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Archive: 2012年08月  1/4

禎克君の恋人 5

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初日は散々だったが、それでもやがて禎克は、激しい練習に次第に慣れはじめた。合宿も終盤の頃には、試合形式の紅白戦でも、少しずつ思い通りのパスが出せるようになっていた。二人がかりでガードされながら、相手の隙をつきバックステップを入れてフリーになり、ついにパスを通した。「先輩!」「よっしゃ!ナイスパス!」綺麗な放物線を描いて、禎克のパスを受けた上谷の3Pが決まった。「ナイシュー!」紅白戦相手の先輩から、...

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禎克君の恋人 6

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その頃、禎克の留守にしている金剛家には、予期せぬ客が来ていた。「お久しぶりでございます。」まあ、醍醐さん……と言ったきり、母親は玄関先で固まっていた。懐かしい柏木醍醐が、花の風情で深々と頭を下げた。「大変ご無沙汰しておりました。旅から旅の稼業ゆえ、とんだ不調法をしております。」その存在が華と煌めく、柏木醍醐の姿がそこにあった。さすがに以前のような紋付き袴ではなかったが、首からかけたダイヤのちりばめら...

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禎克君の恋人 7

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湊は、居間のアルバムをありったけ引っ張り出して来て、大二郎に見せた。「ほら。小学生はさっきので終わって、中学からのさあちゃんは、こっちなの。デジカメになっちゃてからは、データにしちゃって写真は余りないんだけどね、雑誌もあるよ。バスケットはじめたらぐんぐん伸びちゃって、今は187センチとかあるのよ。あんなにちびだったのに、信じられないでしょ?」「へえ……おれと20センチも違うんだ。今もおれの中では女の...

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禎克君の恋人 8

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大二郎の姿が見えなくなったのを確かめ、醍醐は母親に打ち明けた。「今更なんですが、大二郎にはこまどり幼稚園の頃の思い出が、すごく大切な物だったようです。全国を回って色々な学校へも通ったのですが、いつも転校続きで馴染んだらすぐに次の学校へ移らなければなりませんでした。働いているのも、どこか色眼鏡で見られているのを感じてしまうらしくて、学校で浮いているのも、はっきりとは言わないのが余計に不憫でした。」「...

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禎克君の恋人 9

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醍醐が倒れたのをまだ知らない大二郎は、その頃ゆっくりと懐かしい道をたどっていた。誰にも気づかれないように、いつものように、深く帽子をかぶっていた。ふと見やった坂の三差路から、自転車が来るのが見えた。ついさっき、湊に見せてもらった写真の中と同じ色のジャージに目が留まる。まさか……とおもいながら、目が離せなくなる。少しずつ近づいてきた自転車の少年の輪郭がはっきりしてくると、大二郎は思わず一歩足を進めた。...

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禎克君の恋人 10

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その頃、禎克の携帯も鳴っていた。上谷に、姉からです、すみませんと律義に断って、携帯を開いた。「なんだろ……今頃、メールって。」『坂の上のホテルに劇団醍醐が来ています。幼稚園の時に仲良しだった大二郎くんとお父さんが、さっき家にご挨拶に見えたの。明日の合宿終わりに、挨拶に行ってね。湊もお芝居を見に行くつもりです。』「やっぱり、そうだったんだ。」「なんだ?急用か?」「ぼくの幼馴染が、この上のホテルに興行に...

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禎克君の恋人 11

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大二郎は、病院にいた。手術中の赤いランプをじっと見つめ、立ちつくしていた。ずっと傍に居たのに、なぜ異変に気付かなかったのだろう、何か予兆があったはずなのに……と、自分を責めていた。この町に来る仕事を入れたのに、かなり無理をしたと羽鳥に聞いていたから、醍醐が倒れたのは自分のせいのような気がしていた。*****「大二郎。さあちゃんに会えるぞ。良かったなぁ。」「え?ほんとう……?」「ほら。前に興行したホテル...

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禎克君の恋人 12

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一方、禎克は湊からのメールを読んで以来、ずっと浮き立つような気分だった。早く湊に電話をして様子を詳しく聞きたかったが、合宿中なのでそうもいかない。一年生でありながら、怪我の上級生に代わって、ほぼレギュラーは手中にしていたが、用具の手入れなどの雑用は下級生の役目だった。翌日、全体練習が終わった後、合宿の解散式が行われ、インターハイに向けて監督から檄がとばされた。一日休みを入れて、すぐに開会式に向けて...

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禎克君の恋人 13

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住む世界が違う禎克と親しくしても、どうせ再び直ぐに別れは来る。旅から旅の生活で、大二郎には失って来たものも多かった。悲しい想いをするくらいなら、初めから何も期待しない方が良い。だから、心にもなく迷惑だと告げた。大二郎のそんな諦めにも似た思いを、禎克は想像すらしなかった。「これから、お芝居の練習するの?見てたら邪魔かな?」「あのね、さあちゃんは……部外者だから。」「そう……か。そうだよね。気が付かなくて...

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禎克君の恋人 14

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「さあちゃん……さあちゃんっ……」下から伸びた大二郎の手が、ぐいと禎克を捉えた。押し付けられた唇が熱を持って、禎克を煽る。「んっ……!?」大二郎はぐいと頭を引き寄せると、禎克の唇を割って深く舌を捉えた。もう離したくない……そんな気持ちの込められた、手慣れた大人のキスに禎克は喘いだ。「んんーーーーっ……。」その場に倒れ込んで、やっと離れて息を吐いたら、大二郎が覆い被さってきた。「さあちゃん……離れないで。おれに...

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