁物語 18 【最終話】

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男姿となった雪華花魁が大通りを歩いていても、振り返る者は大江戸の中に一人もいない。この町に居るのは客と娼妓、ただそれだけだった。短い花の盛りを散り急ぐように大江戸に咲いた大輪の花は、雪華花魁という名前を天華太夫に譲って地上へと向かった。蝉の羽化に似ている気がする……と、長く伸びた影を見つめながら六花は思う。「雪華兄さん。」「六花。どうしたえ?」ふっと振り向いた新しい雪華花魁は、昨日まで天華と名乗って...

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平成大江戸花魁物語 番外編「再会」……と、あとがき

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東呉の祖父、澄川財閥の当主は、何とか小康状態を保っていた。今日は、大学を卒業後、挨拶に来るはずの孫の訪問を楽しみに待っている。窓辺で張り込む柳川に声を掛けた。「そろそろ約束の時間だな。」「はい、旦那さま。例の者は、すでに隣室に控えさせております。」「そうか。東呉には、いい卒業祝いになるだろう。」「どんな顔をなさるでしょうか。あ……、下にお見えになったようです。差し出がましいのですが、旦那さま、横にな...

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砂漠の赤い糸 1

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大江戸で「油屋の若旦那」と二つ名で呼ばれていた異国の青年は、今、機上の人となりながら水滴の走る窓に額を付けた。もう二度とこの国に降り立つことはないだろう。愛する人を残して一人国許に帰る、それだけのことが今はたまらなく悲しい。自分の心中を察した天が、共に泣いている気がしていた。「雪華……」誰にも祝福されることの無い、報われぬ恋が終わりを告げる。プライベートジェットのゆったりとした皮張りの椅子に、人払い...

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砂漠の赤い糸 2

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コンクリートの街の地下に、夢のような世界が広がっていて、蝶のような羽を持った美しい不思議な生き物が棲んでいるという話は、子供のサクルが大好きな話だった。病気がちだった息子のために、父が語った話に、彼は夢中だった。「それから?お父さま。そんなに高い履物を履いて、大江戸のオイランはどうやって歩くの?」「八の字という歩き方をする。ゆっくりと転ばぬように優雅に、滑るようにな。」「こうだ。」父は二本の指で、...

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砂漠の赤い糸 3

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そこでは、二十歳そこそこの寡黙な美しい男たちが、花魁、振袖新造と呼ばれ紅い着物を着た幼い禿を連れて宴席に侍っていた。サクルは誘われて、大江戸の大通りで生まれて初めて花魁道中というものを見た。「サクルさま。あれがこの大江戸で一番の花菱楼の雪華太夫です。」「……雪華……」両袖を広げると蝶の形になる不思議なキモノを着て、父王の言うとおり優美な歩き方をしていた。真っ直ぐに前を向いて八の字で歩く、美貌の雪華花魁...

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砂漠の赤い糸 4

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日めくりというカレンダーをめくって、ため息を吐く。小姓が言いにくそうに告げた。「サクルさま。そろそろ、国許へお帰りになりませんと……。既に二週間がたっております。」「そうか、時のたつのは早い。大江戸はわたしにはつれない場所だったな。諦めて帰国の支度をするとしよう。」立ち上がったサクルは、ふと窓際に置かれた一鉢の青い胡蝶蘭を認めた。「珍しい花の色だな……これは?」「一輪だけ花をつけたそうです。サクルさま...

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砂漠の赤い糸 5

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これ以上、雪華花魁が酷い目に遭わないようにしてやってくれないか……と、切りだしたサクルに雪華花魁を抱えている花菱楼の楼主が告げた。「御心配には及びません。大事な商品なのですから、傷付けないよう十分配慮しております。」「だが、雪華花魁は泣いたではないか。わたしの名を呼んで気を失ったと聞いて、どれほどの目に遭ったのだろうと思うと、哀れでならなかった。」「サクルさまにお教えしたら怒るかもしれませんが……雪華...

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砂漠の赤い糸 6

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降り立った故国の空は青く澄んでいた。昨日までのことが全て、眩い夢の世界で起きたことのようだ。変わらぬ強い陽光さえ、出かけた朝とまるで同じに見えた。機内で民族衣装に着替えたサクルは、つかの間の自由な身分を脱ぎ捨てて、今は王位継承権を持つ不自由な皇太子となった。「おかえりなさいませ。」「おかえりなさいませ、サクルさま。」宮殿の入り口に、召使いがずらりと並ぶ。「父上に帰国の目通りをする。」「陛下は、後宮...

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砂漠の赤い糸 7

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抗ったせいで、衣服は破れ髪も乱れていた。サクルはそっと自ら着衣を直してやり、血のにじんだ手の甲の傷が深くないのを確かめると安心したように、良かったとため息を吐いた。優しく労わるサクルを、雪華は見つめていた。「言っておくが、この国に嫁ぐ気はない。後宮にはあなた一人の為の美姫や美少年が大勢いるそうだから、伽の相手にはことかかないだろう?ぼくにはやりたいことが有るんだ。」「だれがこんな目に遭わせたのかは...

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