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Archive: 2012年04月  1/3

鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 1

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ポストの中に待ちわびた合格通知を見つけて、都築陽太(つづきひなた)は小さくガッツポーズをした。「よっしゃ!サクラサク!」それは行きたかった本命の大学から送付されて来たもので、これでやっと家を出る口実が出来た。既にネットで合格は確認済みだったが、こうして書類が届くと現実に動き出す口実になる。一度家を出てしまえば、自由に生きられる……それだけを望んで、これまで懸命に机に向かって来た。何の不満があるわけで...

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鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 2

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「あの、隣に座ってもいいですか……。」と言葉を続けて来たのが「桜口鏡弥」(さくらぐちきょうや)との最初の出会いだった。重ねてきた言葉に、しつこいなと思い、意識して嫌そうな顔を作り視線を向けた。目に入ったのは、清潔な細いストライプのシャツに、濃紺のカーディガン。それが、少女のようにはにかんだ鏡弥との出会いだった。「一人のご飯は味気ないから……。隣りいいかな。」ごくり…と、知らずに喉が鳴る。ずっと思い描い...

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鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 3

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息を吐く。息を吸う。初めて本気で愛した青年とのセクスはどこか歪な気がして、陽太は最初戸惑った。「こうすれば、一番陽太を感じるんだ。だから、ね……。ぼくは、きっとローマの皇帝だったんだよ。」鏡弥は陽太の分身が自分の中に埋められると、首を絞めてくれとねだった。牢の中に薔薇の花を降らせ窒息させた、ローマ皇帝の名を鏡弥は口にした。そんな所さえ、陽太の好きな所だ。「ぼくはヘリオガバルスになって、陽太を愛するん...

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鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 4

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「あの人たちだ。」「陽太……どうしたらいい?お金、ない…………どうしよう。」「大丈夫だ。鏡弥。」黒いスーツの猛々しい男たちの目に触れないように、陽太は車椅子を押して、鏡弥を自動販売機の横に隠した。状況を知ることの方が先だ。「修理代はいくらだって?」「軽く見積もって65万円だって。でも、ほんとにほんの少し、当たっただけなんだよ。爪の先でちょっと削ったくらいの……きっと何かで擦ればわからなくなると思う位の、小...

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鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 5

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つくづく考えが甘かったと、陽太は思う。早く事件を公にし、警察に足を運び、法に照らすべきだった。思えば最初から全て間違いだらけだった。やがて、ポストを開けずとも、督促状が何通も溢れるように入るようになっていた。返済期日を知らせる葉書の束を握り締める陽太の実家は、田舎の旧家で資産も多い。だが、学生だからと言って、遊ぶ金を惜しみなく与えるような愚かな親ではなかった。正当な理由があれば納得して、ぽんと出し...

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鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 6

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夕暮れの校内は、二部の学生がそろそろ入って来るころだ。そこに、知った者はいない。かさ……。足音にふと視線を巡らせば、そこには見知った顔がある。「え?鏡弥……。」病院にいるはずの鏡弥が、ここにいるわけはない。だが、驚くほど似た面差しだった。「……鏡弥がお世話になっています。」深々と頭を下げた青年は、鏡弥と服の趣味も違い、雰囲気こそ違うが、体つきも首の細さも鏡弥によく似ている。何より長い睫のけぶる小さな顔が...

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鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 7

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「鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス」 以後の話は展開上、予告なく加虐描写などが出てまいります。ご注意ください。興味のない方、理解できない方は、速やかにお帰り下さい。通いなれた事務所に入り、頭を下げた。奥の続き部屋に繋がる扉が、わざとかどうかほんの少し開かれて声が漏れていた。聞き覚えのある声が、悲鳴に変わった。「ぃ、いやぁーーーっ!」「鏡弥っ?」顔色の変わった陽太を愉快そうに、そこにいた金融業者が...

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鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 8

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「鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス」 以後の話は展開上、予告なく加虐描写などが出てまいります。ご注意ください。興味のない方、理解できない方は、速やかにお帰り下さい。「陽太さん。……鏡弥は君を騙したんだ。ごめんね……ぼく、知っていても何もできなかった。内側で、じっと見ているしかできなかった。」「内側で見てた……?」「う……ん。ぼくも……鏡弥も、最初から、陽太さんを騙すつもりで近付いたんだよ。」「最初から全部...

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鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 9

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阿鼻叫喚の凌辱の宴に放り込まれた生贄のように、充弥は男たちの間で、翻弄されていた。ありえない体位で、まるで劣情を受け止めるだけの入れ物になってしまった青年を、陽太はじっと言葉も発せず見つめていた。ひくひくと酸素を求めて喘ぐ魚のように、薄い胸が上下する。痛ましくも目の離せない光景だった。やがて……痙攣の止まった恋人が、ぐいと半身を起こし身を捩ると、おさまっていた男の物をずるりと抜いた。「ああっ!もう~...

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鏡の中の眠れるヘルマプロデュートス 10

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桜口充弥の二重人格の要因は、分かりやすく説明できる。肉体を苛まれる現実から意識を切り離し、作り上げた違う人格に意識を開け渡すことは本能的な防衛反応だ。精神的、肉体的に与えられる激しい苦痛を、快楽と感じる新しい人格(鏡弥)を作り、充弥は現実から逃避した。充弥は痛みに耐えかねて、自分のすべてを丸ごと鏡弥に手渡した。……だから、ここに居るのは充弥の作り上げた別人格の「鏡弥」だ。中学生の充弥よりも少し大きくて...

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