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Archive: 2012年05月  1/4

露草の記 (壱) 13

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やっと、落ち着いた秀佳の元に、城代家老の側小姓が現れると、他人事のように告げた。「これより料理方(りょうりかた)と、台所に野菜を持ってきた百姓を探し出し、すぐさま厳罰に処します。」「誰がそのようなことを、命じた?」「若さまのお命の危険にさらした者を探し出し、急ぎ処断せよと城代家老さまの御下知でございます。」こうなった以上、誰かに責任を取らせようと、いう事らしい。「殺生は、好かぬから……もう良い。捨て...

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露草の記 (壱) 14

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騎馬は一路、寮へと駆けた。双馬藩は、領地の隅々まで治水工事が行き届き、実際よりもかなり表石高の高い豊かな藩として有名である。肥沃な土地ではなかったが、新しい港が要となり金を落とした。代々藩主が家訓に従い、極力無駄な戦を避けてきたのもあって、双馬藩は他藩から見ると領民も潤い、魅力ある国に違いなかった。近隣の藩が多数の餓死者を出した飢饉の時でさえ、双馬藩では備蓄した藩米で耐えた政治力がある。「蕎麦しか...

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露草の記 (壱) 15

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義弟の倖丸は、多くの家臣にかしずかれ、後添えは北の方さまと呼ばれ家の全てを取り仕切り始めた。秀佳についていた小者たちも、いつか倖丸の世話係になった。「秀佳さまは、間もなく元服を迎えるお年なのですから、いつまでも家臣に頼らず、何でもお一人で出来るようにならなければ……ねぇ、お父上さま。」「左様。戦場では何が起きるか分かりませんからな。例え、最後の一騎になっても戦えるだけの、強いお心と頑健な身体を持たね...

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露草の記 (壱) 16

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「わたしの自慢の姉上が、こんな男に惚れていたとはねぇ。呆れて涙も出やしませんよ、まったく。」兼良はそう言いながら、甲斐甲斐しく藩主の夜着を着替えさせていた。「はは……許せ。兼良が後ろに控えているから、無茶もできる。」「……で、その乳のでかい愚かな北の方は、我子を跡取りにしてくれと、義兄上に寝物語にねだりましたかな?」「ああ。だがなぁ、あれはわたしの子ではないから、いくら欲しがっても、双馬の家をやるわけ...

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露草の記 (壱) 17

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兼良は藩主より先に、城中の居室へ自分を訪ねて来た「草」と対面していた。寮へ入る前日、武人は部屋に入るなり人の気配にすぐさま気づき、部屋の片隅へ明かりを向けた。「何者じゃ。よくぞ、この堅牢な城の奥まで入り込んだものよ。」その場に手をついて、涼しげな顔の少年は答えた。「安名兼良さま。御目文字したことがございます。」女ではないが、見覚えのある派手な小袖を身につけて、姿に似合いの柔らかな女言葉を使った。「...

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露草の記 (壱) 18

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約束通り寮に来ると、小草履取りは丸腰で藩主に対面した。藩主は夜具に寄りかかったまま、黙って自分の拾った於義丸の話を聞いた。「草」の話は驚くものだったが、腑に落ちるところもある。双馬藩を手に入れようと、忍び寄る画策の全容が明らかになった。しかも、敵の先鋒隊は既に国境まで迫っていると言う。於義丸が打ち明けるのが遅くなったのも、周囲に潜む間者に裏切りを気取られないようにするためだったと告げた。既に城中深く...

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挿絵

此花、絵を描きました。病鉢巻の藩主と、それを支える兼良。話のほうが先に進んでしまって、このままだとお蔵入りしそうになってしまいました。上手になりたいんですけど、なかなかうまくいきません。難しいね。デッサン狂いもわかっているけど、あえて見ないふり。この次、がんばる!(`・ω・´)...

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露草の記 (壱) 19

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兼良と段取りを整え、於義丸は夜明け前に再び城へと戻った。双馬藩に残された平穏の時間は短かった。裏切り者は、掟に従いいつか必ず始末される。自分の息の根を止めるまで、地の果てまでも執拗に組織は追って来るだろう。それでも初めて得た主君の為に一命を賭そうと、於義丸は既に固く決意していた。残り湯を使い一度顔の作りを落とし、もう一度支度にとりかかろうと自室の化粧前に座った時、心臓が凍り付きそうになった。まだ休...

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露草の記 (壱) 20

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「何と、つれない若さまですこと。これ程お慕い申しておりますのに……。」於義丸は音もなく立ち上がると、すっと側に身を寄せた。低い声で秀佳の耳元にささやいた。「しっ!若さま。決して無用のお手向かいはなりませんよ。しばしのご辛抱。」背丈も変わらぬ於義丸に、いきなり抱きすくめられ、夜具に倒れこんだ。「あっ!は、離せっ!おギギっ!やめよと言うにっ!」「おギギっ!」華奢な「草」に押さえつけられたのは、まだ昨夜の茸毒...

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露草の記 (壱) 21

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やがて懐の印籠から取り出した小さな丸薬を、転がった秀佳の口に一粒つまみいれると、於義丸は慣れた手つきで口移しに水を含ませた。「しばしのご辛抱です、若さま。お目が覚めた頃には、皆終わっておりましょう。」秀佳の手足を優しく緩く縛めて、大切に抱き上げると、蒲団部屋に運び入れた。まもなく、相馬の軍神と言う二つ名を持った兼良が、手筈通り城中に巣食った獅子身中の虫を退治しにやってくる。高揚する気持ちを抑え、於...

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